スペインのトマト栽培

今年はスペインの施設園芸地帯を訪問する機会がありました。

ムルシア州という、地中海沿岸地域のトマト栽培施設の画像です。

 



鉄柱にワイヤーを張りフィルムを載せただけのシンプルなハウスです。乾燥してストレスかかっているようでいて、たくさんの果実が成ってる、日本のものともオランダのものとも異なるトマト、そして冬でも温かく暖房無しで栽培をしています。

 

EU市場ではオランダ産トマトとは競合し、生産コストや販売面で勝っていると言われるスペイン産トマトです。費用対効果の非常に高い施設園芸経営であり、どちらかと言えばオランダのあとを追いかけ、施設の装備化が進む日本の施設園芸とはだいぶ異なるものでした。

 

ただし、すべての施設が簡易なものという訳でもなく、次の画像のような鉄骨ハウスがあちらこちらで新設されていました。

 

 

軒高は5メートル以上、間口も9メートル以上、台風の心配がないため鉄骨の数も少なく、非常に明るい施設でした。トマトはハイワイヤー栽培で、レールも何もない地面を太いタイヤを履いた高所作業車に乗った外国人労働者が作業をしていました。

 

同じ施設を外から見た画像です。地中海沿いの立地で、海の方角に向けて天窓が大きく開いています。冬期は無加温で栽培していますが、春以降はそれなりに暑いのかもしれません。

 

 

この施設全体で合計20ha程度の規模になるということで、かなりのスケールでのトマト栽培になります。

 

これは別の生産者組織がやっているトマトの選果場の画像です。こちらの規模もかなりのもので、オランダ製のカメラ選果ユニットを高速でトマトが通過したところです。

 

 

選果そのものはきっちりと行われており、サイズの揃えられたトマトが店頭用に箱詰めされて、そのままEu圏内に出荷されていました。

 

 

シンプルながら低コストで大量に生産と出荷を行うスペインのトマト栽培ですが、日本では真似はできないものの、施設、品種、栽培方法をその土地にどのように最適化するか、考えさせられるものでした。

 

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加工・業務用野菜と植物工場

画像は2年前に視察をした、加工業務用ホウレンソウの圃場です。かなり大きめのホウレンソウを自走式の収穫車で刈り取り、収穫車後部の鉄コンテナにコンベヤで詰め込んでいるところになります。野菜の収穫作業の自動化も露地野菜栽培では多くの場面で機械化や自動化が進んでいます。


○加工業務用野菜の生産加工現場


この圃場は10a程度の面積で、収穫作業も短時間で終わり、何十、何百とあるホウレンソウ圃場を、この収穫車は巡回しています。またホウレンソウが満載の鉄コンテナは、集荷場に集められ、冷凍ホウレンソウのパックに加工がされます。


集荷場から先には、冷凍ホウレンソウの大規模な加工ラインがあり、洗浄、殺菌、ボイル、急速冷凍、何重もの検査の工程が組まれているそうです。また冷凍ホウレンソウの用途は加工業務向けになり、スーパーマーケットに並ぶ生食向けホウレンソウに比べ非常に厳しい検査や出荷の基準が設けられているはずです。


圃場で収穫されたホウレンソウは、雨の中にも関わらず泥はねも少なく、また刈り取り機が株元の隙間を狙い上手に収穫しており、比較的きれいな姿で集荷場に集められていると思いました。しかし、その後工程は非常に念入りに行われて、人手や設備も多く掛けていて、ホウレンソウの栽培と収穫までの工程に比べると、大きな負荷がかかっているように思われます。


○加工業務用野菜の植物工場生産の可能性


こうした負荷の多くの部分は、露地栽培ホウレンソウが持つ様々なリスク要因によると思われます。仮定ですが、人工光型の植物工場でレタス類と同じように、大ぶりのホウレンソウの生産が効率よく出来たとして、それを冷凍ホウレンソウのパックに加工する工程は、リスク要因要因の少なさから考えると、かなり簡略化されるはずです。


露地栽培にに付き物のムシや汚れは、ほぼゼロになるし、下葉処理をしたあとは検査を行ってから洗浄、ボイル、急速冷凍、最終検査程度になるかもしれません。そうした工程簡略化によるコスト削減効果が人工光型生産でのコストアップに並ぶかどうか、さらに人工光型生産による歩留まりアップがどの程度なのかも検討してみる価値はありそうです。


キャベツやダイコンといった重量野菜類は植物工場生産には不向きと言われています。一方でホウレンソウの他にも、軽量野菜の加工業務用途での植物は生産や加工にチャレンジしても良さそうなものは、まだありそうな気がしています。

 

ホウレンソウの機械収穫と鉄コンテナ利用

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施設園芸・植物工場の、この6年

自分は、6年と9ヶ月も同じ職場、同じ業界で働いているのですが、改めて時間の経つのがとても早い感じがします。6年一区切りという言葉は無いのですが、少し振返ってみたいと思います。
 
〇6年前の施設園芸・植物工場の業界
 
6年前の2012年を思い出すと、東日本大震災の翌年で、農業や施設園芸で大きな被害を受けた福島、宮城、岩手などの現地復興の話はまだまだ聞こえてきませんでした。がれきの除去や除染の作業で手一杯の頃だったかもしれません。 
  
6〜7年前から植物工場のブームのようなものが始まっていましたが、大型の植物工場はまだ少なく、有名な「みらい」も、まだ千葉大学などで小規模にやっていた頃でした
 
施設園芸では、「カゴメ」の大規模菜園がすでに全国展開をしていましたが、一般の経営で1haを超えるような大規模施設は少なく、老舗とも言える栃木県の「グリーンステージ大平」など、数える程度だったと思います。
 
トマトの栽培も、今ほど色々な品種は少なく、大玉トマト中心で、一方で黄化葉巻病が全国的に猛威をふるっていた頃だったと思います。パプリカの栽培も、茨城県の老舗「Tedy」や、「リッチフィールド」などが目に付く程度でした。
 
〇その後の施設園芸・植物工場の業界
 
その翌年頃から、宮城県を中心に施設園芸の復興事業がどんどんと立ち上がり、今まで見たこともないような大規模な施設園芸団地が、まとまった土地に建ち始めました。亘理町や山元町のいちご団地などです。それからも大型の施設園芸団地などが次世代施設園芸事業などで、全国に毎年のように増えてきました。
  
自然災害の面では、地震による被害よりも、台風や大雪の被害が大きく、毎年のように何かしらの地域の災害が見られるようになりました。特に今年の関西を中心とした施設園芸への台風被害は今までに経験の無いものだったと思います。カゴメ直営の和歌山県の「加太菜園」の解散は象徴的なニュースでした。
 
植物工場では「みらい」の大規模工場が立ち上がり、大きな注目を集めましたが、ほどなくして倒産、なぜあの「みらい」が倒産?という記事が未だにネットには残っています。しかし、その後も植物工場の大規模化の流れはとどまらることを知らず、ついにセブンイレブンのベンダー会社が日産3トン規模の工場を建設するまでになりました。設備投資額も増え、ロボットなどの自動化も進んでいます。

カゴメがスーパーのトマトコーナーを占めるようになってからも、トマトのブームは続き、品種もミニやミディ、カラフルなトマトなど、どんどんと増えてきました。一方で新規参入や熊本県など産地でのトマトハウスの増加もあって、時期によっては市場にトマトがあふれて暴落することも見られるようになっています。
  
珍しい野菜だったパプリカは、韓国の輸出政策で日本へどんどんと入ってきて、市場そのものが拡大してきました。国内のパプリカ生産も、大規模施設を中心に順調に拡大をしており、ポピュラーな野菜に変わってきています。
 
〇農業・施設園芸・植物工場の未来
 
いろいろな参入の動きや規模拡大が目立つ、施設園芸、植物工場の業界ですが、足元では、自然災害と猛暑など気象変動の影響、人手不足と人件費の増加、資材費の高騰、物流ルート確保の難しさ、外国人技能実習生に頼るケースの増加などなど、外的要因による問題に直撃を受けることが多くなっていると思います。
 
この6年で、かなり伸長が目立った業界でありますが、こうしたマイナス面も噴出し始めており、踊り場に来ているという感触が実はあります。この踊り場をどのように進んでいくのか、亥年に向け知恵を絞る必要があると考えています。知恵の源泉は、流行りのIoTやロボット、AIといったスマート農業のアイテムではなく、もっと現場に転がっているのかもしれません。

 

6年前のクリスマスの築地本願寺

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露地野菜生産システムの高度化

先日参加しました千葉大学土葉会の第324回例会の発表は、生育診断、生育予測、病害予測といったテーマで、農研機構の岡田領域長(野菜生産システム研究領域)からは露地野菜の生育モデルの活用を中心とした報告がありました。前提として、加工業務用途の野菜生産についてのお話でした。

 

〇加工業務用途の露地野菜の生産〜販売の課題

 

岡田さんは以前から露地野菜のキャベツなどの生育モデルの研究をされていました。施設園芸野菜と異なり、生育の制御はしきれず(せいぜい肥料管理)、天気まかせになっている現状について、予測を交えて、無いならないで早めに分かれば、取引上の対処があるというご意見でした。つまり、取引先からすると直前に言われても困るということで、生産管理水準が施設園芸に比べ圧倒的に低い露地野菜生産では、インフラとして情報化技術が絶対に必要という意見でした。これは、その通りだと思います。

 

・加工業務用の契約取引では、量的なことより、時間的な生産安定が大切、しかし制御はしきれない。

 

・時間的な問題のシーンを想定すること。

 

・販売まで見据えた生産、供給の安定を考えること。そのための定量化が必要となる。

 

〇生産者の定性的な判断と定量的な判断

 

岡田さん自身の生育モデル研究のご紹介もありましたが、生産者の判断についての言及があって面白く聞かせてもらいました。

 

・生産者は野菜のことを良く知っているが、そこに死角はないか。そこに革新のネタはないか? 人の頭の特性として落とし穴があり、それをどう防ぐかが技術開発のポイントになる。

 

・定性的な情報の保持能力は人は高い。「このレタスのできはいい」など。これは、高度な画像認識能力よるもので、レタスの葉の出方、たたずまい、おおよその生育ステージを読み取る力である。そのステージの標準の姿が頭にあって、それとの比較をしている。

 

・定量的な情報の保持能力は弱い。経時的な劣化が早い(昔のことは忘れる)。今年のレタスが生育が早い、といったことは平年ではなく昨年との比較で言っていることだが、その比較の質は意外に低い。

 

・昨年のデータがどんな特性かを補正をすることが必要になる。平年比較であればICTが役立つ。具体的な数値、言葉に落とし込むこと、補正することがポイント。きちんとした手順、オペレーションに落とし込み、現場の改善につなげられる。

 

どうでしょうか? これは普段の自分の判断行為にも当てはまりませんか? 理屈の達者な岡田さんならではのお話でした。

 

〇露地野菜の生産管理システムのイメージ

 

以下は生産管理システムについて、岡田さんのお話の忘備録です。

 

・露地野菜の契約取引は大規模化で、借地による規模拡大が進み、分散多数圃場になるっている。

 

・1法人で200〜300の圃場になることもあり、人の頭では管理できないため、生産管理システムがいる。

 

・収穫遅れ、作業遅れも致命的であり、契約量と出荷量のミスマッチの問題もある。2週間から一月前までに予測することで、事前の交渉が可能になる。2週間前が取引先との交渉期限で、別な先への販売では一月前に行う必要である。

 

・販売取引の中で、時間や量が価値を持つ。それにより、生産管理での手間と時間を回収すること。

 

・2-3日前では不利な取引になる。2週間以上前から準備すること。

 

・契約取引では2-3割多く作る。天候不順なら良いが、天候が良いと余るし、コストが回収できないと困る。その対処は一月前から準備すること。

 

・生産管理システムの要件には、多数圃場、連続定植、3日-1週間置きの定植(レタスの場合)など、生産者自身が管理できていない要素がある。また出荷予測できていないことも補助する必要がある。

 

・販売管理システム側でも、生育予測情報を生育予測モデルを使い行いたい。

 

・収穫量=面積×正常個体ベースの反収(生育モデルによるその年の気象条件からの予想値)×歩留まり(欠株、生育不良の個体割合、生育センシング(個体レベル)で対応:衛星ではなくドローン利用になるか?)。

 

・広域でJAが管理する場合、農家からの報告で行っているが、あてにならない。面積も不正確。

 

話はつきませんが、施設園芸より面白そうですね(笑)。

 

育苗ステージから含めた生産管理が必要では?との質問が千葉大の丸尾先生から出てきましたが、まったくその通りだと思いました

 

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加工業務用キャベツの入った鉄コンテナ

施設園芸のサービス業化

ある経済学の先生のお話で、農業って植物のお世話をするサービス業では?、という話題が出ました。製造業のサービス業化が言われて久しいので、この話は直感的にアリと思いました。

〇ポテンシャル収量のコンセプト

最近、施設園芸業界では「ポテンシャル収量」や「限界収量」といったコンセプトが出ています。ある植物のある条件でのある栽培方法における最大収量に対し、さまざまな制約や障害、失敗などにより最大収量には達していない、その原因を分析評価して改善することで収量を伸ばすことができる、といったコンセプトと理解しています。同様なコンセプトは製造業においてもあったかと思います。

〇植物への奉仕者

植物の持つポテンシャルを最大限に発揮させることが農業や施設園芸の役割であるという発想を、このコンセプトからは感じられるのですが、その行為は植物に対する人間のサービスであると言えるかもしれません。主体はあくまで植物で、作物生産のお手伝いを人間(もしくは機械)が行う、という考えになります。

こう考えると、エラいのは植物であって、農家、生産者、農場長、栽培管理者、グロアーといった人たちは、植物への奉仕者、ということになりますね。また農場で実際に植物に対して作業をする人たちは、サービスの実践者ということになります。

〇農業・施設園芸の顧客は植物?

サービスマネジメントの考えでは、サービス提供のフロントオフィスとバックオフィスがあり、農場で働くパートさんや外国人技能実習生の人たちがフロントオフィス、それを支える農場長や栽培管理者、グロアーの人たちがバックオフィスの従事者ということになります。つまり一番エラそうだった農場長が、底辺の支え役ということにもなります。「農業の顧客は植物」という主客転倒とも言える考え方ですが、ポテンシャル収量の考え方と妙にマッチしてしまいます。

サービスマネジメント入門

画像の本は、近藤隆雄先生のサービスマネジメントの教科書ですが、ここには以下の一節があります。

・人材の役割:モノの工場生産では技術システムが重要であって、人の役割は一般に技術システムを遅滞なく順調に稼働させることに重点がある。一方、サービス生産では、人がサービスの中心となる。サービスの品質は結果と過程の両方でサービス提供者の活動に大きく左右される。

・技術の役割:サービス生産に置いて技術革新がサービス提供の内容を大きく変えてしまうことも少なくない。小規模のサービス業において様々な機械や道具がサービス生産の効率や効果性を左右する。しかし何と言っても情報技術の急速な進展がサービス生産に強烈なインパクトを与えている。

・共同生産者としての顧客の役割:顧客は完全な外部要素ではなく、サービス生産に参加する内部要素でもある。

なんか、その通り!と思ってしまいます。農業生産や施設園芸生産の向上には、サービスマネジメントの考え方が必要、という意識改革が近い将来にあるかもです。

 

近藤隆雄著、サービスマネジメント入門―ものづくりから価値づくりの視点へ(2007)

 

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施設園芸でのクラウドサービスとは?

〇意外にわかっていない自分の経営状況

 

ある施設園芸の農業法人の社長さんとの話で、最近のクラウドブームで環境データの見える化はどんどん進んでいるけど、それだけでいいのか?という話題になりました。その社長さんは、親父さんも現役で施設園芸を別のハウスでされており、クラウドサービスでそのハウスの環境データをちょくちょく見ているそうです。非常に洗練された画面(操作方法や画面、アイコンのデザイン、色など)で、使い勝手もとてもよく、おまけに安いということで、関心されていました。

 

しかし、それだけでいいのか?という話です。

 

〇市況情報はリアルタイムか?

 

その社長さんのハウスでは、環境データの見える化や環境制御の統合化はとっくの昔にやっていて、収穫量のカウント、選果時の等階級のカウントなどもクラウドに上げて集計できる独自のシステムも持っていました。この先はどう進めるの?という話の中で、「実は出荷数量はクラウドでリアルタイムに上げているけど、市場の仕切り単価はリアルに分からないんだよね」という事実が出てきました。

 

市況情報ほどオープンになった価格情報は無いと思っていたのですが、オープンなのは平均値や最大、最小値などの統計値であって、実際の個別取引での価格情報は、出荷した本人でもすぐには分からないということになります。聞くと色々な調整(よくわかりませんが)や値引きなどがあって、月締めの伝票でようやく実際の価格と売上が明示されるそうです。

 

売上が最長一月遅れでわかる業界というのは今時はそうそうないとは思いますが、自分の経営状態が今一つ明確にはわからないわけで、好ましいとは言えないでしょう。量だけ追って、儲かっていないかも?ということもありうるからです。

 

〇施設園芸経営の見える化

 

環境の見える化の先は、収穫の見える化、出荷や販売の見える化、作業の見える化、経費の見える化など、個別テーマはいくらでもありそうです。いずれも経営の見える化につながるものなので、自分の経営状態、そのバックにある技術や管理、販売の状態を常に把握することは、悪いことではないでしょう。

 

どこから着手できるかは要検討ですが、自分の経営状態がわからずに農場を運営するというのは、普通に考えるとありえない話なので、ICT利用、クラウド利用の行く先はそちらに向かうべきでは、と思います。

 

イチゴ栽培でも見える化は、環境データ、養液データ、生育データなどで進んでいます。

 

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施設園芸と製造業

○施設野菜メーカーとは?

製造業出身で大規模施設園芸の生産管理業務をされている方が、元の同僚の方から、「大規模施設園芸で野菜を作っているのは、施設野菜メーカーになるのでは?」という風に言われたそうです。施設園芸側からは、なかなかメーカーという発想が出てこないと思いますが、この元同僚の方はどこに着目してメーカーと言われたのかは気になるどころです。

原料を加工したり、パーツを組み立てたりで、中間製品や最終製品を作って在庫し販売するのがメーカー、すなわち製造業の姿かと思います。食品加工分野であれば、こうした姿には合致すると思いますが、植物の生育がベースとなる農業や施設園芸では、加工や組み立ててとは直接は結び付かない面が多いと思います。

○施設野菜生産のプロセス

もう少し細かく考えてみますと、化学反応を利用した化学製品の製造プロセスと、光合成を利用した植物の栽培プロセスでは、環境条件や与える物質(触媒や肥料)の量やタイミングの調整といった面では似通う面がありそうです。しかし製造業で扱う対象が無機物にせよ有機物にせよ、農業や施設園芸で扱う対象が植物という生き物であることは大きな違いがあると思います。これは生き物である植物はその生育を止めることは難しく、時間と共に形や大きさが変わってしまうことがあるためです。

では、製造業でも直接に生き物を扱う分野があるかと言えば、やはり食品産業の中で、発酵や醸造といった菌類や微生物を扱う分野があり、植物の生育ほどダイナミックではないと思いますが、時間と共に形や個数などか大きく変わってくるものでしょう。そこでは環境の調節によって発酵ブロセスを制御を行っていることで、施設での環境調節に近いものがあるかもしれません。

○施設野菜生産の特徴とモデル化

いろいろなケースでの比較があると思いますが、施設園芸での「製造装置」である植物体は、時間の経過や環境の変化と共に形や大きさを変えて行き、それをいろいろとコントロールすることは可能なものの、基本的に止めることはできないという特徴があると考えられます。

栽培学的に見れば、光合成による植物体の生長と、転流や代謝による二次的な生成という段階的なプロセスがあり、相互にバランスを取りながら最適な生産を行う部分もあります。

また出荷販売面から見ると、競合産地の出荷量との兼ね合いで市況が変動し、売上や利益を確保するには他産地の動向や気象予測なども加味した生産計画、出荷や販売計画が求められます。

以上のように一口では製造業とは言えない複雑な要素を内包しているのが施設野菜生産であると思います。製造業的な管理手法の導入が言われるこの頃ではありますが、良い面は取り入れながらも、難しい植物体の生育のコントロールを気象条件や販売面など、他の要因とも絡めながら最適に行うのが、施設野菜メーカーたる姿のように思います。しかしそのモデルは未だ確立されていないのかもしれません。

 

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あるトマト農場からの電話

○農場のSOS電話?

 

以前、関わっていたトマト農場の方から数年ぶりかで電話がかかって来ました。トマトにトラブル(病気)があって見に来て欲しいというものでした。ギリギリ切羽詰まった様子でもなく、また自分はトマトの病気に詳しい訳でもないので、電話口とメールでやり取りして、とりあえず納得というか、了解してもらいました。

 

やり取りの結果は、「全滅するようなひどい状況でなければ、とりあえず当面の収穫は諦めつつ、ダメージを受けているトマトの生育を回復させてみて、年明け以降の収穫を目指してはどうか?」という簡単なものでした。もう少し具体的な話しもありましたが、要はそんなところです。

 

○トマト相談に話を変えた

 

最初のうちの話では、病気に効く薬を教えて欲しい、など目先の話しだったのですが、どこか相談はしてみたか?と尋ねたところ、出入りの農業資材店には聞いてみて農薬もいくつか試しているようでした。対症療法的な相談で、現場も見ないで何も言えるはずもなく、その回答はパスしたのですが、せっかく数年ぶりの電話だったので、「これから日もどんどん短くなって、生育も遅くなるし、樹勢も弱くなるので、病気で弱ったトマトから無理して収穫しようとしても後で大変だよ」という感じのトマト相談に話を変えてみました。

 

○電話と他の通信手段の違いは?

 

そこからは栽培から収穫、販売、気象と話はどんどん広がってしまって、電話での話は10分位で打ちきりにさせてもらいました。たぶん担当者の方は、もしかしたらこうした四方山話もしたくて電話を掛けてきたのではと想像しましたが、こちらも(珍しく)机で仕事中だったので、打ちきりになった次第でした。

 

何度かお邪魔した農場で、今も同様にトマトを栽培中とのことで、電話だけでも様子が目に浮かびました。これがメールで病気のトマトの画像などが送られてきて、どうしましょうか的な相談だと、話の広がりがつけられなかったかと思います。メールの他にもスカイプやZOOMなどのオンライン会議的なメディアも便利と言えば便利ですが、かえって電話の声だけというのが何か伝わるものが違うように思います。自分だけかもしれませんが。。

 

 

 

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技能実習制度の仕組み

施設園芸の農業法人の方で実際に外国人技能実習制度を利用している方のお話しを伺う機会がありました。施設園芸は盛んな地域であるが、人口減と高齢化から外国人はすでに不可欠とのこと。制度内容についてもお詳しいので、伺いました。

 

画像のチャートのように、節目で実技試験が設けられ、次に進むようになっています。最長5年となった期間についても、従来の期限の3年目に試験を受けるとのことでした。

 

また最終帰国時にも、まだ試験があるそうで、制度の趣旨である技術や技能の相手国への移転を図る設計ということでしょう。

今後の新しい在留資格については、この最後の試験を受けて一時帰国後に、再入国して付与される制度になるだろう、とのことです。

 

このように、技能実習の目的があるためか、試験が必須の制度になっています。韓国の外国人労働力としてのシンプルな受け入れ制度とは、根本的に違う感じです。永住資格の話しも、すっきりつながらない感じがしますね。

 

韓国の場合は永住は最初から認めず、業種ごとの人数制限もかけた上での形です。日本の場合は建前と現実のギャップや、制度のちぐはぐ感、つぎはぎ感がどうしてもしてしまいます。

 

資料:外国人技能実習機構

 

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日韓の外国人受け入れ制度と施設園芸

〇韓国の外国人受入れ制度

 

先日のTVニュースで日韓の外国人受入れ制度の比較がされ、タイムリーな内容で感心しました。

韓国は国策で外国人労働者の受入れに舵を切り、国がその管理と窓口業務をやっており、専門の政府組織を持っています。外国人は渡航費のみの負担で韓国に来て、国が受け入れて「雇用許可制度」の仕組みで、一定基準を満たした受け入れ先企業への就職が可能になっています。また3回までの転職が可能であり、受入れ企業間の競争条件が担保されて低賃金や劣悪な労働条件を回避するような仕組みになっているようです。

 

韓国のこの制度は、韓国人労働者の雇用を奪わない様な制度設計がされているようです。例えば、永住権は認めないが期限後の再入国は可能として、労働需要の答えながら人数の管理をすること、人気のない企業に対して優先的に外国人を回すこと、業種ごとに不足する労働者数を推計して、その数だけの外国人を受け入れることなどです。

 

参考文献)高安雄一「韓国の「外国人労働者の受け入れ制度」が大成功した理由…韓国人の失業者増えず」、Business Journal 2018.5.30

 

〇日韓の受入れの違い

 

外国人の受入れ人数や、受け入れ先企業を政府が管理していること、日本のような実習や研修制度ではないため、韓国語の習得を義務付けていないことなどが、日本との大きな違いです。また企業間の競争条件から、外国人に対する寮や食事の提供も行われるケースが多く、賃金条件も日本に比べ良好であり、番組の取材ではベトナムに外国人技能実習生をリクルートに行った日本人が韓国人気に苦労している様子が放映されていました。

 

韓国の政策は海外、特に日本の政策を調査、研究し、改善したものを実施することが多い、とある韓国の方に伺ったことがあります。この雇用許可制度も、日本の技能実習制度を研究し、改善をして実施しているそうです。また韓国は、重点主義というか、やるときは徹底してやる国なので、外国人労働力と国の発展を完全にリンクさせ、外国人への支援措置も充実させている感じがしました。

 

 

〇日本の施設園芸と外国人労働者

 

ふりかえって、今の臨時国会の外国人定住資格制度の議論の中身の無さには呆れてしまいます(審議時間そのものが圧倒的に不足という大問題もあります)。政策らしい政策もなく、ただ来春から施行をしたい政府与党の答弁と、拙速で看過できないと繰り返す野党の突っ込みの甘さが目立つだけで、対韓国との労働力の争奪戦を想定した議論にはまったくなっていません。低賃金の労働力としてではなく、アジア全体の経済発展と賃金上昇の傾向を踏まえた政策を立てないと、同様に外国人労働力を必要としている日本の施設園芸は、こうした面で韓国の施設園芸に先を越される可能性が出てくると感じた次第です。

 

韓国のパプリカ温室で作業をする外国人労働者

 

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