環境制御技術のアクセルとブレーキ

1.環境制御技術の進展と活用

 

施設園芸での環境制御技術の活用は、現在でもホットな分野といえ、都道府県の試験研究機関では、その地域の作物に向けた技術開発が盛んに行われ、また国の研究機関や大学でも、さらに先を見た研究開発が行われています。

 

施設の単位面積当たりの収量(施設生産性)を向上させる技術として、温湿度管理、CO2濃度管理、遮光や補光などの技術が単独や組み合わせにより開発、実用化がされています。本稿では、それぞれについては触れませんが、それらの開発成果として関連製品も多く販売され、異業種参入(例えばガス業界によるCO2施用装置の販売など)も盛んになっています。

 

また環境制御技術は、環境情報や植物生育情報の見える化と一体となって栽培管理におけるPDCAサイクルの一連の流れを構成するようになりました。また見える化によって、目標とする環境制御の範囲や設定内容の調整が、容易になってきたと言えます。

 

2.早める環境制御と遅める環境制御

 

環境制御技術の出口のひとつとして、植物の生育を早めたり(生長速度の増加)、光合成を盛んにし(光合成速度の増加)て、収量を高めることがあります。前者は温度の調節により、後者は光合成の原料となる光、水、CO2等の調整により行われます。これらについてアクセルを踏むことで早めることができれば、逆にブレーキをかけ遅めることも可能といえます。

 

これは需要と供給の調整にも使える技術と考えられます。農産物の需要に対し供給が足りない時期、すなわち販売単価が高く見込める時期に対し、環境制御技術を使いアクセルを踏んで収量を高め、売上と収益をアップする方法です。マーケットに対する技術の利用の基本形といえます。

 

逆のケースとして、農産物の需要に対し供給が上回る時期、すなわち販売単価があまり見込めない時期に対し、環境制御技術でブレーキを踏んで収量や出荷量を調整し、出荷ロスや収益の低下を防ぐ方法です。

 

3.環境制御と成果のタイムラグ

 

このように環境制御技術にはアクセルとブレーキの双方があって、出荷量と売上の調節の他、生産コストや販売コストの調節にも直結してきます。市場に競合農産物があふれる時期などには、出荷を抑え、コストも低減した方が、手元に残る収益が確保される場合もあります。アクセルとブレーキの調整が収益の最大化につながることになり、技術と経営の両面をにらんで環境制御や栽培管理の方針を定めることが必要です。

 

注意すべきことは、環境制御の成果が出るまでにタイムラグがあることです。特にトマトなどの成熟果を収穫する果菜栽培ではタイムラグが長く、先を見越した環境制御が必要になります。市場の状況、単価の変動などをみこし、気象条件と温湿度制御値、CO2濃度の設定など、各投入エネルギーとコストを見越して判断することになります。単純な計算で答えが出るものではないいと思いますが、月次など期間別の収益を把握することで、その環境制御の実施が妥当であったかを振り返る必要があると思われます。

 

新技術が現場に適用可能かどうかは、は導入コストや運用コストとの見合いで決定されることが多いのですが、数ヶ月単位のスパンで植物の生育や収量、販売量を考える施設園芸、植物工場において、コストだけでなく収益によって投入技術を評価する必要があると考えられます。

 

 

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください。

 

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