AIと農業(その2)生産場面で進むAI利用

JUGEMテーマ:農業

 

前回(だいぶ前ですが)、農業はバラツキの産業で、そこでの選別のプロセスにAIは有効に使えるかもしれない、という意見を述べました。

 

その後に、ある会合で農業とAIについてのお話をする機会があり、このような図で説明をいたしました。

 

施設園芸・植物工場での生産~販売工程とAI利用(クリックで拡大)

 

施設園芸での、いくつかの実用化例や開発事例をピックアップして並べたところ、育苗から出荷販売の各プロセスでAI利用はそれなりに進んでいることがわかりました。新たに画像計測を行って得られる画像データを利用してAIによる学習を行うもの、通常のプロセスから発生するデータを利用してAIによる学習を行うものに大別されます。以下にそれらの概要を説明します。

 

 

1.画像計測によるデータの利用

 

【育苗】

トマトやキュウリの接ぎ木育苗で、台木と穂木の成育程度が適合していないと、接ぎ木後の活着(接ぎ木面が癒合し、その後の成育がスムーズに行くこと)に影響がでやすい。生産現場では従業員の目視による選別を行っているが、労力負担や生産量の律速要因となる問題がある。AIを用い大量の苗画像データより苗の形状や成長の程度を学習させる。学習を繰り返し、選別の精度を高め、接ぎ木の活着率向上に活かす(苗生産業での開発事例)。

 

【病害虫診断】

葉が大きく、病害の診断が比較的容易なキュウリについて、病害発生状況を撮影した画像と病害名をAIに学習させ、診断システムを開発した。3ケタ程度のサンプルで学習をさせた後、無病の葉と10数種類の病害の葉について実際に診断をさせたところ、精度は80%であった。(大学と研究機関による開発事例)。

 

【収量予測】

トマトの果実を移動式の装置に取り付けたカメラで撮影し、果実数や着色具合が撮影された画像と、別途計測したハウス環境データなどから収穫に適した果実数や収穫日などをAIを用い繰り返し学習し、収穫日や収量の予測を行う(ICT企業による開発事例)。

 

 

2.プロセスから発生するデータの利用

 

【水分制御、培養液制御】

養液土耕装置において、環境データにもとづいた潅水や肥料配合の指令を行うが、自分の意図に沿わない動作をした場合、農家が装置メーカーに連絡しAIの調整を適時行っている。AIは過去の制御やモニター値からの学習により、制御の方法や設定内容を判別する機能がある。あらかじめ定められた範囲での制御を行うが、細かな設定はAIによる判断が生かされている(ICT企業による実用化例)。

 

 

実用化例と開発事例が混在していますが、学習精度が上がれば実用化レベルに近づくものも今後でてくるものと思います。画像計測データによる学習はAIの得意分野です。またプロセスデータから自動学習させる機能については、農家の指示による調整で段々と精度が上がってくるもので、調整がうまくされれば農家には手放せないシステムになるのかもしれません。

 

 

以上は、生産工程におけるAI利用例ですが、そのあとの販売工程においては、農業分野での利用例にはまだ遭遇しておりません。しかし顧客の販売履歴を学習させ顧客の好みを抽出してターゲットを明確にしたDM発信をするなど、小売業でのAI利用はかなり実用化がされています。そうした例は農業へも販売データの蓄積により応用がされる可能性もあると思われます。

 

以上の事例はここ1年ほどに明らかになってきたものです。農業や施設園芸での生産から販売までの多くのプロセスにAIが導入される日はそう遠くないものと考えております。

 

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください。