平成の野菜=パクチー

日本農業新聞4月30日付け総合・社会面に、「平成の野菜 流行・代表・定着 3冠 パクチー 令和でも人気継続」との記事が掲載されていました。これは、種苗メーカーのタキイ種苗がインターネットで行ったアンケート調査の結果で、全国20〜69歳の男女310名を対象にしたそうです。

 

フォーに盛ったパクチー(自作)

 

アンケート結果でのパクチー

 

記事には4つのアンケート項目があります。

  • 平成に流行した野菜:1位パクチー、2位アボガド、3位フルーツトマト
  • 平成を代表する野菜:1位パクチー、2位アボガド、3位フルーツトマト
  • 平成で定着した野菜:1位パクチー、2位アボガド、3位フルーツトマト
  • 新元号で流行すると思う野菜:1位スプラウト、2位パクチー、3位フルーツトマト

以上のように、平成ではパクチーは流行し、代表し、定着した野菜NO1ということになります。

アンケート記事には、4位、5位の野菜や、各%なども記載されていますので、ご興味があれば記事を当たられてみてください。

また記事にはその他に特にアンケートの紹介はありません。

 

パクチーがここまで定着したかと言うと、他の定番野菜(トマト、ミニトマト、きゅうり、ナス、レタス・・・・)に比べれば絶対量は少ないはずですが、時代に流行し、さらに時代を代表し、そして時代に定着したという見方をすると、アンケート結果のようになったということです。

 

パクチーの扱い

 

巷でパクチーが流行し、消費も伸びていることはメディアの情報からは伝わってきていました。また定番商品として多くのスーパーで扱われていると思います。私が野菜を日常買いしている売り場では、地元産野菜のコーナーに置かれる場合、ハーブ類のコーナーに置かれる場合、葉菜のコーナーに置かれる場合など、扱いは様々です。ここが面白いところですが、定着をしたと言いながらも店側の定義というか分類は定着していないのでしょう。

 

昭和時代のパクチー

 

私は昭和末期に都内でエスニックフードを食べ歩いていた頃があり、当時はベトナム料理、カンボジア料理、台湾料理が3台エスニック料理でした。またパクチーとは呼ばれず、ハーブ名のコリアンダーか、中華名の香菜(シャンツァイ)がメジャーでした。かなり香りというか臭いが強い野菜で、少量でもアクセントになっていたと記憶しています。一般に流通している野菜ではなく、おそらく業務用として少量が取引されていたと想像します。さらにコリアンダーや香菜に対する評価はあまり高くなかったと思います。好き嫌いが分かれ、エスニック好きにはたまらない野菜だったかもしれませんが、一般の味覚や臭覚の感覚からするとかなり異端の野菜であったのではないでしょうか。

 

平成時代のパクチー

 

それから30年ほどたって、この野菜は平成時代末期にしっかり定着したというわけですが、パクチーが定着したこともあると思いますが、エスニック料理そのものが一般化したこともありそうです。特にベトナム料理はファッショナブルな点と野菜を多用しておりヘリシー感も高いことなど、平成時代の流行料理のひとつであったと思います。もちろんパクチー好きの方々が盛り上げた流行もあるでしょうし、生産側や流通側の努力により需要が喚起されたこともあると思います。

 

消費者側からすれば、ハーブ扱いだった野菜が量産されるようになり、価格も手ごろになって日常の素材として使えるようになったことも大きいと思います。エスニックだけでなく普通のサラダのアクセントとしても使え、工夫をすれば和食の添え物などにも使えるようです。料理の印象が明らかに変わる優れた素材と言えるかもしれません。

 

私自身もパクチーを常食しており、葉、茎、根を使い分けもしています。葉はサラダやフォーなどに多量に使い、根は刻んでスープなどの風味付けに、茎は歯ごたえを味わえるよう、各種料理に入れ込んでいます。

 

パクチーの次は?

 

(つづきは、こちら

 

 

 

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共著「アグリフォトニクス供LEDを中心とした植物工場の最新動向―(普及版)」が出版されました

千葉大学の大学院園芸学研究科にある環境調節工学研究室は、私の出身研究室です。施設園芸と植物工場での環境制御技術を広く研究しており、LEDの植物生産への応用研究にも数多く取り組まれております。教授の後藤英司先生の監修による「アグリフォトニクス記機LEDを中心とした植物工場の最新動向」が刊行されたのが2012年で今から7年前になり、私も共著者の一人として執筆をさせていただきました。しかし7万円以上もする、いわゆる豪華本で一般に出回る書籍ではありませんでした。

 

このたび「アグリフォトニクス記機LEDを中心とした植物工場の最新動向―(普及版)」として、税込価格で6,048円に大幅に値下げされ刊行されました。当時と同じ内容での出版になります。

 

アグリフォトニクス記機LEDを中心とした植物工場の最新動向―(普及版)

 

閉鎖型苗生産システムの記述

 

私の担当章は、「【生産システム編】第16章 閉鎖型苗生産システムの特徴と利用」でした。当時は白色蛍光灯を用いた閉鎖型の育苗装置として開発販売されたもの(最初の販売は2000年頃)ですが、蛍光灯の製造中止も予定されており、製品もLEDタイプのものがすでに発売されています。やはり時間の経過による内容の古さは感じますが、現在も当時も閉鎖型の育苗装置というジャンルには変わりなく、技術としてもおおむね確立されていると思います。

 

当時から実用化したこと、しなかったこと・・・

 

実は、この普及版が刊行される前に、「アグリフォトニクスIII -植物工場の最新動向と将来展望-」という最新刊が昨年に発刊されたいます。その目次を見る限りでは、LEDの照明技術や植物工場での応用技術の進展にはやはり目をみはるものがあると思われます。こちらも7万円以上の豪華本で、なかなか手に入れるのは難しいと思います。

 

普及版には、当時、閉鎖型の植物工場でのイチゴ栽培研究をされていた、千葉大学の彦坂晶子先生(環境調節工学研究室准教授)の論文が掲載されています。育苗から収穫までの様々な試験を行っており、LEDの波長(光質)による開花や収量に及ぼす影響などの結果が記載されています。また光の他、温度やCO2濃度の制御によりハウス栽培よりも高い収量が可能であるとされており、改善要素もさらに多くあると結ばれています。

 

当時としてはかなり進んだ研究であったと記憶していますが、現実にイチゴの閉鎖型環境での植物工場栽培は実用化がされており、国内でも数箇所で生産販売が行われています。これはこの本の記載内容が正しく、さらに発展したものと言えるでしょう。

 

また他には薬用植物(カンゾウ)の水耕栽培の例も掲載されていますが、太陽光型、人工光型を問わず、植物工場での栽培は現時点で実用化した話までは伺っていません。イチゴと薬用植物の植物工場での栽培は、2000年代から取り上げられ、取り組まれてきたものですが、現時点の到達点はこのような状況といえるでしょう。

 

 

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千葉大学「土葉会」第326回例会のお知らせ(5月25日土曜日)

千葉大学園芸学部(千葉県松戸市)に、施設園芸、植物工場、養液栽培などでの野菜園芸生産を研究する蔬菜園芸学研究室(丸尾達教授、浄閑正史准教授)があります。大変歴史のある研究室で、OBや研究室の関係者、さらに関東近郊の園芸関係者が会員となっている研究会組織です。今週の土曜日に第326回例会がありますので、この場でお知らせいたします(私は蔬菜園芸学研究室のOBではありませんが、隣の果樹園芸学研究室を卒業し、土葉会の会員です。また2019年度の幹事長にご指名いただきました)。

 

千葉大学園芸学部(JR常磐線・新京成線松戸駅より徒歩10~15分、このようなきつい坂を上った丘の上にあります)

 

土葉会とは

 

土葉会には特に規約もなく、緩い活動形態をとっています。事務局は蔬菜園芸学研究室と、同研究室と関係が深く、同じ千葉県松戸市にある公益財団法人園芸植物育種研究所が年度ごとに交互に担当されています。会員の規定も特にありませんが、原則として1回以上は研究発表や情報提供を行うことになっています。外部の方をお招きして発表をお願いし、そのまま会員になられる方もいらっしゃいます。また年会費も1500円と安価で、年5回の行事(例会2回での研究発表や情報提供、日帰り見学会、年末開催のシンポジウム、宿泊の遠隔地での見学会)のうち1回でも参加することで元が取れると言われています。例会やシンポジウムは土曜日の午後半日を使い、5~7名程度の発表報告がある濃密な研究会になっています。

 

例会の回数が300回台ということで、昭和32年に発足して以来、長年にわたって活動を続けて来た歴史のある研究会です。メンバーは大学以外に関東近郊自治体の農業研究者、普及指導員などの公務員の方、JA関係者、種苗メーカー、農業資材メーカーなどの業界関係者が中心で、会員数は数百名規模と思われます。

 

今年度の活動計画

 

2018年度と2019年度の幹事さんと蔬菜園芸学研究室の先生方とで検討した活動計画をお知らせします。

 

【第326回例会】

5月25日土曜日13時~ 千葉大学園芸学部D112教室 テーマ:最近の話題

・新しい根域環境制御装置(N.RECS)を利用した園芸作物の成長制御(仮題) 日本大学生物資源科学部 窪田聡氏

・結露センサー付き複合環境制御装置を用いた湿度管理による促成ミニトマトの裂果抑制 千葉県農林総合研究センター 佐藤 侑美佳氏

・他3~4題

 

(つづきはこちら

 

 

 

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私の技術者人生(20代後半)

最初の就職先はソフトウエアハウス

 大学院を修了後は企業への就職を目指しました。当時は求人も少なく、学生課の掲示板にあった流通業(現在のイオン)の面接を受けに行き、もう1社、同級生が先に就職していたソフトウエアハウスも受けに行きました。結果的に後者に就職しましたが、前者に就職していたら全く異なる人生になっていたと思います。おそらくスーパーの売り場かバックヤードに配属され、店長候補として仕込まれていたかもしれません

 入社したソフトウエアハウスは、大企業のソフト開発部門を辞めた集団が新たに立ち上げたということで、当時はベンチャー企業の騎手としてマスコミに取り上げられることが多かった企業です。ところが入社前の3月初めにある事件が起こりました。その企業の出資先の経営問題が発生して多大な損失を被るようなことで、社長が記者会見をしているニュースが放映されました。ニュースの意味も金額の大きさもピンとこず、親は内定先の企業がとんでもないことになっていると、おろおろするばかりでした。この件についての決着や影響について、入社後には特に説明はありませんでしたが、やがてこのベンチャー企業も身売りすることになりました。


長い研修期間と調査業務

 こちらは今更、内定企業を蹴っても他にあてもなく、4月から新入社員として働くしかありませんでした。入社すると社内には重苦しい雰囲気もなく、大手企業を辞めたベテラン社員と若手社員が開発や営業に専念している活気が感じられました。新入社員は3ヶ月間の社内研修で大型機の扱いやフローチャート、プログラミング作法などをたたき込まれました。すでに大学で大型機を扱っていましたので、研修内容は難しくはなく、早く仕事をしたい気分でした。同期入社は20名以上いて、研修後には毎日のように盛り場に繰り出していました。

 ようやく研修が終わると、他の同期社員は営業部隊や開発部隊、関係会社への出向など、現場に散っていきました。自分だけは本社の企画部門に配属され、なぜか調査業務を担当していました。外国の石油メジャーの日本参入について英文資料を渡され、まとめて欲しいなど、よくわからない業務が続きました。いったいこの会社は何を目指しているのか?腑に落ちない中で、同じ部門の30代の課長からいろいろなレクチャーを受けるようになりました。

新分野業務への配属

 その課長は、ある業界の電算化について詳しい調査や企画をしており、パッケージシステムの導入をこれから進めたく、メーカーやベンダーとも手を組みはじめていました。課長一人で動いていたようで、社内でもまだ認知されていないようでしたが、若手に加わってほしいということで、自分に話をしてきたのだと思います。

 企画部門のよくわからない仕事よりは実態もありそうですし、コンピュータにも触ることができそうなので、すぐにそのプロジェクトに参加することにしました。しかし、またその業界用のパッケージソフトの研修が始まり、なかなか現場や開発業務には至りませんでした。そうこうしてようやく1年が立つ頃、がんを患っていた母親が亡くなりました。共働きで大学院まで進学をさせてもらい、これから楽をさせてやろうと思っていたところで、無念な気持ちでしたが、それ以上に残された父親が心配でした。

 そんな父親を家に残しながら、ようやくパッケージシステムのカスタマイズや現場導入の仕事が遠い島で始まりました。新設の施設で、しかも不便な場所にあって、1週間単位の出張が断続的に続きました。ソフトウエアの開発というよりも、様々なベンダー機器とホストコンピュータを接続し、業務をうまく回すという内容で、施設の従業員と一緒になって何とか動かす毎日でした。

退職の決断と仕事探し

 若いこともあり、毎日は楽しかったのですが、自宅に残した父親のことも気になり、また島の仕事が終わってからどうなるかもわからず、将来を気にし始めた頃でした。そんな中で次の仕事の話が出始めました。関西にある風俗関係の施設へのパッケージシステムの導入ということで、具体的な図面もあって、どのように機器を配置するかなど、話が具体化しつつありました。しかしこの話には乗り気にはなれませんでした。風俗関係というアレルギーがあったのだと思います。入社2年目で仕事を断るわけにもいかず、悩む日が続いていたのですが、思い切って辞めようと決断は早かったと思います。

 次の仕事の当てもありませんでしたが、自分がやりたかったことは何か、改めて考え直してみると、学生時代に関わった農業とコンピュータの仕事が浮かび上がりました。現在であれば、そうした分野に参入する企業は後を立ちませんが、当時はそんな企業は皆無でした。自分の力ではどうしようも無く、大学の研究室の指導教官だった古在豊樹先生(後の千葉大学長)に、事情を話して近い企業があれば紹介をお願いしました。

2社目の業務と人脈の核

 最初の会社を辞める数ヶ月前の話でしたが、すぐに候補先の企業が見つかって、直接担当の方にお会いしました。温室やビニールハウスなどを扱う農業資材業界の古手の企業で、当時でもそれなりの位置にいた企業でした。農家向け会計ソフトの開発販売もしており、この先も農業の情報化に対して展開をしたいとの意向でした。また自分の出た研究室の研究内容についても評価をいただいており、教官の推薦ですぐにも採用してくれる状況でした。

 自分自身の人物評価はどうだったかは分かりませんが、何回も面談する間にいろいろと試されていたと思います。そのうちに人生で最初で最後の転職をすることになり、昭和の終わり頃の暑い夏の日に入社をしました。配属先は本社内に設けられた別組織の研究会で、出向の形で調査研究員の肩書きをいただきました。またもや調査の仕事です。入社2日目には四国で開催されていた学会への出張命令があり、瀬戸大橋も開通前の時代のため、三原まで新幹線を乗り継ぎ、今治にフェリーで渡り、目的地の松山に到着したのは2日目の夜でした。

 その時は業界の重鎮や若手研究者が集まる学会に行ってとにかく挨拶をして名刺を配ってこい、という出張内容でした。そんな仕事があるのか?と思いましたが、入社二日目では言われた通りにしか出来ないこともあり、知っている大学の先生や研究者の方を頼りに懇親会であいさつ回りを実行しました。後から上司に聞いた話として、「君は人脈の核を持っているから、それを活かす仕事をしろ」ということでした。確かに母校の研究室の関係で、学会でも多くの知り合いに会うことができました。そしてそれは今日まで脈々とつながることになります。(つづく)

 

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高知県の施設園芸情報の一元化

日本農業新聞の5月3日付け1面トップに「施設園芸情報一元化 全戸にシステム普及 AIが分析栽培最適化・・」との見出しの記事があります。

 

高知県の施設園芸の進展

 

高知県では施設園芸は主要産業であり、知事のリーダーシップで様々な施策を進めています。技術面では、CO2施用などの環境制御装置の普及が行われ、それをサポートする専門の普及指導員の育成もされてきました。また天敵の導入もいち早く行われるなど環境保全型農業が施設園芸にも浸透しています。また、次世代型ハウスと称する高軒高ハウスの導入も支援しており、木骨ハウスと農業用ビニール利用のイメージが強かった施設園芸の現場も施設や設備の近代化が着実に進んでいると思います。

 

今回の新聞記事は、従来の施設園芸施策と成果をベースとして、さらに企業との共同研究成果による収量予測の精度向上や、IoPクラウドと呼ばれている様々なデータを一元管理する仕組みを構築し、施設園芸の全戸に普及させ、集まるデータをもとにハウスごとの栽培内容を見える化、AIが栽培モデルを作ったり、技術の高い農家のデータをもとに営農指導などに活かすというプロジェクトの紹介と思われます。非常に広範囲な仕組み作りと思われ、プロジェクトとしても施設園芸分野ではかつてない規模で現場を巻き込むものと考えられます。

 

内閣府の地方大学・地位産業創生交付金の高知大学への採択

 

この記事の内容は突然現れたものではなく、おそらく内閣府の「平成 30 年度地方大学・地域産業創生交付金」に高知大学などが応募して採択された「“IoP(Internet of Plants)”が導く「Next 次世代型施設園芸農業への進化」を元にしたものと思われます。

 

この交付金の趣旨は内閣府によると「地方を担う若者が大幅に減少する中、地域の人材への投資を通じて地域の生産性の向上を目指すことが重要。このため、「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律」に基づく交付金として、首長のリーダーシップの下、産官学連携により、地域の中核的産業の振興や専門人材育成などを行う優れた取組を重点的に支援する。これにより、日本
全国や世界中から学生が集まるような「キラリと光る地方大学づくり」を進め、地域における若者の修学・就業を促進する。」とあります。

 

高知県では、高知大学や高知工科大学、地元のJA組織や金融機関、工業会などが参加する産官学連携プロジェクトとして採択され、初年度交付金が481,769 千円で5年間の交付が予定され、その5年間で10年先に向けた地域の自走をはかる趣旨となっています(参考ホームページ:平成 30 年度地方大学・地域産業創生交付金の交付対象事業の決定について 内閣府地方創生推進事務局

 

高知大学を中心とした大規模プロジェクトの内容

 

高知大学は、「“IoP(Internet of Plants)”が導く「Next次世代型施設園芸農業」への進化 」として、プロジェクトの概要を公開しています。参加機関や専門家の数が多いことが目を引きますが、主要なテーマは次の3つのようです。

  • 全国に先駆けてオランダの最先端技術を取り入れて普及を開始した「次世代型施設園芸システム」を、多様な園芸作物の生理・生育情報のAIによる可視化と利活用を実現する「IoP(Internet of Plants)」等の最先端の研究により、飛躍的に進化させる。
  • 「Next次世代型農業」の展開と「施設園芸関連産業群の創出・集積」、「アグリフードビジネスを担う人材育成」などを通じて、「若者の定着・増加」を図る。
  • 「Next次世代型農業」の普及とさらなる高度化を図る仕組み「IoP推進機構(仮称)」により、自走する体制を目指す。

 

このテーマから読み取れる内容は、オランダからの先端技術導入などで進化した施設園芸を、作物の情報まで対象に広げたAIを利用した高度なシステム(予測や栽培技術支援などと思われます)で進化させ、関連作業を発展させ、人材育成を大学などを通じ行って、若者の定着をはかり、それらを10年先を見据えて組織的に行う、ということだと思います。若者人口のこれ以上の流出を防ぐという深刻なテーマが大元にあって、その対策に内閣府が交付金によって支援を行うという枠組みと考えらます。

 

技術的にはAIやクラウド利用といった点に目が向きがちですが、県全体で10年がかりのプロジェクトに取り組むという志や危機意識も、この記事からはくみ取るべきでしょう。巨大プロジェクトのため、全容は記事からは理解しがたい面もありますが、このような交付金が法律で定められ、全国の7か所で動き出しているということです。施設園芸の関係者は、高知大学や高知県の試験研究機関、先端的な施設園芸関係者の動向にもこれから注視すべきかと思います。

 

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私の技術者人生(大学時代)

還暦になって、これからの人生に思いを巡らす時間を持つようになりました。未来は過去の延長にある訳で、技術者としての自分の歩みを振り返っています。

 

大学受験

 

進学校から国立大学を受験するも、志望校(農学系)には落ちる。私学は合格したが、学費のこともあり浪人を決断した。試験範囲を網羅できていないのが失敗の要因とわかっていたので、教科書レベルからやり直す。当時は地元に予備校は無く、都内に毎日通うのも大変なため、予備校単科コース(現国、生物、化学)通学と通信添削(Z会の英語、現国、数学)で対策することに。

農学系で生物と化学は直接関係する学科であったが、大学に入ってからは農学の中でも物理が重要であることがわかった。そのことを知っていたら理科の選択科目を変更していたかもしれない。受験科目ひとつで、その後の人生を左右することもある。

 

大学(教養課程)

 

大教室での大授業は予備校で経験済みだったが、代返やエスケープが日常茶飯事なのに驚く。勉強をしに来ているはずなのに、いったい大学はどうなっているのか?という素朴な疑問を持つ。フランス語で脱落したため、ついに自分もエスケープを始めてしまった。語学は継続が大切なのに、自ら放棄したことに悔やむ。

 

大学(専門課程)

 

農場実習で初めて栽培に触れる。果樹の剪定、野菜の定植から収穫、鉢花の手入れなど、どれもどうやったら良いのかまったくわからない。同級に農家出身、農業高校出身者がかなりおり、彼らにとっては何のことはなかったはず。逆に農業高校出身者は教養時代から英語には苦労していた。ゼミの英文輪読会も大変であったろう。3年次からナシやブドウ栽培の研究をしていた果樹研究室に入る。植物ホルモンに関する研究が盛んだったが、教授に割り当てられたのはナシのハウス栽培のテーマだった。ここで施設園芸に初めて触れた。たぶん現在につながるきっかけの一つだった。

 

農学原論という講義

 

専門課程の講義は蔬菜や果樹の栽培系と、農業気象やハウス環境制御などの物理系に大きく別れていたが、やはり受験で物理を選択しなかったことが響いた。試験でも最低限の点数しかとれず悔やまれた。そうした中で、「農学原論」という少人数のゼミ形式の講義があった。三原善秋先生という退官間際の教官で、江戸時代の農学者(安東昌益など)の教えを現代に当てはめての講義であった。他の講義とはまったく毛色の違う内容だったが、江戸時代のことをまさか専門課程で学ぶとは思わず、得をした気分であった。

 

コンピュータとの出会い

 

専門課程の実習にコンピュータの科目があった。当時は日立の大型機の端末が置かれ、大型機本体は遠く離れた本学の計算機センターにあった。パンチカード式のプログラミングがTSS端末に変わる時期であった。コンピュータ利用研究会(通称:端末研)が学部内で開催され、マニュアルを読み統計パッケージソフトの使い方を研究し、卒論や修論に使うものが多かったが、自分にはあまり役には立たなかった。別の研究室ではコンピュータを使ったハウスの環境計測や制御の研究をやっていた。同じ農学系なのにやっていることは全く違うのに愕然とした。しかし研究室のメンバーは畑の脇の小屋に寝泊まりし、徹マンをしていた。夜中から明け方の温度計測というのが名目のようだ。

 

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結局、そちらの研究室に出入りし、当時のNECのPC8001や、アップルコンピュータのapple兇覆匹某┐蕕擦討發蕕ΑF辰apple兇砲詫諭垢淵哀薀侫ックデバイスが接続され、日立の大型機とはまったく違う環境で、これも驚いた。葉面積の計測、表計算でのデータ集計、basicのプログラミング、ペンプロッターでのグラフ作成など、ナシのハウス栽培試験の卒論もこちらの研究室で作業を進めた。この研究室が農学原論の講義をされた三原善秋先生が創設された園芸環境工学研究室であった。栽培系ではない、純粋な工学系の研究室で自分とは縁のない分野と思っていたが、二人の教官との縁があった。

 

大学院進学

 

まわりが就職活動に熱心な時期に、自分はコンピュータで遊んでいた。結局、その研究室の助教授(古在豊樹先生、後の千葉大学長)に声を掛けられ、大学院に進学した。面接試験で隣の研究室の助教授(伊東正先生、後の千葉大副学長)にはコテンパンに質問責めにあったが、あとになって高校の大先輩ということがわかった。この二人の先生には社会人になってからも縁が続いた。

 

大学院で所属した研究室の35周年記念マグカップ

 

 

修士論文

 

修士論文は、果樹研究室との関係で、ブドウの剪定方法をCAI(Computer Aided Instruction:コンピュータ支援学習)で行うプログラミングであった。当時の最新機器であったPC9801シリーズのグラフィック機能をフルに使い、ブドウの成長や剪定後の様子などを何パターンか用意してシミュレーションするものであった。プログラミンそのものは没頭すれば難しいものではなかった。アルゴリズムも実際に剪定を実習でしていたのでイメージはできた。しかしプログラミングについて修士論文にすることは、また別の難しさがあった。研究室の先輩や後輩には、同様に様々なアプリケーションを開発し論文化していた学生も多く、参考にさせてもらった。

 

研究室特有の人材

 

しかしとんでもない後輩もいて、卒論でハウスの環境制御用コンピュータを基盤レベルから自作し、修論では植物の病害診断などに用いるエキスパートシステムを、これも言語レベルから開発した星岳彦さん(後の東海大学開発工学部教授、現近畿大学生物理工学部教授)だ。星先生には社会人になってからも折をみて最新技術などのレクチャーを受ける機会を得た。また研究室の先輩には、農林省の農業環境技術研究所や東北農業試験場で温室環境分野で活躍された岡田益巳博士、農業工学研究所で同じく温室環境分野で活躍された佐瀬勘紀博士が数年先輩におられた。今も大変お世話になっている東海大学名誉教授の林真紀夫博士も大先輩である。

 

東京大学との交流

 

研究室は、東大で同様な研究を行う研究室との交流があり、定期的にソフトボールの試合なども行っていた。東大の同学年の後藤英司さん(後の千葉大同研究室の教授)や、一学年上の本條毅さん(後の千葉大学の緑化環境システム研究室の教授)、数年上に仁科広重さん(後の愛媛大学副学長)とも良く一緒に楽しんだ。また東大の教授であった高倉直先生(後の福岡国際大学長)には長くお付き合いいただき、最近は沖縄県農業研究センターに赴任されてからも、沖縄の施設園芸をご紹介いただいている。

 

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研究室と現在の自分

 

 

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高度環境制御技術とは?

植物工場の定義に、高度環境制御技術という用語が出てまいります。以前は複合環境制御という用語が一般的に使われ、最近では統合環境制御や総合環境制御という用語も使われています。字面からも微妙に意味が違うように思えます。時代をさかのぼってみたいと思います。

 

制御盤から複合環境制御盤へ

温室内の環境制御機器は、暖房機、カーテン装置、天窓や側窓などの換気装置、循環扇や換気扇、CO2発生装置、細霧冷房装置など多岐にわたります。おのおのの機器の動作は、専用のコントローラやサーモスタット装置で行われていました。単純なオンオフ設定からタイマー設定、センサーの信号にもとづく目標値の設定など、次第に制御内容が強化されてきました。しかし、装置の数だけ制御盤や制御装置が必要となり、それだけでもスペースをかなり取ることになります。また操作や設定の作業も煩雑になります。

 

複合環境制御装置は、上記の各制御盤や制御装置の機能を一体化したものと言えます。複合環境制御装置にはインプットに当たるセンサーからの信号が送られ、内部で演算や判断を行い、アウトプットに当たる各制御機器の動作をコントロールします。その際に複数の機器を制御することから、複合環境制御装置と呼ばれるようになりました。

 

複合環境制御装置は、昭和から平成にかけての製品であり、昭和には複数の専業メーカーが製品開発や販売を行っていました。しかし市場もさほど広がりをみせず、多くのメーカーは廃業や撤退をし、生き残ったのはごく一部でした。

 

国産の複合環境制御装置

 

生き残ったメーカーの製品の機能をみますと、単に複数の機器の動作を制御しているだけでなく、例えば日射量と温度、タイマーと温度など、複数の要因から判断を行うアルゴリズムを搭載しており、ある程度の複雑な制御を行うことができるものでした。また動作自体も、天窓であれば少しづつ開閉して急激な外気の侵入を防ぐような工夫もあり、カーテンであれば同様に少しだけ隙間を開けて少量の換気を促すような機能もありました。機器操作の自動化の段階から、温室内の環境(温度や湿度)を適正に保つ、安定化する方向に向かっていたと思います。価格は数十万円から百万円程度でした。

 

オランダの統合環境制御装置の登場

平成の中期になると大規模施設園芸が徐々に国内に建設されるようになりました。そこでは大面積での制御点数が増加し、国産の従来型の複合環境制御装置では手に余る状況となっていました。必然的に、すでに大規模施設園芸が普及していたオランダの製品が使われるようになり、大規模施設園芸とセットで語られる時代が到来しました。Privaが、その代表例です。

 

Privaのような統合環境制御装置の特徴は、センサーの入力点数と制御用の出力点数が多く大面積の施設に対応していたことです。また、温湯配管による暖房や、潅水装置、液肥混入機、培養液殺菌装置などの大規模で複雑な系統にも対応したものでした。さらに内部の制御アルゴリズムも様々な設定や補正機能を持ち、設定項目が何百もあるという複雑なものでした。これは現在も変わっていません。導入し使いこなすためには、メーカーやコンサルタントの支援を受ける必要もありました。システムの価格も1000万円台となるものでした。

 

国産の統合環境制御装置の登場

平成時代の後期になると、オランダの製品ほどの大規模施設や温湯配管、養液栽培の系統までは対応をしていないものの、ある程度の面積と複雑なアルゴリズム、PCや携帯端末との接続機能やデータ閲覧機能などを持った国産のシステムが登場しました。これらも統合環境制御装置と呼ばれており、価格は数百万円台のものが多いようです。環境の見える化が言われ始め、また様々な環境制御のテクニックが導入されるようになって、それらに対応した制御装置が求められるようになったものと思われます。メーカー数も多く、施設園芸の製品の中では激戦であると思います。

 

 

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高度環境制御技術への移行と課題

 

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高度環境制御装置と養液栽培施設の導入面積

農水省の「園芸用施設の設置等の状況(H28)」は、施設園芸の面積や栽培品目、付帯設備の導入状況などを調べるための必須資料です。都道府県ごとの調査をまとめたもので、項目数も多岐にわたっています。施設園芸の付帯設備の中で、高度環境制御装置と養液栽培施設に注目して調査結果を都道府県単位で再考してみたいと思います。

 

施設園芸面積と加温設備、高度環境制御装置、養液栽培施設の導入面積

 

施設園芸面積と加温設備、高度環境制御装置、養液栽培施設の導入面積 (農林水産省:園芸用施設の設置等の状況(H28)をもとに作成)

 

グラフは施設設置面積の上位都道府県を左から並べたものです。施設園芸の盛んな都道府県がどこかは一目となります。また加温設備、高度環境制御装置、養液栽培施設の面積も都道府県ごとに加えています。施設設置面積に対し加温設備の導入比率の高い都道府県(宮崎、愛知、栃木、静岡など ※高知の加温設備面積の値は低すぎるようです)も一目となります。

 

宮崎県はほとんどが加温設備が入っており、同じ九州の熊本県では半分程度となっています。熊本県にはまだまだ無加温の施設が多いことになりますが、宮崎県の施設園芸はきゅうり、ピーマンを始めとする越冬栽培の比重が高いとも言えます。もちろん熊本県は施設設置面積も加温設備の導入面積も全国ではトップとなり、大産地を形成しています。

 

また愛知県、栃木県、静岡県といった施設園芸産地県でも加温設備の割合が高く、いずれもトマトやメロンなどの越冬栽培を中心に産地形成がされてきたと想像します。その次のグループが福岡、佐賀、長崎の九州勢、群馬、千葉の関東勢となり、トマトやキュウリを中心とした越冬栽培の産地がある県であります。また宮城県も半分程度に加温設備が導入されており、夏秋栽培と越冬栽培が同程度の面積であると言えます。宮城県は近年、大規模施設が数多く導入されており、加温設備の導入比率も上昇傾向にあると思われます。

 

高度環境制御装置、養液栽培施設の導入面積

 

同じデータから、高度環境制御装置と養液栽培施設の導入面積だけを取り出し、上位の都道府県だけを抜き出してグラフ化をしてみました。

 

高度環境制御装置、養液栽培施設の導入面積 (農林水産省:園芸用施設の設置等の状況(H28)をもとに作成)

 

このグラフでは、双方の装置設備の導入状況に異なる傾向が各都道府県で見られます。養液栽培施設面積>高度環境制御装置面積のところと、その逆のところに二分されています。養液栽培施設面積の比率が高い都道府県は、そもそも養液栽培が盛んなところで、愛知県のトマト、宮城県のトマトやパプリカ、香川県のイチゴ、大分県のトマトやイチゴ、静岡県のトマトなどです。そうした県は養液栽培の導入が先行し、後になってから高度環境制御装置の導入が進んだものと思われます。これは近年の動向に合致していると思われます。本来であれば双方の装置施設が導入されて相乗効果を上げていくべきなのでしょうが、タイムラグが実際にはあると思われます。

 

養液栽培施設面積の低い都道府県は、福島県、福岡県、熊本県、群馬県などで、養液栽培はそこそこ取り組んでいるところ、ほとんど取り組まれていないところと言えるでしょう。

 

このグラフを俯瞰してみると、施設設備の導入面積から見ると愛知県と宮城県が全国をリードしているように思えます。また養液栽培の歴史の方が高度環境制御技術の歴史よりも古いと言えるため、全体的には養液栽培施設の面積割合が高くなっていると思われます。

 

この先の装置設備導入の伸びしろがどの程度あるかは、なかなか読み取れませんが、養液栽培が先行して導入されている都道府県には高度環境制御装置の導入の余地があるように個人的には思えます。また土耕栽培が盛んな都道府県もあるため、養液栽培化が急速に進むかというと、そうでもないのではと思います。各都道府県の主要品目や作型などを思い浮かべながら読み取ると面白いグラフであると思います。

 

 

 

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農業・施設園芸への企業参入

昨日(4月29日)の日本農業新聞アグリビジネス面に、農業参入企業に対し行ったアンケートの結果を記事にまとめられていました。農業参入の理由として、新規事業の展開、地域貢献、本業の付加価値化などをあげる企業が多い、という記事内容でしたが、解説として農地法改正による農地リース方式による参入自由化があげられていました。

 

農地法改正での農地リース自由化と企業参入

 

資料:農林水産省経営局調べ(平成29年12月末現在)

 

10年前の2009年の農地法改正によって、農地リース(借地)が自由化され、一般法人が農地を借りることができるようになりました。その法人数は2017年末で3030法人になり、改正前の9.7倍とのことです(農水省資料からの解説記事)。3030法人のうち約4割が野菜栽培となり最多とのことで、その一部は施設園芸を行う法人となります。法人の内訳は、農水省の資料:一般企業の農業参入状況(平成29年12月末)に掲載されており、食品関連産業からが21%(632法人)、建設業からが11%(335法人)、NPO法人からが9%(263法人)、その他(サービス業他)からが23%(684法人)などとなっています。

 

いずれの法人も農地リース自由化前には農地の貸借は自由に行えず、農業参入や施設園芸参入での農地利用には制約があり、この自由化によって企業参入が容易になった訳です。実際の農地貸借には、地権者との交渉、とりわけ複数地権者に対する合意形成が必要で、手間と時間を要することが多いのが実態です。これは地権者数が多いほど大変な手続きとなり、企業参入では地元の協力が重要になってきます。農業新聞の記事にある企業の農業参入の理由の2番目には地域貢献とあり、これも当然の理由と言えるでしょう。

 

施設園芸分野への企業参入と成否

 

農水省の資料には施設園芸分野への参入状況の記載は残念ながらありません。しかし全体の4割の1,246法人のうちの一部は施設園芸であり、相当数が該当するものと思われます。特に最近の数ha規模の大規模施設園芸では、そのほとんどが企業参入であり、農業新聞の記事の農業参入理由のトップである新規事業展開(約70%の企業があげる)を中心に事業化を進めていると思われます。例として全国10箇所で大規模施設園芸を行っている次世代施設園芸拠点の事業主体は、すべて株式会社や有限会社です。また大規模施設園芸が集積する山梨県北杜市にも株式会社による参入が多数あります。この背景に農地リースの自由化があることは間違いありません。

 

また解説記事には、技術習得や人材確保といった課題から撤退する企業が多い、と軽く触れられています。撤退理由には様々な要因があるはずで、この2点だけで判断すべきでは無いと思われます。やはり事業計画段階で、技術習得や人材確保も含め、栽培施設の妥当性や生産コストの試算、販路確保などを含めた実現可能な経営計画の策定が求められるでしょう。

 

記事の約半分では最近の企業参入の事例として、大手不動産会社と農業ベンチャーが共同で出資した農業法人の経営を紹介しています。千葉市でハウス2棟(計43a)での高糖度ミニトマトの栽培を行うとあり、課題は安定生産と販路確保とあります。またミニトマトを糖度別に販売し、小売価格は一般的な商品の2,3倍でスーパーを中心に販売するとあります。スーパーで販売される野菜の高額商品は高糖度トマトやイチゴなど一部に限られており、そこでの販路開拓は確かに課題と思われます。また安定生産が課題とあるのは具体的には不明ですが、高温期や寡日照期などの安定生産を指しているのかもしれません。こうした課題を織り込んで立ち上げてから数年かけ経営を軌道に乗せることが、企業参入での成否につながるものと考えられます。

 

企業参入による施設園芸の未来

 

おそらく施設園芸への企業参入は途切れないものと想像します。新規事業の創出や展開は、どの業界、どの企業に置いても常に課題であり、その候補には農業分野や施設園芸・植物工場分野が今後も必ずあげられると思われます。記事の解説として企業の農業参入に詳しい岡山大学の大仲准教授のコメントがあり、今後の企業参入増加に対し農業現場での企業とJAなどとの共生の必要性を示されています。これは人材確保などでの競合発生を懸念されてのことですが、その他にも販売や物流での共同化、現場からの技術的な支援、企業経営のノウハウの提供など、様々な共生の関係が考えられます。単純な企業参入から地元を巻き込み協調をはかる共生関係は確かに未来への道筋に思えます。

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください

 

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土耕栽培と養液栽培の未来

養液栽培面積の増加

 

養液栽培の面積は年々増加していますが、最近の平成28年の農水省調査では、施設栽培面積43,220haに対し養液栽培面積2,003haで約4.6%でした。平成19年の同調査では、施設栽培面積50,608haに対し養液栽培面積1,375haで約2.7%でした。この9年間で施設栽培面積はマイナス7,388haと約14.6%減少し、養液栽培面積はプラス628haと約45.7%増加しています。

 

 

 

一方で施設栽培面積から養液栽培面積を差し引いた土耕栽培面積は、平成19年には49,223ha、平成28年には41,217haとなり、マイナス8,006haと約26.3%の減少となります。この数字だけ見ると土耕栽培の減少率に対し、養液栽培の増加率が非常に高く見えますが、いまだに施設栽培面積の95%以上は土耕栽培となり、日本の施設園芸の中核を占めていると言えるでしょう。


品目別の養液栽培面積

次に品目別に見てまいります。グラフは年次、作物別の養液栽培面積(単位:ha)です。この中で養液栽培の多くを占めるのがトマトといちごです。当初よりトマトの比率は多く、その後も安定的に伸びてきたと言えます。また、いちごの伸びも安定しています。次に多い「その他」の内訳は明らかではありませんが、ほうれんそう、ベビーリーフなどの葉菜や、パプリカなどの果菜が該当していると思われます。

 

品目別の養液栽培実面積推移(単位:ha) 資料:農林水産省 園芸用施設の設置状況等(H28)


農林水産省 園芸用施設の設置状況等(H28)によると、平成28年にはトマトの栽培延面積約7,083haに対し養液栽培実面積は約720haとなっており、いちごでは栽培延面積約3,856haに対し養液栽培実面積は約661haとなり、他の野菜よりも比率は高いと思われます。その背景として、トマトの大規模施設ではほとんどが養液栽培(固形培地耕)を導入していること、いちごでは省力化や観光農園用に高設栽培が普及していること、などがあげられます。

それにしてもですが、トマトでもいちごでも施設栽培の大半は土耕栽培であり、オランダのように養液栽培が中心の施設園芸とは様相が異なっています。

養液栽培と土耕栽培の未来

先ほどのグラフの傾向を見る限りでは、今後も養液栽培面積の増加が見込めるかもしれません。施設の大規模化と養液栽培の導入には高い関係があり、企業参入や農業法人の経営拡大にともなったそうした傾向は今後も続くことが考えられます。

 

しかし、中小規模の個人経営農家の場合、大規模施設への設備投資のみならず、養液栽培への設備投資にどれだけ積極的になれるかは、未知数な部分もあると思います。導入に対する費用対効果がまず気になる部分であり、導入によって経営の損益分岐点が上昇する分を収量増や売上増でカバーする必要がありますが、トマトのように市場価格が低下傾向にある品目では投資にはどうしても及び腰になるかと思います。キュウリやイチゴであれば単価が安定しているため投資の計算もしやすいかもしれません。実績のあるイチゴ養液栽培の面積増、養液栽培の実績がまだ少ないキュウリ栽培の動向など、注視すべきことになると思われます。

 

養液栽培の動向を中心に考えておりますが、養液栽培と比較した場合に土耕栽培にも様々なメリットがあります、例えば・・

・設備投資が少なく、損益分岐点が低い

・栽培ベンチやベッドが無い分、空間容積を有効に使える

・土壌からハウス内への水蒸気やCO2の供給がある(マルチ展張による低減はある)

・土壌消毒期間を長くとるため、休養期間も長い

・脱着式レールを敷設することで、高所作業車も養液栽培と同様に利用できるようになった

ということがあると思います。

 

一方で、デメリットとして

・作替え時の土壌消毒や堆肥投入が必要で、栽培期間も短くなり、労力も余分にかかる

・土質や土壌の均一性により、保水性や排水性が異なり、調整が必要

・養液栽培に比べれば根圏の容積は大きいが、少量多頻度潅水を行わないと水分率の変化が起こりやすい

・土壌病害のリスクがある

・初期の土壌改良が必要な場合がある

・大規模栽培では、堆肥投入作業や土壌消毒作業の負担が大きい

 

以上のような両面があり、ケースバイケースで判断が必要なところもあると思います。最終的には投資を伴うことなので、収量や売上、作業労力や投入資材などの経済性と、栽培技術の難易度などを総合的に評価する必要があるでしょう。いずれも絶対ではなく、未来に向けて残ることは間違いないと思います。また環境負荷の問題も含めた総合的な評価が必要な時代になっていると考えます。

 

 

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