施設園芸の労働生産性と情報の紐づけ

前回のブログに引き続き、先日の大阪府立大学における、日本施設園芸協会主催、大阪府立大学植物工場研究センター講演による成果報告会「次世代施設園芸拠点の運営管理の向上」からのレポートです。

 

農研機構野菜花き研究部門の東出さんによる講演「情報管理における生育収量予測の可能性」からのレポートです。東出さんは、次世代施設園芸拠点の現地調査や指導におけるリーダーをお願いし、この5年間で延べ200回近い現地調査に参加をしていただきました。また、経営体強化プロジェクトなどの研究開発プロジェクトをけん引されている施設園芸研究の第一人者の方です。

 

〇収量予測モデルの活用

 

東出さんからは、収量予測モデルを活用し、生産現場から取り込んだデータをもとに生育や収量を予測する考えについての報告がありました。ここでのデータとは、環境データの他に、葉面積などの生育データも含まれます。それらのデータはモデルに入力され計算結果は予測収量として利用可能な形になってきます。実際にモデルを用いて農研機構や実証農場で試験栽培を行ったところ、都度、環境制御の設定値をモデルでのシミュレーションを元に見直しをすることで、大玉トマトで50kg/岼幣紊亮量を実現しているとのこと。モデルを元に環境制御や植物管理の改善をPDCAサイクルとして継続的に行ったことによる成果、とのことで、これは新たな施設園芸のコンセプトになる予感がしました。つまり、漫然と栽培をするのではなく、常に計画と結果を対比しながら微調整を継続することで、おそらく複利的な効果が積み重なって高い収量に結びついているのでは?と想像するものです。

 

〇データの紐づけによる利用

 

講演の主題は、「収量予測モデルの活用について」でしたが、もう一つのテーマとして「データの紐づけによる有効活用」がありました。ここでのデータは環境データ、収量データ、植物生育データの他に作業データも含まれています。近年は環境データはクラウド経由などで自動的に大量に蓄積されるようになり、植物生育データも様々な計測が提案され現場での計測が盛んになっています。しかし多くは科学的な根拠がないままに利用されているか、利用もされずに死蔵されているケースが多く、まだまだ改善が必要というお話でした。

 

では、どのような観点でデータを有効活用すべきか?ということについて、東出さんは「データの紐づけ」を推奨されています。このことは、2つの異なるデータ間の関連を重視して、その因果関係の究明や他の農場などとの比較に用いる考えです。例えば、エネルギー投入量(J)当たりの収量(kg)、作業量(h)当たりの収量(kg)など、生産性指標に関するものが含まれると思います。こうした紐づけや指標化によって、絶対値ではなく相対値として比較が可能になるとともに、異なる圃場、異なる気象条件の場合においても、比較がしやすくなるメリットがあると思います。オランダの施設園芸との比較例が出されましたが、面積当たり収量の差以上に、作業量当たりの収量の差が日蘭で大きく、作業効率の高さ、標準化された作業体系や作業者の熟練度の高さなどが想定されました。

 

〇これからのデータ連携、データ活用

 

他の専門家の会議の場などでも、このような作業量についての取扱いが徐々に出始めており、これからはそうしたデータの取扱いを統一化する必要がある、といった意見も耳にしております。特に単位の統一は重要で、分母分子が逆になる場合も予想され、データの活用場面を想定した検討が求められると思います。確かにまだ始まったばかりの取り組みではありますが、膨大に発生するであろう各種データを連携させ、生産性向上に役立てることは、われわれ施設園芸関係者には必須のテーマになると思います。

 

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