国産野菜の生産と植物工場の未来

国産野菜の需要と植物工場の未来

植物工場について、マスコミではブーム的に取り上げられることが多く、撤退や倒産があると、さも植物工場全体がダメという論調がありました。ブームがあったのかどうかも定かではありませんし、この先もブームは訪れないと思います。

生鮮野菜を生産する太陽光型や人工光型の植物工場が存在しているのは、国産の生鮮野菜に対するニーズによるもので、もし輸入の野菜で良いという国民の意識が大勢ならば、わざわざ手間をかけ国内で植物工場で野菜生産をする必要はないと思います。国産の野菜を生産する農家数が急激に減る中で、それを補完するための植物工場や、参入企業はこれからも一定数で増えていくと思います。

絶対需要と市場内競合

国産野菜に絶対的な需要が存在するなら、それに向けたビジネス化の流れが止まることは無いと思います。しかし、同じ方向、同じような生産や販売を指向する参入者が増えてしまうと、お互いの競合が発生して折角のパイを食い潰してしまう恐れもあります。ここ数年のトマト生産の増加と価格低下が典型例と思いますが、数量の増加以上に市場価格の低下は大きくなるため、影響はかなり大きいと思います。やはり、ほどほどが肝心であって、競合しない程度の生産販売に注意する必要があるでしょう。

今後の品目展開

高度環境制御を行う太陽光型植物工場や人工光型植物工場では、それに適した栽培品目は今のところ限られていると思います。太陽光型ではトマトが主流であり、数はまだ少ないもののパプリカやイチゴの例があります。また全農がゆめファームのプロジェクトとして高知県でナス、佐賀県でキュウリの大規模栽培を開始、もしくは計画しています。葉菜ではサラダ菜などのレタス類、村上農園を中心としたスプラウト類がありますが、一般の施設園芸に比べると品目が限定されています。しかし特に果菜類はいずれも施設園芸の中心品目であり、トマトとパプリカ以外は生産者や栽培面積の減少が顕著なことから、植物工場による生産の補完は意味あることと考えられます。

 

レタス類栽培を統合環境制御により行う太陽光型植物工場(ひむか野菜光房・宮崎県)


人工光型植物工場では、相変わらずでありますが、リーフレタスやサラダ菜などのレタス類が中心であり、これにハーブ類やベビーリーフが少数ながら続いています。あまり強い光を必要としないレタス類の栽培が人工光型での品目の中心となっています。また、新顔としてイチゴの栽培も数例ですがみられます。詳細の情報はまったくわかりませんが、周年出荷のため四季なり品種を用い、長期間引っ張るような作型で安定供給をはかる仕組みではないかと想像します。

一般の施設園芸と植物工場の棲み分け

太陽光型植物工場は1ha以上の規模で、高度環境制御と養液栽培での生産を行う施設として、最近は定義がされています。個人経営の農業生産者で1ha規模の施設を建設した例は早々なかったと思います。これは数億円の建設費と、補助事業が組まれたとしても補助残の調達が大変であることなど、資金面の問題が大きいと思われます。またまとまった用地を取得するには複数の地権者の同意が必要であり、それを個人が調整して進めることにも困難が伴うことがあります。

このようなことから太陽光型植物工場は一般には企業参入による取り組みと考えられてきました。個人経営の生産者では、数10a規模の施設を順次増設して全体でha単位となる経営を行う場合が見られます。しかし数10a単位の施設に比べha単位の施設では、作業面の効率性向上、部材点数削減などによる施設コストの低減、温湿度などの栽培環境の安定化などのメリットもあり、今後は大規模施設での経営に意欲を示す生産者も、特に若手を中心に増えるはずです。

今後は植物工場が企業だけのもの、という意識にとらわれることなく、特にネックとなる施設コストや資金調達、用地確保の問題の解決に望みながら、国産の野菜生産と施設園芸の維持発展を考えていくべきではないでしょうか。

 

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