平成初期の熊本県の大規模トマト栽培

○永江弘康先生と施設園芸の経営研究

 

施設園芸などの農業経営研究者の故永江弘康先生の著書を元日に読み返しています。永江先生は熊本県八代市の出身で、千葉県農業試験場や千葉大学で農業経営研究を行う中で、故郷の八代や同じ熊本の植木などに足しげく通われていました。また成田空港の三里塚闘争円卓会議にも参加され土地所有者の農民と空港公団側の話し合いの場に立っていたとお聞きしています。その他、中国の施設園芸の調査なども晩年近くにされ、2001年に東京農業大学に移られた後に逝去されました。
  
 非常に活動範囲の広い先生で、千葉県に在職中にも他県に調査に積極的に向かわれ、その成果を千葉県の農家などに講演していました。私も千葉県の銚子メロン産地の400名の出荷状況の調査でお手伝いをしたことがありますが、農協の協力を取り付けて個別データをいただき、打ち込んで集計した記憶があります。定性的な農業経営研究ではなく、あくまで定量的な研究を主体にされた方でした。 
  

○日進温室組合の大規模トマト栽培


 故郷の熊本八代の調査をまとめられたのが、この「野菜農業の近代化」で、いくつかのトマトやメロンなどの施設野菜経営の詳細な調査と分析結果が記されています。特に30年ほど前に既に1.2haを10名ほどでガラス温室栽培をしていた日進温室組合のメンバーの調査が念をいっており、30年後の現在でも参考になる内容でした。
  
 当時はガラス温室においても、トマトとメロンの年2作の作型をとっており、トマトは盆明け後に定植し、年明けまでの比較的短期の作型でありました。温室は4棟あって、トマトの管理作業を細かく調査されており、家族経営者と雇用従業員、臨時雇用の人たちの作業別の労働時間や作業内容など、事細かにまとめられていました。
  
 まとめますと、1.2haの個人での大規模経営でも、ベースには30aの温室単位の作業体系があって、それを4倍に拡張し、相互の作業の段取りや組み合わせに注意しながらトマトの管理(ポイントは栄養生長と生殖成長のバランスとのこと)を手抜かりなく進める、ということでした。
 

○30年前と今日の大規模経営

 
 八代では現在も1〜2ha以上の大規模経営が多く見られますが、その基盤が30年前に既に形成されていたこと、それは小規模といえる30a程度の作業体系をベースに組み立てられていたことが、この著作で改めて確認できました。日本型の大規模施設園芸の発展段階を考える上で貴重な資料と思います。家族経営の延長に法人経営があり、それを円滑に進めるには、このような大規模な家族経営の事例を良く研究する必要があると感じた次第です。永江先生の先進的な調査研究にも、改めて感嘆しました。

 

野菜農業の近代化―野菜園芸経営技術論ー 、永江弘康著

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