人工光型植物工場に関する新たなJAS規格制定の動き

人工光型植物工場が普及し、加工・業務用途でも利用されるようになってきています。最近ではセブンイレブンのベンダー企業が大規模な植物工場を稼働させ話題になっています。

 

そんな中で、従来のGAPなどとは異なり人工光型植物工場に特化した認証規格の制定の動きが出てまいりました。

 

土屋農業技術士事務所の投稿でご紹介しています。ぜひご覧ください。

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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スマート農業と人間の能力

施設園芸分野のスマート農業のでは、機械化や自動化、ICT利用による高度な制御などが多く取り上げられています。実際の施設園芸の現場では今も多くの人が働いており、最近では外国人や障がい者の皆さんの姿もよく見かけるようになりました。水田作のような機械化を前提とした省力農業が施設園芸分野で実現されることは、当分はないと考えられます。それは人間の感覚や判断、手先の動きなどに頼る精緻な作業が施設園芸には多いためであると言えます。機械化や自動化が可能なところはどんどんと進めるべきでしょうが、そうでないところの生産性をどのように上げて行くかが当面の課題と考えられます。

 

機械の能力と人間の能力

 

機械の能力は、その仕様や利用場面により規定され、自ずと限界があります。ところが人間の能力にはそもそも仕様というものはなく、最初は未熟であってもトレーニングやコーチングなどにより能力を高めて行くことができます。もちろん筋力や持久力の面から限界はありますが、最初からこれだけしかできないといったように規定されることはありません。これは人間の学習能力や向上力によるものです。こうした人間の潜在的な能力に対する向上の方策について、施設園芸の分野でも検討の必要があると思います。

 

スマート農業と人間の潜在能力の活用

 

施設園芸でも大規模化が進み、多くの従業員を管理する必要がでてきています。労務管理や安全衛生管理といった、経営者側が義務的に行わねばならない管理事項も多くあります。また新人が配属され一人前になるまでのOJTやOff-JTなどの教育訓練や、一人前に育ってきた従業員をさらにレベルアップすることなど、能力管理には多くの場面があります。こうした管理は対面で行われることが多く、その時々や担当者により伝達内容や指導内容に違いがでたり、一貫性がなかったりなど、現場での問題も指摘されてきました。一方でICTを用いたシステム的なアプローチによる問題解決が、この分野において可能になっています。

 

一例として従業員のスマホを使った目標管理の仕組があります。これは従業員個人や所属グループの目標を定め、その達成状況をリアルタイムで示すものです。目標そのものは過去の実績や販売計画などからあらかじめ設定されますが、作業量や収穫量などの実績は従業員が作業完了後にスマホで入力することで、進捗も即時に把握できるものです。

 

作業の開始と終了をインプットして、進捗状況をモニター画面に表示する仕組みは、オランダの大規模施設園芸では標準的に導入されています。そこでは作業能力のランキングも表示され、競争的な環境を作っている感じがします。一方でこのスマホでのシステムは個人ごとの目標管理が前提にあり、さらにグループ全体での目標管理もあり、競争的な環境とは異なります。個人ごとの工夫や頑張りで個人の計画を達成しつつ、さらにグループとして計画を達成するよう、お互いに教え合ったり助け合ったりすることを促すような仕組みがそこにはあります。これは自分だけでなく、他の従業員やグループ全体の進捗を個人のスマホから参照でき、常に全員が情報共有することで可能になっていると言えます。

 

オランダの仕組みと、このスマホでの仕組みは設計思想そのものが異なっています。人間の潜在能力を前提に設計された仕組みは、スマート農業の分野では先進的な事例と言えるでしょう。

 

参考サイト https://farmos.jp/

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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スマート農業と植物の生育情報

農水省のスマート農業関連事業がスタートし、スマート農業への関心も高まっています。長年、施設園芸にかかわって来た一人として、ブーム的な現象に終わって欲しくないと思っております。

 

スマート農業と作物の生育状況の把握

 

スマート農業の要素技術のひとつのAIは、昭和末期から平成前期にかけ何度か農業や施設園芸に利用する取り組みがされました。主に研究サイドの動きでしたが、定着することにはなりませんでした。当時はコンピュータの能力も現在とはくらべものになりませんでしたし、また機械学習といったコンピュータの学習能力や画像処理能力も劣っていました。人工知能に関するプロジェクトも立ち上がっていましたが、現在のように官民共同での大がかりなものではありませんでした。

 

今回のスマート農業関連事業は、農水省が旗を振り、研究機関や農業団体、農業法人、自治体と民間がプロジェクトを組んで短期間で実証成果を出し、次の全国的な普及につなげていこうという動きであり、今までにはないものです。また要素技術の実用性も上がり、すでに現場で使われているものもあって、成功の確度も高まっていると思います。

 

ただし見かけでは上手く行っているように見えても、実際には手間がかかっていたり、利用条件が限定されていたりなど、その後の展開が難しい場合もあります。 平成26年に取りまとめられた「スマート農業の将来像」では、施設園芸分野を含めたスマート農業の進む方向のひとつとして「植物の能力を最大限に活かす」ことがあります。そのための「データに基づくきめ細やかな栽培」として「圃場ごとの栽培履歴や作物の生育状況を把握し、資材投入量の最適化や効率的な作業計画の策定を実現」が示されています。この中で難易度が高いものが作物の生育状況の把握です。

 

培地重量を計測し潅水のタイミングや潅水量を調整している養液栽培

 

難易度の高い生育情報の把握

 

例えば、植物体そのものの形態や成長などをリアルタイムで把握することは、画像処理技術が発展してもなかなか難しいことのようです。実用化技術として、選果装置や接ぎ木ロボットの前工程での、画像処理による果実や苗の分類自動化などがあります。しかし生育中の植物の形態を的確に把握するには、数段高いレベルの技術が求めるられるでしょう。特に立体的な形状や、重なりがある場合などは難易度が高くなります。

 

また、植物が必要とする水分量を決定するため、間接的な方法ですが一般的に日射量の計測を行います。しかし日射センサーは通常は屋外に設置され、植物が受ける光環境とは必ずしも一致はしないと言えるでしょう。また一方で植物体の大きさにより必要水分量も変わってきます。しかし最近では養液栽培において培地の重量を秤で直接計測し、重量変化から必要水分量を把握する技術が使われています。また土耕栽培において屋外の日射センサーの他に土壌水分センサーも組み合わせ、必要水分量の精度を高める工夫もされています。いずれも直接的に植物体を計測するものではありませんが、それに近い計測制御技術としてレベルを上げたものと言えるでしょう。

 

スマート農業における情報の入り口の大切さ

 

1970年代から現在まで施設園芸研究に携わってこられた高倉直先生(東大名誉教授)は、「スマート農業に望むこと」ととして論文を最近書かれています。そこでは「AIが十分生かされるためには、まず正確な情報を取得する必要があるが、余り注目されていない。(中略)AIの基本は植物の環境を正確に計測できるセンサーの開発とそれによる正確な情報の収集であると言っても過言ではない。」と結ばれています。情報の入口の大切さを高倉先生は説かれています。われわれがスマート農業について理解するためには、まずこの点から注視する必要があるでしょう。

 

引用文献:高倉 直 2019. スマート農業に望むこと. 農業および園芸 94:285-289.

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

 

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スマート農業関連実証事業の施設園芸関係の課題

農林水産省の目玉施策となっているスマート農業関連実証事業ですが、「スマート農業加速化実証プロジェクト」、および「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」が採択され、稼働し始めています。採択課題は合計69課題であり、予算額は令和元年度分と平成30年度2次補正分を合わせ4,705百万円と大型のものです。また施設園芸関係は下記の8課題です。

 

‖腟模施設園芸の生産性を飛躍的に向上させるスマート技術体系の実装

(実証グループ名:生産性向上スマート農業実証コンソーシアム、代表機関:大阪府立大学研究推進機構植物工場研究センター)


促成イチゴ栽培における圃場内環境および作物生育情報を活用した局所適時環境調節技術による省エネ多収安定生産と自動選別・パック詰めロボットを活用した調製作業の省力化による次世代型経営体系の検証

 

(阿蘇イチゴスマート農業実証コンソーシアム、(国研)農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター)

 

施設園芸コンテンツ連携によるトマトのスマート一貫体系の実証

(施設園芸コンテンツ連携コンソーシアム、(国研)農業・食品産業技術総合研究機構野菜花き研究部門)

 

ICT に基づく養液栽培から販売による施設キュウリのデータ駆動経営一貫体系の実証

(日本をリードする施設キュウリスマート農業実証コンソーシアム、愛知県西三河農林水産事務所)

 

セ楡澑犒櫃砲ける収穫ロボットによる生産コスト削減体系の実証

(施設園芸における収穫ロボット実証コンソーシアム、パナソニック(株))

 

Γ稗達垉蚕僂筍腺謬蚕囘を活用した「日本一園芸産地プロジェクト(施設園芸:なす・すいか)」の実証

(「日本一園芸産地プロジェクト(施設園芸:なす・すいか)」スマート農業実証コンソーシアム、熊本市)

 

Э綸鎮和咾砲ける AI と IoT を活用した葉菜類大規模経営の実証

(福岡R・O・Iグループ次世代農業実証コンソーシアム、株式会社RUSH FARM)

 

┘札鵐轡鵐圧蚕僂亡陲鼎統合環境制御の高度化によるピーマン栽培体系の実証

(そおピーマン専門部会スマート農業実証コンソーシアム、鹿児島大学農学部)

 

8課題のうち、九州関連の課題が5課題(表の´↓ΝЛ┐硫歛蝓砲△蠅泙后うち↓ΝЛ┐和緝週ヾ悗九州にあり、また「‖腟模施設園芸の生産性を飛躍的に向上させるスマート技術体系の実装」の代表機関は大阪府立大学ですが、実証場所は大分県のパプリカ栽培施設の(株)タカヒコアグロビジネスとなっています。さらに施設園芸関係以外でも九州に関係する課題数が15と多く、農水省が九州の農業に対して力を入れていることが感じられます。

 

本事業は2年間後の2021年3月にはとりまとめを行うことになっており、短期間のプロジェクトといえます。その間にも「全国版スマート農業サミット(仮称)in アグリビジネス創出フェア」が本年11月に開催予定であり、実証地区を「見られる・試せる・体験できる」情報発信拠点として活用する計画も示されています。さらに実証拠点の成果をPRし、2025年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践するというスマート農業の施策も定められています。そのために必要な取組やその進め方等を定めた「農業新技術の現場実装推進プログラム」(仮称)を2019年夏までに農水省が策定することになっています。従ってしばらくはスマート農業に係わる事業や施策、イベントなどが目白押しになると推測されます。

 

施設園芸分野でのスマート農業が目指す方向

多少、話題が先行している感のあるスマート農業ですが、施設園芸分野での目指す方向がどんなものか、共通認識が必要かと思います。農水省がスマート農業関連実証事業の位置づけ、採択地区、今後の展開について資料をとりまとめとめています。そこでは、従来のすぐれた農業技術と先端技術を掛け合わせたものがスマート農業としてポンチ絵で描かれています。熟練農家の匠の技を形式知化して若手農家に伝承したり、自動化や規模拡大をはかったり、センシングや生育予測、病害予測によって農業経営の高度化をはかることが示されています。

 

資料:「スマート農業実証関連事業」農林水産省

 

また事業を所管する農林水産技術会議のホームページの末尾には、スマート農業についての簡単な説明もあります。説明を引用します。

 

スマート農業とは、ロボット・AI・IoT等の先端技術を活用して、省力化・精密化や高品質生産を実現する等を実現する新たな農業のことです。
日本の農業の現場では、課題の一つとして、担い手の高齢化が急速に進み、労働力不足が深刻となっています。
そこで、スマート農業を活用することにより、農作業における省力・軽労化を更に進められる事が出来るとともに、新規就農者の確保や栽培技術力の継承等が期待される効果となります。

 

一言でいえば、このようになる訳ですが、施設園芸での適用について、もう少し考察が必要でしょう。農水省は先立って平成25年に「スマート農業の実現に向けた研究会」を立上げ、推進方策についての検討を行い、検討結果の中間とりまとめを公表してます。そこではスマート農業の5つの将来像を示しており、これを引用します。

 

ロボット技術やICT等の様々な分野の方々の協力を得て、我が国農業が直面する課題を解決し、新たな農業(スマート農業)を拓いていくには、スマート農業の将来像をわかりやすく提示し、関係者で方向性を共有して取組を進めることが重要である。
このため、ロボット技術やICTの導入によりもたらされる新たな農業の姿を以下の5つの方向性に整理した(別添1)。

 

超省力・大規模生産を実現
トラクター等の農業機械の自動走行の実現により、規模限界を打破

 

作物の能力を最大限に発揮
センシング技術や過去のデータを活用したきめ細やかな栽培(精密農業)により、従来にない多収・高品質生産を実現

 

きつい作業、危険な作業から解放
収穫物の積み下ろし等重労働をアシストスーツにより軽労化、負担の大きな畦畔等の除草作業を自動化

 

誰もが取り組みやすい農業を実現
農機の運転アシスト装置、栽培ノウハウのデータ化等により、経験の少ない労働力でも対処可能な環境を実現

 

消費者・実需者に安心と信頼を提供
生産情報のクラウドシステムによる提供等により、産地と消費者・実需者を直結

 

5年ほど前に、すでにこうした共通認識を作るためのとりまとめがされていた訳ですので、スマート農業を考える上で、これら5つの方向性に立ち返ってみる必要があると考えます。特に施設園芸での栽培に関係が深いと思われるのが、「∈酳の能力を最大限に発揮」でしょう。このポンチ絵を引用します。

 

資料:「スマート農業の将来像」、農林水産省

 

ここでは、「データに基づくきめ細やかな栽培」として3つの例が示され、うち施設園芸と思われる例では「圃場ごとの栽培履歴や作物の生育状況を把握し、資材投入量の最適化や効率的な作業計画の策定を実現」を示しています。すなわち、

 

  1. 圃場ごとの栽培履歴や作物の生育状況の把握
  2. 資材投入量の最適化
  3. 効率的な作業計画の策定

 

これらを行うことで、「従来の水準を超えた多収、高品質、効率生産を実現」するとあります。

a.では各種のモニタリングによる見える化と分析、b.ではエネルギーや種苗、水分、肥料、農薬等の投入量の調整、c.では生産管理、作業管理技術の向上といった、最近では研究や実証が進んでいる技術分野です。5年前に策定されたこうした将来像は、そのまま実証へ進んで来たと言って良いと思います。スマート農業関連実証事業の各課題においても、こうした将来像に沿った技術実証が進められていくものか、個別に確認していく必要があるでしょう。各課題の詳細についてはつかみ切っておりませんが、今後あらためてお伝えしてまいりたいと思います。

 

 

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日本農業新聞の興味深い記事(各社の統合環境制御盤)

日本農業新聞の6月3日付けアグリビジネス面に、石原邦子記者の署名記事として、導入が進む統合環境制御技術について、各社製品の紹介や導入状況について紹介がありました。石原記者には私も何回かお会いしたことがあり、常に丁寧な取材をされる方です。

 

統合環境制御を行うキュウリハウス(佐賀県)

 

各社の統合環境制御装置の導入状況

 

1面を使った記事ですが、農業資材メーカー各社のハウス統合環境制御装置の6機種の一覧表が掲載されています。代表的な製品名が載っており、製品の特色と発売年、税別価格とセンサー等のセット内容が記載されています。また販売台数が製品によっては一桁単位で掲載されています。シリーズ合計で数百台の製品もあれば、発売約1年で二十数台という製品もあります。この二十数台の数字に非常にリアルなものを感じました。石原記者が各社を回り、取材の趣旨を丁寧に話され、色々と聞き取りをされる中で出てきた数字ではと思いました。非常に興味深い記事となっています。農業資材業界には業界紙と呼ばれるニュースレターが発行されていますが、業界内向けの記事がほとんどであり、資材の価格や出荷量などをおおまかに伝える記事が多くみられます。この記事のような機器の実販売台数といった記事は正直に言いまして業界紙ではみたことがありませんでした。

 

ここでは製品名や販売台数の数字は控えますが、取材を受けた各社も公開に積極的になっていることが伺えます。記事にある販売台数の合計は2000台程度でした。最新の機器の他、シリーズ合計台数も含まれており、統一したものではありませんが、国内の統合環境制御装置の導入実態を部分的ではあるものの示す数字であるでしょう。この数字を多いとみるか、少ないとみるかですが、私は何万台ではなく何千台が実態の値ではないかと思っております。

 

農林水産省が公表する平成28年の園芸施設等の状況によりますと、園芸施設設置実面積が約43,200haに対し、うち高度環境制御装置があるものが約1,000haです。環境制御装置1台で20aをカバーしていれば台数は5000台になり、50aをカバーしていれば2000台になります。やはり導入実態としては数千台とみるべきでしょう。

 

今後の統合環境制御装置の普及展開

 

前述の平成28年の園芸施設等の状況によれば、施設園芸面積は減少から下げ止まり傾向に累年の数字では見てとれます。しかし高齢化の進展や施設老朽化などから廃業や施設の廃棄は今後も必ず進みますので、新設施設が増えなければ面積の維持は難しくなります。一方で園芸施設の価格は上昇傾向にあり、簡単に施設ができるとは言い難い状況にあるでしょう。

 

こうした状況に対して、既設施設のリニューアルや設備強化などによる生産性の向上が考えられます。追加投資は必要なものの、費用対効果を高めた投資で、いかに生産性を上げていくか、また安定的な生産を確保するか、といったテーマになります。統合環境制御装置の普及は、まさにその流れにあるわけで、導入と栽培技術の向上によって単収が数割上昇している例は多く見られます。一方で、春先など一時に生産量が集中することで、販売単価の低迷が起るなど、マイナス面も出ています。短期的には、そうしたマイナス面もあるでしょうか、中長期的には施設面積や担い手は減少傾向にあると思われ、やはり生産性を高める流れで行くのではないかと思います。

 

統合環境制御装置の導入が今後、どのようなペースで進むかは記事からは読みとれませんでしたが、比較的低価格の機器の普及が進んでいる様子もうかがえ、やはり費用対効果が重要と思われます。また価格だけではなく、記事にはありませんでしたが、各機器がどの程度の面積をカバーするものか、50a〜1haなどの大面積施設にも対応するかなども、費用対効果に影響します。今後、施設の大規模化が進めば、必要とされる機器の仕様も変わってくるでしょう。

 

環境制御技術以外の生産性向上要素

 

記事には、熊本県の施策として5年前にゼロだった県内の統合環境制御の導入面積を本年度末までに120haにする目標を紹介しています。さすが熊本県でスケールが違いますが、担当部署のコメントとして「地上部の制御技術だけでは収量は伸びず、今後は地下部の技術を確立する必要がある」とあります。熊本県では土耕栽培が主体であり、環境制御による地上部管理だけでなく、地下部の水分管理や肥料管理が伴う必要があるということになります。また記事には、「市況低迷に対し収量向上だけでなく、利益向上のため損益分岐点を農家が探っている」とあり、こちらでも費用対効果が重視されているということになります。すなわち、環境制御技術も重要ですが、その他の技術もバランス良く導入し、総合的に収益を高めることが必要と言えるでしょう。

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

 

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9/20セミナー「施設園芸・植物工場におけるICT利用・スマート農業の最新動向」を開催します

少し先ですが、サイエンス&テクノロジー社さんの主催でスマート農業についてのセミナーを開催いたします。こちらで内容のご紹介と申し込み案内がございますので、どうぞご覧ください。本年9月20日の午前10:30から午後16:30まで、途中休憩をはさみ正味4時間半程度の1日セミナーとなります。場所は大井町のきゅりあん(東京都品川区)になります。

 

最近のハウス環境制御装置のモニタリング画面例

 

 

セミナーの趣旨

 

(セミナー案内より引用です)

ドラマ「下町ロケット」では無人走行トラクターが大雨の中を走り回るシーンが放映され、農業のスマート化の進展を一般にも知らしめる機会となりました。大規模な水田農業を対象としたロボット化、無人化についての技術をわかりやすくドラマ化をしていましたが、施設園芸や植物工場分野でも、スマート農業は最近のキーワードとして取り上げられ、技術開発や現場導入の加速化が求められています。


本セミナーでは、この分野における生産性向上と経営向上を目的として、各種ICT機器やデータサービスの導入や活用、AI利用などを中心に、スマート農業に関する最近の動向について情報提供をいたします。また最近は生産現場において様々なデータを利用が可能になる一方で、それらをどう活用したらよいか悩む声も聞かれるようになっています。本質的なデータの活用の考え方をお示しし、ICT化の正しい方向性について情報提供をいたします。

 

本質的なデータ活用とは?

 

上記のセミナーの趣旨で、あえて「本質的なデータの活用の考え方」と記載をしました。これは、データがあふれかえる世の中になり、それをどう活用するかの悩みが現場には多いことから、答えをお示しする必要があると考えたためです。データを得ることは目的ではなく、あくまで手段であり栽培や販売、経営に生かしてこそ価値が生まれてきます。つまりデータを価値に変えることが本質的なデータ活用になる、ということです。私が考えるデータ活用は、次の「安定化のためのデータ活用」と、「改善と向上のためのデータ活用」の2つです。

 

安定化のためのデータ活用

 

これはベーシックなデータ活用のひとつで、栽培管理や生産管理の指標や範囲を定め、その中で実際の生産活動が行われているかを管理するものです。生産活動が安定化するためには、各種の指標が正しく管理される必要がありますが、これは意外にされていないことかと思います。植物の栽培では積算温度や温湿度の適正範囲、水分量や養液濃度の適正範囲など、いくつかの指標があり、瞬時値ではなく、ある期間の平均値や積算値で表されるものです。植物は瞬間の環境変化には追随せず、1日単位や週単位などの長い期間の環境変化に影響を受けるものです(急な日射による葉焼けなどの強いストレスは除く)。

 

一定期間での栽培環境の安定化をはかることが植物栽培の基本であり、そこに問題があると何をやってもうまく行かないことになります。ICT機器を使ったモニタリングや制御の出口として指標にもとづく環境の安定化が求められると考えます。

 

改善と向上のためのデータ活用

 

次にデータ活用の応用編として、改善活動でのデータ活用があると考えます。安定化のためのデータ活用が日常的なモニタリングによるのに対し、改善と向上のためのデータ活用は週単位や月単位、年単位での振り返りによるものとなります。ここには植物の生育や収穫物と環境に関するデータがあり、また画像処理や目視、感覚によって感じ取る植物の状態もあると思います。異常な状況を改善するために、また良い状況をさらに良くするためにどうするかをデータをもとに分析し、対策を検討することです。

 

ここでも改善や向上のための指標が必要となります。主要な指標として生産性に関するものがあり、例えば労働生産性、エネルギー生産性、施設生産性といったものがあります。労働生産性は収穫物1t当たりの総作業時間などで表され、トマト1tを生産するために農場の従業員が延60時間働いているとすれば、これをオランダの15時間並みにするにはどうすれば良いか、各種データから課題を見つけ改善をはかることになります。ここでは収量を増加させるための環境要因の改善の他、生育が良好になり収量も増加した場合の作業量の増大など、複数要因の検討が必要な場合が多くなるでしょう。いわば意思決定のためのデータ活用とも言えますが、従来は手作業でデータを集計分析することが多く、非常に手間のかかる業務であったと思います。ここをICTの機能や能力により、より楽により早く進めることが可能になっていると思います。

 

これからのスマート農業とは

 

(つづきはこちら)

 

 

 

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平成の野菜=パクチー

日本農業新聞4月30日付け総合・社会面に、「平成の野菜 流行・代表・定着 3冠 パクチー 令和でも人気継続」との記事が掲載されていました。これは、種苗メーカーのタキイ種苗がインターネットで行ったアンケート調査の結果で、全国20〜69歳の男女310名を対象にしたそうです。

 

フォーに盛ったパクチー(自作)

 

アンケート結果でのパクチー

 

記事には4つのアンケート項目があります。

  • 平成に流行した野菜:1位パクチー、2位アボガド、3位フルーツトマト
  • 平成を代表する野菜:1位パクチー、2位アボガド、3位フルーツトマト
  • 平成で定着した野菜:1位パクチー、2位アボガド、3位フルーツトマト
  • 新元号で流行すると思う野菜:1位スプラウト、2位パクチー、3位フルーツトマト

以上のように、平成ではパクチーは流行し、代表し、定着した野菜NO1ということになります。

アンケート記事には、4位、5位の野菜や、各%なども記載されていますので、ご興味があれば記事を当たられてみてください。

また記事にはその他に特にアンケートの紹介はありません。

 

パクチーがここまで定着したかと言うと、他の定番野菜(トマト、ミニトマト、きゅうり、ナス、レタス・・・・)に比べれば絶対量は少ないはずですが、時代に流行し、さらに時代を代表し、そして時代に定着したという見方をすると、アンケート結果のようになったということです。

 

パクチーの扱い

 

巷でパクチーが流行し、消費も伸びていることはメディアの情報からは伝わってきていました。また定番商品として多くのスーパーで扱われていると思います。私が野菜を日常買いしている売り場では、地元産野菜のコーナーに置かれる場合、ハーブ類のコーナーに置かれる場合、葉菜のコーナーに置かれる場合など、扱いは様々です。ここが面白いところですが、定着をしたと言いながらも店側の定義というか分類は定着していないのでしょう。

 

昭和時代のパクチー

 

私は昭和末期に都内でエスニックフードを食べ歩いていた頃があり、当時はベトナム料理、カンボジア料理、台湾料理が3台エスニック料理でした。またパクチーとは呼ばれず、ハーブ名のコリアンダーか、中華名の香菜(シャンツァイ)がメジャーでした。かなり香りというか臭いが強い野菜で、少量でもアクセントになっていたと記憶しています。一般に流通している野菜ではなく、おそらく業務用として少量が取引されていたと想像します。さらにコリアンダーや香菜に対する評価はあまり高くなかったと思います。好き嫌いが分かれ、エスニック好きにはたまらない野菜だったかもしれませんが、一般の味覚や臭覚の感覚からするとかなり異端の野菜であったのではないでしょうか。

 

平成時代のパクチー

 

それから30年ほどたって、この野菜は平成時代末期にしっかり定着したというわけですが、パクチーが定着したこともあると思いますが、エスニック料理そのものが一般化したこともありそうです。特にベトナム料理はファッショナブルな点と野菜を多用しておりヘリシー感も高いことなど、平成時代の流行料理のひとつであったと思います。もちろんパクチー好きの方々が盛り上げた流行もあるでしょうし、生産側や流通側の努力により需要が喚起されたこともあると思います。

 

消費者側からすれば、ハーブ扱いだった野菜が量産されるようになり、価格も手ごろになって日常の素材として使えるようになったことも大きいと思います。エスニックだけでなく普通のサラダのアクセントとしても使え、工夫をすれば和食の添え物などにも使えるようです。料理の印象が明らかに変わる優れた素材と言えるかもしれません。

 

私自身もパクチーを常食しており、葉、茎、根を使い分けもしています。葉はサラダやフォーなどに多量に使い、根は刻んでスープなどの風味付けに、茎は歯ごたえを味わえるよう、各種料理に入れ込んでいます。

 

パクチーの次は?

 

(つづきは、こちら

 

 

 

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共著「アグリフォトニクス供LEDを中心とした植物工場の最新動向―(普及版)」が出版されました

千葉大学の大学院園芸学研究科にある環境調節工学研究室は、私の出身研究室です。施設園芸と植物工場での環境制御技術を広く研究しており、LEDの植物生産への応用研究にも数多く取り組まれております。教授の後藤英司先生の監修による「アグリフォトニクス記機LEDを中心とした植物工場の最新動向」が刊行されたのが2012年で今から7年前になり、私も共著者の一人として執筆をさせていただきました。しかし7万円以上もする、いわゆる豪華本で一般に出回る書籍ではありませんでした。

 

このたび「アグリフォトニクス記機LEDを中心とした植物工場の最新動向―(普及版)」として、税込価格で6,048円に大幅に値下げされ刊行されました。当時と同じ内容での出版になります。

 

アグリフォトニクス記機LEDを中心とした植物工場の最新動向―(普及版)

 

閉鎖型苗生産システムの記述

 

私の担当章は、「【生産システム編】第16章 閉鎖型苗生産システムの特徴と利用」でした。当時は白色蛍光灯を用いた閉鎖型の育苗装置として開発販売されたもの(最初の販売は2000年頃)ですが、蛍光灯の製造中止も予定されており、製品もLEDタイプのものがすでに発売されています。やはり時間の経過による内容の古さは感じますが、現在も当時も閉鎖型の育苗装置というジャンルには変わりなく、技術としてもおおむね確立されていると思います。

 

当時から実用化したこと、しなかったこと・・・

 

実は、この普及版が刊行される前に、「アグリフォトニクスIII -植物工場の最新動向と将来展望-」という最新刊が昨年に発刊されたいます。その目次を見る限りでは、LEDの照明技術や植物工場での応用技術の進展にはやはり目をみはるものがあると思われます。こちらも7万円以上の豪華本で、なかなか手に入れるのは難しいと思います。

 

普及版には、当時、閉鎖型の植物工場でのイチゴ栽培研究をされていた、千葉大学の彦坂晶子先生(環境調節工学研究室准教授)の論文が掲載されています。育苗から収穫までの様々な試験を行っており、LEDの波長(光質)による開花や収量に及ぼす影響などの結果が記載されています。また光の他、温度やCO2濃度の制御によりハウス栽培よりも高い収量が可能であるとされており、改善要素もさらに多くあると結ばれています。

 

当時としてはかなり進んだ研究であったと記憶していますが、現実にイチゴの閉鎖型環境での植物工場栽培は実用化がされており、国内でも数箇所で生産販売が行われています。これはこの本の記載内容が正しく、さらに発展したものと言えるでしょう。

 

また他には薬用植物(カンゾウ)の水耕栽培の例も掲載されていますが、太陽光型、人工光型を問わず、植物工場での栽培は現時点で実用化した話までは伺っていません。イチゴと薬用植物の植物工場での栽培は、2000年代から取り上げられ、取り組まれてきたものですが、現時点の到達点はこのような状況といえるでしょう。

 

 

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千葉大学「土葉会」第326回例会のお知らせ(5月25日土曜日)

千葉大学園芸学部(千葉県松戸市)に、施設園芸、植物工場、養液栽培などでの野菜園芸生産を研究する蔬菜園芸学研究室(丸尾達教授、浄閑正史准教授)があります。大変歴史のある研究室で、OBや研究室の関係者、さらに関東近郊の園芸関係者が会員となっている研究会組織です。今週の土曜日に第326回例会がありますので、この場でお知らせいたします(私は蔬菜園芸学研究室のOBではありませんが、隣の果樹園芸学研究室を卒業し、土葉会の会員です。また2019年度の幹事長にご指名いただきました)。

 

千葉大学園芸学部(JR常磐線・新京成線松戸駅より徒歩10~15分、このようなきつい坂を上った丘の上にあります)

 

土葉会とは

 

土葉会には特に規約もなく、緩い活動形態をとっています。事務局は蔬菜園芸学研究室と、同研究室と関係が深く、同じ千葉県松戸市にある公益財団法人園芸植物育種研究所が年度ごとに交互に担当されています。会員の規定も特にありませんが、原則として1回以上は研究発表や情報提供を行うことになっています。外部の方をお招きして発表をお願いし、そのまま会員になられる方もいらっしゃいます。また年会費も1500円と安価で、年5回の行事(例会2回での研究発表や情報提供、日帰り見学会、年末開催のシンポジウム、宿泊の遠隔地での見学会)のうち1回でも参加することで元が取れると言われています。例会やシンポジウムは土曜日の午後半日を使い、5~7名程度の発表報告がある濃密な研究会になっています。

 

例会の回数が300回台ということで、昭和32年に発足して以来、長年にわたって活動を続けて来た歴史のある研究会です。メンバーは大学以外に関東近郊自治体の農業研究者、普及指導員などの公務員の方、JA関係者、種苗メーカー、農業資材メーカーなどの業界関係者が中心で、会員数は数百名規模と思われます。

 

今年度の活動計画

 

2018年度と2019年度の幹事さんと蔬菜園芸学研究室の先生方とで検討した活動計画をお知らせします。

 

【第326回例会】

5月25日土曜日13時~ 千葉大学園芸学部D112教室 テーマ:最近の話題

・新しい根域環境制御装置(N.RECS)を利用した園芸作物の成長制御(仮題) 日本大学生物資源科学部 窪田聡氏

・結露センサー付き複合環境制御装置を用いた湿度管理による促成ミニトマトの裂果抑制 千葉県農林総合研究センター 佐藤 侑美佳氏

・他3~4題

 

(つづきはこちら

 

 

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください

 

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私の技術者人生(20代後半)

最初の就職先はソフトウエアハウス

 大学院を修了後は企業への就職を目指しました。当時は求人も少なく、学生課の掲示板にあった流通業(現在のイオン)の面接を受けに行き、もう1社、同級生が先に就職していたソフトウエアハウスも受けに行きました。結果的に後者に就職しましたが、前者に就職していたら全く異なる人生になっていたと思います。おそらくスーパーの売り場かバックヤードに配属され、店長候補として仕込まれていたかもしれません

 入社したソフトウエアハウスは、大企業のソフト開発部門を辞めた集団が新たに立ち上げたということで、当時はベンチャー企業の騎手としてマスコミに取り上げられることが多かった企業です。ところが入社前の3月初めにある事件が起こりました。その企業の出資先の経営問題が発生して多大な損失を被るようなことで、社長が記者会見をしているニュースが放映されました。ニュースの意味も金額の大きさもピンとこず、親は内定先の企業がとんでもないことになっていると、おろおろするばかりでした。この件についての決着や影響について、入社後には特に説明はありませんでしたが、やがてこのベンチャー企業も身売りすることになりました。


長い研修期間と調査業務

 こちらは今更、内定企業を蹴っても他にあてもなく、4月から新入社員として働くしかありませんでした。入社すると社内には重苦しい雰囲気もなく、大手企業を辞めたベテラン社員と若手社員が開発や営業に専念している活気が感じられました。新入社員は3ヶ月間の社内研修で大型機の扱いやフローチャート、プログラミング作法などをたたき込まれました。すでに大学で大型機を扱っていましたので、研修内容は難しくはなく、早く仕事をしたい気分でした。同期入社は20名以上いて、研修後には毎日のように盛り場に繰り出していました。

 ようやく研修が終わると、他の同期社員は営業部隊や開発部隊、関係会社への出向など、現場に散っていきました。自分だけは本社の企画部門に配属され、なぜか調査業務を担当していました。外国の石油メジャーの日本参入について英文資料を渡され、まとめて欲しいなど、よくわからない業務が続きました。いったいこの会社は何を目指しているのか?腑に落ちない中で、同じ部門の30代の課長からいろいろなレクチャーを受けるようになりました。

新分野業務への配属

 その課長は、ある業界の電算化について詳しい調査や企画をしており、パッケージシステムの導入をこれから進めたく、メーカーやベンダーとも手を組みはじめていました。課長一人で動いていたようで、社内でもまだ認知されていないようでしたが、若手に加わってほしいということで、自分に話をしてきたのだと思います。

 企画部門のよくわからない仕事よりは実態もありそうですし、コンピュータにも触ることができそうなので、すぐにそのプロジェクトに参加することにしました。しかし、またその業界用のパッケージソフトの研修が始まり、なかなか現場や開発業務には至りませんでした。そうこうしてようやく1年が立つ頃、がんを患っていた母親が亡くなりました。共働きで大学院まで進学をさせてもらい、これから楽をさせてやろうと思っていたところで、無念な気持ちでしたが、それ以上に残された父親が心配でした。

 そんな父親を家に残しながら、ようやくパッケージシステムのカスタマイズや現場導入の仕事が遠い島で始まりました。新設の施設で、しかも不便な場所にあって、1週間単位の出張が断続的に続きました。ソフトウエアの開発というよりも、様々なベンダー機器とホストコンピュータを接続し、業務をうまく回すという内容で、施設の従業員と一緒になって何とか動かす毎日でした。

退職の決断と仕事探し

 若いこともあり、毎日は楽しかったのですが、自宅に残した父親のことも気になり、また島の仕事が終わってからどうなるかもわからず、将来を気にし始めた頃でした。そんな中で次の仕事の話が出始めました。関西にある風俗関係の施設へのパッケージシステムの導入ということで、具体的な図面もあって、どのように機器を配置するかなど、話が具体化しつつありました。しかしこの話には乗り気にはなれませんでした。風俗関係というアレルギーがあったのだと思います。入社2年目で仕事を断るわけにもいかず、悩む日が続いていたのですが、思い切って辞めようと決断は早かったと思います。

 次の仕事の当てもありませんでしたが、自分がやりたかったことは何か、改めて考え直してみると、学生時代に関わった農業とコンピュータの仕事が浮かび上がりました。現在であれば、そうした分野に参入する企業は後を立ちませんが、当時はそんな企業は皆無でした。自分の力ではどうしようも無く、大学の研究室の指導教官だった古在豊樹先生(後の千葉大学長)に、事情を話して近い企業があれば紹介をお願いしました。

2社目の業務と人脈の核

 最初の会社を辞める数ヶ月前の話でしたが、すぐに候補先の企業が見つかって、直接担当の方にお会いしました。温室やビニールハウスなどを扱う農業資材業界の古手の企業で、当時でもそれなりの位置にいた企業でした。農家向け会計ソフトの開発販売もしており、この先も農業の情報化に対して展開をしたいとの意向でした。また自分の出た研究室の研究内容についても評価をいただいており、教官の推薦ですぐにも採用してくれる状況でした。

 自分自身の人物評価はどうだったかは分かりませんが、何回も面談する間にいろいろと試されていたと思います。そのうちに人生で最初で最後の転職をすることになり、昭和の終わり頃の暑い夏の日に入社をしました。配属先は本社内に設けられた別組織の研究会で、出向の形で調査研究員の肩書きをいただきました。またもや調査の仕事です。入社2日目には四国で開催されていた学会への出張命令があり、瀬戸大橋も開通前の時代のため、三原まで新幹線を乗り継ぎ、今治にフェリーで渡り、目的地の松山に到着したのは2日目の夜でした。

 その時は業界の重鎮や若手研究者が集まる学会に行ってとにかく挨拶をして名刺を配ってこい、という出張内容でした。そんな仕事があるのか?と思いましたが、入社二日目では言われた通りにしか出来ないこともあり、知っている大学の先生や研究者の方を頼りに懇親会であいさつ回りを実行しました。後から上司に聞いた話として、「君は人脈の核を持っているから、それを活かす仕事をしろ」ということでした。確かに母校の研究室の関係で、学会でも多くの知り合いに会うことができました。そしてそれは今日まで脈々とつながることになります。(つづく)

 

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