最低賃金の上昇と施設園芸・植物工場経営

7月31日に厚生労働省より「令和元年度地域別最低賃金額改定の目安について」として報道発表がありました。これは同日開催された第54回中央最低賃金審議会による厚生労働大臣への答申によるもので、今年度の目安が示した引上げ額の全国加重平均は27円(昨年度は26円)となり、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額とのことです。また全都道府県で20円を超える目安額となっており、引上げ率に換算すると3.09%(昨年度は3.07%)となっています。  今後は目安額にもとづき地方最低賃金審議会で地域別最低賃金審議が行われ、都道府県での最低賃金額が改訂されていく流れとなります。

最低賃金(地域別最低賃金 全国加重平均額) 、労働政策研究・研修機構(JILPT)より

 

この動きが施設園芸、植物工場の経営に与えるインパクトについて考えてみました。続きはこちら

 

 

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施設園芸生産者のスタディグループ

施設園芸の端境期、作替時期に当たる8月はイベントシーズンでもあり、昨日今日と千葉県旭市でも施設園芸の大規模なセミナーが開催中です。千葉県での開催にもかかわらず全国からの参加者も多く、また講演者も施設園芸の盛んな高知県や宮崎県の方もおり、全国的なイベントになっていました。その中で宮崎県のキュウリ生産者の方が「スタディグループ」活動について紹介され、興味深い内容でしたので、お伝えします。

 

キュウリ生産者のスタディグループ

 

オランダの施設園芸生産者の間で広まったと言われるスタディグループは、生産者間で勉強会や現地検討会を開催し、現場を見つつ様々なデータを出し合って比較し、良い結果のケースなどを参考にグループの底上げをはかる活動とのことです。まさに学ぶ場、学ぶグループと言えますが、学ぶだけでなく実際の栽培や経営に反映させる仕組みと言えるでしょう。オランダの施設園芸ではデータ比較のためのプラットフォームも整備され、異なるメーカーの環境制御機器のデータでも同一のクラウド環境で比較可能という話も聞いたことがあります。あくまでグループ内でのデータ比較であると思いますが、オランダ施設園芸の発展基盤のひとつであることは間違いないと思います。身近な仲間の栽培状況や管理データを参考に改善をいち早く進めることができるためです。

 

宮崎県のキュウリ生産者の方は、こうしたオランダの施設園芸の動きを紹介され、仲間を募って数年前にスタディーグループを立上げられたそうです。同一の環境測定機器を使うことを条件にデータの比較をしやすくし、また日々の収量の提示、開花やその後の収穫までの追跡調査と着花段数や葉長などの生育調査も行われています。キュウリの各節に着花し果実として収穫されるまでのプロセスを追いながら、収穫までの歩留まりや期間などを環境測定データと見比べて、収量アップの方策を検討されてきたものと思います。そのために定期的な勉強会と現地検討会も開催し、毎年収量アップを重ねられたとのことです。また生産者が日常の営農活動をこなしながらデータの整理には手が回らない中、県職員(普及指導員)や農協職員(営農指導員)による支援が大変役にたったとのことでした。その際にスタディグループのデータを県や農協にも提供する条件で支援を受けたとのことで、公益性のある活動にもなっています。

 

スタディーグループ活動の推進に必要な要素

 

これには2つの要素があると思います。ひとつは前述の普及指導員や営農指導員による支援です。データを基礎に進める活動であり、調査方法や集計方法の教示、集計作業そのものへの支援、データの見方や改善への助言、勉強会のファシリテータ役など、様々なことがあると思います。データの扱いに慣れていない生産者がゼロから活動を立ち上げる場合、こうした支援は不可欠でしょう。また支援を進める側にも、それなりの知識や経験は必要ですが、生産者と一緒に考え共に学ぶ姿勢も大切でしょう。

 

もうひとつの要素として、クラウド環境の利用があります。最近は様々な環境が安価で提供されており、このキュウリ生産者のスタディグループは無料で利用できるGoogleのスプレッドシートを使ってお互いのデータを参照するよう仕組み作りをされていました。スタンドアロンの環境ではデータの取り込みや集計に手間がかかるばかりでしょうが、クラウド環境があれば日常的なデータ集計や比較も、会合等でのデータの検討もスムーズに行えるはずです。なお、同じ宮崎県内では、出荷予測や販売促進も含めた高糖度トマト生産グループのクラウドデータ活用の仕組み作りも進められています。また最近では、各社から様々な環境測定機器が発売(乱立とも言えます)される中、異なるメーカー、機器のデータも扱える生産者グループ向けのクラウドシステムも開発され、活用が期待されます。ようやくオランダ並みの環境に近づいてきたと言えます。

 

施設園芸、スマート農業の主役は誰か?脇役は?

 

スマート農業のブームが言われていますが、その本質は「データにもとづく農業」による生産性や収益性の向上に尽きると思います。便利な機器やサービスが数多く出回る中で、いかにそれらを使いこなし、増収と投資回収、増益に結び付けることが出来るかが、生産者側にも求められるでしょう。その際の主役はメーカーやベンダーではなく、あくまで生産者と言えます。宮崎県のスタディグループのようにデータの取得と活用を勉強会の中で進め、試行錯誤もあると思いますが、毎年改善を積み重ねることで増収と増益に結び付けることは、生産者自身の意識と能力によります。主役はあくまで生産者です。

 

その際に脇役となる支援者も重要であり、データの取り方、見方、活用の仕方についてリードできる知識と経験を持った指導者の育成が、これからのスマート農業の推進には不可欠になるでしょう。環境制御やCO2施用、養液栽培など個別の要素技術についての研修の場は従来も多くあったと思いますが、データの取得から管理、活用といった大きな枠組みでの研修や人材育成の仕組みは現時点でも少ないように思います。主役を盛り立てるための脇役作りにも、目を向ける時期かと思います。

 

施設園芸新技術セミナー機器資材展in千葉の開催の様子

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

 

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技術士2次試験受験指導の講師と動画

技術系の国家資格である技術士の試験は、1次試験と2次試験があり、それぞれ年に1回行われ、技術士資格を得るまでに最低でも2年が必要です。また技術士には、農業から原子力まで一般部門と呼ばれる専門別の様々な部門がありますが、もう一つ別な部門として総合技術監理部門というものが後から設置され、一般部門の合格者(または一般部門との併願)が受験することができます。私は平成19年に一般部門(農業部門)を、平成24年に総合技術監理部門の技術士2次試験を受験し、両方とも何とか合格をしました。現在は両部門の受験指導を、受験指導のサイトを通じ行っています。また、それとは別に総合技術監理部門の試験合格のメソッドを伝えるサイトを立上げ、少しずつ記事をアップし始めました。

 

技術士の2次試験は、受験申込書の提出から合格発表まで1年近くの長丁場で、その途中に7月の筆記試験と10月以降の口頭試験があり、おのおのの試験に向けて様々な準備が必要となります。その準備事項を整理、細分化して合格メソッドとして伝えることを目的としたサイトになります。さらに細分化した内容として筆記試験本番当日にやるべきことをプロジェクトマネジメントとしてまとめてみました。12分間の動画としてまとめております。自分でビデオに撮った動画をYOUTUBEにアップしたものです。お聞き苦しい箇所が沢山あって、まだまだなのですが、文章で読むよりも話で伝えた方がポイントなどの理解が進むのではないかと思い、あえて動画にしてみた次第です。別に技術士試験の学習に限らず、農業技術やIT系の技術など、動画で伝えることでよりリアルに、またシンプルに伝えることが出来るのでは?と感じています。受験に関係の無い方も、よろしければ試しにご覧になられてください。

 

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

 

安藤敏夫先生(千葉大学)の今

学生時代の専門課程で講義を受けた先生方は、比較的世代が近いこともあって、当時から親密にさせていただいていました。助手や助教授だった先生方は、その後、教授や学部長、副学長や学長などになられた方も多く、現在はほとんどが退官され第二の人生を歩まれている方も多くいらっしゃいます。それでも母校の千葉大学の退官は65歳と遅く、第二の人生をスタートするには少し遅い時期かもしれません。東京農業大学など他の農学系大学で教鞭をとられる先生が多いのですが、ご紹介する安藤敏夫先生は非常にユニークな第二の人生を歩まれています。

 

安藤先生は花卉園芸学研究室の教授を長くつとめられた後、千葉県野田市で農場を開設されました。私はおうかがいしたことはないのですが、国道16号線から近い場所に土地を取得され、ハウスなど70aも経営されている立派な花き生産者になられたとのことです。農場名は、ガーデンそよかぜです。そこではシェードガーデン用のササスゲの生産と出荷をされている他、キキョウの育種と生産もされています。

 

2019年8月4日付け日本農業新聞首都圏版に、安藤先生の今についての記事が掲載されました。記事によると、可憐なキキョウを東京オリンピックの時期に合わせ開花するよう、育種をされているとのこと。これは流通している五月雨キキョウという品種の開花時期が6月〜7月中旬であり、オリンピック開催時期の7月24日〜8月9日に合わせるため、在来種のキキョウを集めて開花時期が7月20日頃になるものを選抜したそうです。すでに昨年から出荷を始めており、東京オリンピックに向け日本の花であるキキョウをアピールしたいというお考えのようです。

 

安藤先生とは直接のお付き合いは今までもなかったのですが、自分の学生時代には当時導入が始まったパーソナルコンピュータを使った花きのデータベースの開発を行われたり、大型計算機での多変量解析による花きの系統分類をされたり、新しいことにいつもチャレンジをされていた先生という印象が今でもあります。第二の人生を東京オリンピックで文字通り開花されようとしている安藤敏夫先生(千葉大学名誉教授)の今について、ご紹介させていただきました。

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

 

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韓国の施設園芸と外国人労働者の今

日本と韓国の外交関係、経済関係に暗雲が立ち込めています。農業や施設園芸の分野でも農産物や種子、資材等の輸出入で両国のつながりは深く、これから様々な影響が発生するのかもしれません。流動的な状況で論評は控えたいと思いますが、改めて韓国の施設園芸の特徴である外国人労働者雇用について、日本と比較しながら振り返りたいと思います。

 

韓国での外国人労働者の雇用政策

 

韓国は日本と同様に移民政策を取っていません。しかし3K現場などでは労働力不足があり、外国人労働力の受け入れについて政府を通じて行っています。韓国労働研究院 研究員 キム・キソン氏の「韓国における外国人労働者の雇用法制及びその課題」(2012)では、韓国の外国人労働者の雇用法制における原則をあげていますので、引用します。

 

その 1 、単純労務分野への限定を原則とする。外国人雇用法が適用される在留資格は、非専門就業(E-9)と訪問就業(H-2)とし、主に未熟練外国人労働力を対象とする。

 

その 2 、国内労働市場の補完を原則とする。これは外国人労働力の導入が国内労働市場に 否定的な影響を及ぼしてはならないということで、国内で不足する労働力は、高齢者や女性等、国内の遊休労働力の活用を優先し、外国人労働力は補充的に活用すべきことを意味する。 この原則に従い外国人雇用法では、外国人労働者の雇用許可を得ようとする使用者に、「内国人の求人努力」を必須要件として規定している。

 

その 3 、外国人定住化防止の原則である。これは、単純労務を提供する外国人労働力が韓国社会に長期滞在することによって発生する国内労働市場の混乱の問題のみならず、結婚、 出産、子供の教育等社会的費用の増大を防止するための就業期間の短期循環を意味する。こ の原則に従い外国人雇用法では、就業期間の最長期間を制限し、出国後 6 カ月が過ぎないと再入国及び再就業ができないこととしている。

 

最後に、内外国人の均等待遇の原則である。これは合法的に就業した外国人労働者に対する不当な差別を禁止すると同時に、国内の労働関係法を同等に適用することを意味する。この原則により、外国人雇用法では差別禁止に関する規定を明確に規定し、外国人労働者は必 ず雇用契約を結ぶこととしており、既存の産業研修生制度とは異なりこの法律に沿って就業する外国人労働者を労働者として認めている。

 

 

これらの原則に従い、農業、施設園芸分野でも単純労働を対象として、補充的(国内雇用が集まらない場合の外国人雇用)に非定住での雇用(最大3年+延長1年1月、家族の呼び寄せは無し)を進めています。韓国政府機関がビザを発給し、施設園芸事業者が直接雇用をする形です。そして研修制度ではなく外国人を労働者として認め、国内の労働関係法を適用して差別をしないこととしています。2012年の時点では、産業全体での導入規模は57000人、うち農畜産業では4500人でした。

 

 

 

※引用文献:「第12回日韓ワークショップ報告書 外国人労働者問題:日韓比較」(2012)、独立行政法人労働政策研究・研修機構、3-20 https://www.jil.go.jp/foreign/report/2012/pdf/2012_1001.pdf

 

 

韓国の施設園芸での外国人雇用の実態

 

2018/12/8付けの私のブログ記事「日韓の外国人受け入れ制度と施設園芸」で、以下のことに触れました。

 

韓国は国策で外国人労働者の受入れに舵を切り、国がその管理と窓口業務をやっており、専門の政府組織を持っています。外国人は渡航費のみの負担で韓国に来て、国が受け入れて「雇用許可制度」の仕組みで、一定基準を満たした受け入れ先企業への就職が可能になっています。また3回までの転職が可能であり、受入れ企業間の競争条件が担保されて低賃金や劣悪な労働条件を回避するような仕組みになっているようです。

 

韓国のこの制度は、韓国人労働者の雇用を奪わない様な制度設計がされているようです。例えば、永住権は認めないが期限後の再入国は可能として、労働需要の答えながら人数の管理をすること、人気のない企業に対して優先的に外国人を回すこと、業種ごとに不足する労働者数を推計して、その数だけの外国人を受け入れることなどです。

 

参考文献)高安雄一「韓国の「外国人労働者の受け入れ制度」が大成功した理由…韓国人の失業者増えず」、Business Journal 2018.5.30

 

 

日本の外国人技能実習制度と比べると、最初から労働者として位置づけをしており、入国後の就業教育などを経て労働者として受け入れいる点が大きく異なっています。また事業者が直接雇用をする形であり、雇用人数も政府がコントロールしている点も、韓国の制度の特徴であると思います。日本の制度に比べると、非常にすっきりしたものという印象です。

 

 

韓国施設園芸での不法滞在外国人労働者の増加

 

7月28日付け日本農業新聞総合面に金哲洙記者の記事「外国人雇用 韓国の今」として、

 

韓国は不法滞在者を減らし、企業のコスト削減につなげるために、外国人労働者制度を導入した。しかし、制度開始から15年、不法滞在者が減るどころか、むしろ近年は増えている。外国人労働者の賃金が上昇し、農家経営を圧迫するケースも出ている。

 

とあります。そして、最低賃金基準以上の支払い義務が雇用側にあり、年々賃金が上昇する中で正規の外国人労働者を雇えなくなる農業経営者が増え、不法滞在の外国人を安く雇うケースが増えているという記事内容でした。不法滞在での労働報酬でも自国での給与の何倍も韓国では稼げるため、不法滞在者が増えているということのようです。

 

記事には2019年の韓国の最低賃金基準での時給が8350ウォンとあり、日本国内の低いレベルの都道府県の賃金と同程度のようです。これより低い賃金であっても不法滞在の外国人が韓国の施設園芸で働いていることになります。冒頭のような制度が整備されていたとしても、実態はその通りには行っていない、ということになると思います。外国人労働者に依存する状況で、コスト面で見合わなくなると、農業経営そのものが危機に陥いり、不法滞在者にさらに依存する状況になって来たものと言えるでしょう。

 

韓国のパプリカ温室での外国人労働者

 

日本の施設園芸でも、外国人技能実習生に依存した産地も見られますが、国内全般では全面的に依存した形にはまだなっていないと思います。また最低賃金レベルでの雇用でもコストが合わないとなると、経営そのものの問題であり、不法滞在者に依存することは避けるべき事態であると思います。人手不足の中で外国人に頼らざるを得ない場面も、日本でも今後は増えてくると思います。しかし全面的に頼るとなると、韓国のような事態も含め様々なリスクが生じることも念頭に入れる必要があるでしょう。

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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収量向上から収益向上へ

収穫工程までのICT利用と収量向上

 

農業の生産・出荷工程は、農場における収穫までの工程と、選果、貯蔵、出荷などの収穫後の工程に2分できます。施設園芸でも、センシング、モニタリングや環境制御などのICT利用の場面は、施設内での栽培〜収穫の工程で多くみられました。ここでのICT利用ではもっぱら生産性の向上に主眼がおかれています。施設生産性(=単収)、労働生産性、エネルギー生産性などで、投入資源や投入金額に対しての収量や品質をどれだけ高められるかがポイントになります。

 

ICT導入効果は多くの施設で見られ、近年のトマト栽培やキュウリ栽培での単収向上に反映されていると思います。特に環境制御技術が未導入の場合には、導入前後で1割〜2割程度の増収例もあって、その効果が注目されてきました。

 

収量向上と収益向上は比例しない?

 

最近のトマトなどの相場の低迷は、長期にわたる好天や全国的な増産の影響で、市場にトマトがあふれたことが要因と言われています。つまり単に増収をしただけでは、それに見合う収益が得られないことが多いと言えるでしょう。対策のひとつに、生産性の向上による生産コストの低減があげられますが、これには限度があります。収量向上には一定量の資源(エネルギーや労働力、肥料、農薬など)の投入が必要なためです。

 

ではICT利用などで向上した収量に見合う収益を得るにはどうしたらよいか?、現在の施設園芸業界が直面している大きな課題のように思います。長らく農業界では、作ることと売ることが別のことのように扱われて、プロダクトアウトの考えが主流であったと思います。最近ではマーケットインの考えで需要や受注に応じた生産を行う農業法人も、葉菜類や苗の施設栽培で多くみられます。

 

しかし長期栽培で気象など外部要因の影響を受けやすい果菜類の施設栽培では、ほとんどの現場が見込み生産を行っており、収穫できたものを需要先に当て込んで出荷販売しているのが実態と言えるでしょう。この当て込みを需要にマッチさせ、販売単価を確保しながら収益を向上させるかが、今後の施設園芸の成功のポイントのように思います。

 

安定供給による販売単価の確保

 

生鮮販売先や加工業務用途先といった実需者との取引を行う場合には、ある程度の見込み数量で取り決めをし、直近の生産状況によって修正をはかっていると思います。品質や納品数が安定した取引を望むこうした実需者としては、リスク回避のため様々なルートを確保したり、納品トラブル発生時には新たな対応を迫られることも多いと思います。こうした対応は手間とコストに跳ね返るため、実需者側は同一の仕入れ先から安定した納品を望む傾向があります。そのため年間を通じた安定供給を前提として、相場の影響を受けないような販売単価で契約取引を進める例もあると聞きます。

 

このことは言うは簡単ですが、高温期間や低日照期間、また台風や大雨などの気象災害のリスクの中で、周年での安定供給を行うことはICT利用であっても完璧には難しいと言えるでしょう。特に夏場の暑さ対策をどうするかで、秋以降の収穫量に影響が出るため、高温対策技術の優劣や気象環境による地域差が出やすいのが実情です。また高温に対し「冷やす」技術の導入には、設備や電力などのコストが発生することも多く、ICT利用が収益に直結するとは必ずしも言えないと思われます。

 

収穫以降でのICT利用

 

以上のように収穫までのICT利用は、通年の収量を向上することが可能であるものの、年間の安定供給のレベルには必ずしも達しておらず、実需者との取引を優位に進めるには物足りない部分があると思われます。そのため、今後は選果や調整、梱包、出荷といった収穫以降の工程におけるICT利用も良く検討し、実需に対応した計画的な取引や販売単価の向上に向けた活用を考えるべきと思います。

 

こうした考えは、スマート農業の分野ではあまり取り組まれていないように思われます。生産から出荷、消費までのフードバリューチェーンの構築といったお題目を聞くことは多いのですが、実際に構築された例というのは施設園芸においては聞き及びません。その一方で、現場の工夫の中で、収穫以降のICT利用が進んでいるようです。

 

葉菜栽培での生産〜収穫〜在庫〜出荷のリンク

 

一例として葉菜栽培での生産と出荷を結びつける取り組みがあります。レタス類などの施設栽培(養液栽培)では、栽培期間が数週間程度と短期であり、需要に応じた計画生産が可能です。そのため営業から上がる受注を元に作付計画を立案し、播種日や播種数を決定して栽培計画に落とし込む形になります。実際は栽培計画通りに収穫が進まないこともあるため、早取りや遅取りを行ったり、短期間ですが在庫を持ち出荷調整を行う必要もあります。このような生産〜収穫〜在庫〜出荷の流れを全体でコントロールすることで、実需先への安定供給や生産や在庫面でのロスの低減が図れます。そのためのICT利用による計画生産や在庫調整が先進的な経営体では見られます。

 

沖縄県のスーパー店頭の葉菜類

 

この手法をさらに進めると、生産施設の空き状況などを見ながら、実需先への出荷提案もある程度可能になると思います。待ちの営業から提案営業への転換となり、生産ラインの確保をしながら安定供給を進めるといった製販一体化を進められると思います。

 

果菜栽培での収量予測から販売提案への流れ

 

一方で果菜類の栽培は長期栽培が多く、葉菜類の栽培のように播種日から計画化された出荷のような手法は難しいと思います。しかし圃場には収穫前の果実が着果していれば、それらをカウントし、過去のデータや今後の気象予測などを踏まえ、収穫時期や収穫量の予測がある程度は可能です。この面のICT化や予測技術の開発は多方面で進められておりますが、現場的には調査区画での果実数のカウントを基盤とし、そこからの収穫到達日数を踏まえた予測が多く取られています。

 

このような予測手法は実需者への安定供給面でも役に立つと思われます。特に栽培規模が大きい施設であれば、出荷ロットも大きく、大口の実需者との取引も容易となるため、そこでの予測にもとづく販売提案があれば、担当者(バイヤー)の負担を軽減できることになります。さらに果実の大きさ(2L、L、M、S)や梱包形態(箱詰め、パック詰め)などの情報が付与されれば、より取引は進むものと思われます。

 

収穫までの工程では収量を上げることはできますが、売り上げを立てることはできません。需要に応じた形状や梱包形態に選果調整をして適期に出荷納品することで売り上げが立ち、またより積極的に販売提案をすることで売り上げを先取りすることも可能かと思います。

 

収量向上はやはり重要

 

以上のように収量向上に見合うよう、販売先と販売単価、売り上げを確保し、収益に結びつけるよう収穫以降を含めたICTの利用の考え方について記しました。そうしたICT利用は、生産が安定して収量が十分確保され、複数の販売先への供給能力が見込める場合に発揮されると考えます。少ない収量では様々な提案はおろか、安定供給そのものが担保されず、また生産コストそのものも上昇する場合が多いためです。施設園芸の基本は生産性向上であり、基本は単収の向上であると思います。そのうえで生産コストの低減と収益の向上をどのように図るかを、ICT利用、スマート農業の活用を含め検討する時代に来ていると思います。

 

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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人工光型植物工場に関する新たなJAS規格制定の動き

人工光型植物工場が普及し、加工・業務用途でも利用されるようになってきています。最近ではセブンイレブンのベンダー企業が大規模な植物工場を稼働させ話題になっています。

 

そんな中で、従来のGAPなどとは異なり人工光型植物工場に特化した認証規格の制定の動きが出てまいりました。

 

土屋農業技術士事務所の投稿でご紹介しています。ぜひご覧ください。

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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スマート農業と人間の能力

施設園芸分野のスマート農業のでは、機械化や自動化、ICT利用による高度な制御などが多く取り上げられています。実際の施設園芸の現場では今も多くの人が働いており、最近では外国人や障がい者の皆さんの姿もよく見かけるようになりました。水田作のような機械化を前提とした省力農業が施設園芸分野で実現されることは、当分はないと考えられます。それは人間の感覚や判断、手先の動きなどに頼る精緻な作業が施設園芸には多いためであると言えます。機械化や自動化が可能なところはどんどんと進めるべきでしょうが、そうでないところの生産性をどのように上げて行くかが当面の課題と考えられます。

 

機械の能力と人間の能力

 

機械の能力は、その仕様や利用場面により規定され、自ずと限界があります。ところが人間の能力にはそもそも仕様というものはなく、最初は未熟であってもトレーニングやコーチングなどにより能力を高めて行くことができます。もちろん筋力や持久力の面から限界はありますが、最初からこれだけしかできないといったように規定されることはありません。これは人間の学習能力や向上力によるものです。こうした人間の潜在的な能力に対する向上の方策について、施設園芸の分野でも検討の必要があると思います。

 

スマート農業と人間の潜在能力の活用

 

施設園芸でも大規模化が進み、多くの従業員を管理する必要がでてきています。労務管理や安全衛生管理といった、経営者側が義務的に行わねばならない管理事項も多くあります。また新人が配属され一人前になるまでのOJTやOff-JTなどの教育訓練や、一人前に育ってきた従業員をさらにレベルアップすることなど、能力管理には多くの場面があります。こうした管理は対面で行われることが多く、その時々や担当者により伝達内容や指導内容に違いがでたり、一貫性がなかったりなど、現場での問題も指摘されてきました。一方でICTを用いたシステム的なアプローチによる問題解決が、この分野において可能になっています。

 

一例として従業員のスマホを使った目標管理の仕組があります。これは従業員個人や所属グループの目標を定め、その達成状況をリアルタイムで示すものです。目標そのものは過去の実績や販売計画などからあらかじめ設定されますが、作業量や収穫量などの実績は従業員が作業完了後にスマホで入力することで、進捗も即時に把握できるものです。

 

作業の開始と終了をインプットして、進捗状況をモニター画面に表示する仕組みは、オランダの大規模施設園芸では標準的に導入されています。そこでは作業能力のランキングも表示され、競争的な環境を作っている感じがします。一方でこのスマホでのシステムは個人ごとの目標管理が前提にあり、さらにグループ全体での目標管理もあり、競争的な環境とは異なります。個人ごとの工夫や頑張りで個人の計画を達成しつつ、さらにグループとして計画を達成するよう、お互いに教え合ったり助け合ったりすることを促すような仕組みがそこにはあります。これは自分だけでなく、他の従業員やグループ全体の進捗を個人のスマホから参照でき、常に全員が情報共有することで可能になっていると言えます。

 

オランダの仕組みと、このスマホでの仕組みは設計思想そのものが異なっています。人間の潜在能力を前提に設計された仕組みは、スマート農業の分野では先進的な事例と言えるでしょう。

 

参考サイト https://farmos.jp/

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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スマート農業と植物の生育情報

農水省のスマート農業関連事業がスタートし、スマート農業への関心も高まっています。長年、施設園芸にかかわって来た一人として、ブーム的な現象に終わって欲しくないと思っております。

 

スマート農業と作物の生育状況の把握

 

スマート農業の要素技術のひとつのAIは、昭和末期から平成前期にかけ何度か農業や施設園芸に利用する取り組みがされました。主に研究サイドの動きでしたが、定着することにはなりませんでした。当時はコンピュータの能力も現在とはくらべものになりませんでしたし、また機械学習といったコンピュータの学習能力や画像処理能力も劣っていました。人工知能に関するプロジェクトも立ち上がっていましたが、現在のように官民共同での大がかりなものではありませんでした。

 

今回のスマート農業関連事業は、農水省が旗を振り、研究機関や農業団体、農業法人、自治体と民間がプロジェクトを組んで短期間で実証成果を出し、次の全国的な普及につなげていこうという動きであり、今までにはないものです。また要素技術の実用性も上がり、すでに現場で使われているものもあって、成功の確度も高まっていると思います。

 

ただし見かけでは上手く行っているように見えても、実際には手間がかかっていたり、利用条件が限定されていたりなど、その後の展開が難しい場合もあります。 平成26年に取りまとめられた「スマート農業の将来像」では、施設園芸分野を含めたスマート農業の進む方向のひとつとして「植物の能力を最大限に活かす」ことがあります。そのための「データに基づくきめ細やかな栽培」として「圃場ごとの栽培履歴や作物の生育状況を把握し、資材投入量の最適化や効率的な作業計画の策定を実現」が示されています。この中で難易度が高いものが作物の生育状況の把握です。

 

培地重量を計測し潅水のタイミングや潅水量を調整している養液栽培

 

難易度の高い生育情報の把握

 

例えば、植物体そのものの形態や成長などをリアルタイムで把握することは、画像処理技術が発展してもなかなか難しいことのようです。実用化技術として、選果装置や接ぎ木ロボットの前工程での、画像処理による果実や苗の分類自動化などがあります。しかし生育中の植物の形態を的確に把握するには、数段高いレベルの技術が求めるられるでしょう。特に立体的な形状や、重なりがある場合などは難易度が高くなります。

 

また、植物が必要とする水分量を決定するため、間接的な方法ですが一般的に日射量の計測を行います。しかし日射センサーは通常は屋外に設置され、植物が受ける光環境とは必ずしも一致はしないと言えるでしょう。また一方で植物体の大きさにより必要水分量も変わってきます。しかし最近では養液栽培において培地の重量を秤で直接計測し、重量変化から必要水分量を把握する技術が使われています。また土耕栽培において屋外の日射センサーの他に土壌水分センサーも組み合わせ、必要水分量の精度を高める工夫もされています。いずれも直接的に植物体を計測するものではありませんが、それに近い計測制御技術としてレベルを上げたものと言えるでしょう。

 

スマート農業における情報の入り口の大切さ

 

1970年代から現在まで施設園芸研究に携わってこられた高倉直先生(東大名誉教授)は、「スマート農業に望むこと」ととして論文を最近書かれています。そこでは「AIが十分生かされるためには、まず正確な情報を取得する必要があるが、余り注目されていない。(中略)AIの基本は植物の環境を正確に計測できるセンサーの開発とそれによる正確な情報の収集であると言っても過言ではない。」と結ばれています。情報の入口の大切さを高倉先生は説かれています。われわれがスマート農業について理解するためには、まずこの点から注視する必要があるでしょう。

 

引用文献:高倉 直 2019. スマート農業に望むこと. 農業および園芸 94:285-289.

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

 

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スマート農業関連実証事業の施設園芸関係の課題

農林水産省の目玉施策となっているスマート農業関連実証事業ですが、「スマート農業加速化実証プロジェクト」、および「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」が採択され、稼働し始めています。採択課題は合計69課題であり、予算額は令和元年度分と平成30年度2次補正分を合わせ4,705百万円と大型のものです。また施設園芸関係は下記の8課題です。

 

‖腟模施設園芸の生産性を飛躍的に向上させるスマート技術体系の実装

(実証グループ名:生産性向上スマート農業実証コンソーシアム、代表機関:大阪府立大学研究推進機構植物工場研究センター)


促成イチゴ栽培における圃場内環境および作物生育情報を活用した局所適時環境調節技術による省エネ多収安定生産と自動選別・パック詰めロボットを活用した調製作業の省力化による次世代型経営体系の検証

 

(阿蘇イチゴスマート農業実証コンソーシアム、(国研)農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター)

 

施設園芸コンテンツ連携によるトマトのスマート一貫体系の実証

(施設園芸コンテンツ連携コンソーシアム、(国研)農業・食品産業技術総合研究機構野菜花き研究部門)

 

ICT に基づく養液栽培から販売による施設キュウリのデータ駆動経営一貫体系の実証

(日本をリードする施設キュウリスマート農業実証コンソーシアム、愛知県西三河農林水産事務所)

 

セ楡澑犒櫃砲ける収穫ロボットによる生産コスト削減体系の実証

(施設園芸における収穫ロボット実証コンソーシアム、パナソニック(株))

 

Γ稗達垉蚕僂筍腺謬蚕囘を活用した「日本一園芸産地プロジェクト(施設園芸:なす・すいか)」の実証

(「日本一園芸産地プロジェクト(施設園芸:なす・すいか)」スマート農業実証コンソーシアム、熊本市)

 

Э綸鎮和咾砲ける AI と IoT を活用した葉菜類大規模経営の実証

(福岡R・O・Iグループ次世代農業実証コンソーシアム、株式会社RUSH FARM)

 

┘札鵐轡鵐圧蚕僂亡陲鼎統合環境制御の高度化によるピーマン栽培体系の実証

(そおピーマン専門部会スマート農業実証コンソーシアム、鹿児島大学農学部)

 

8課題のうち、九州関連の課題が5課題(表の´↓ΝЛ┐硫歛蝓砲△蠅泙后うち↓ΝЛ┐和緝週ヾ悗九州にあり、また「‖腟模施設園芸の生産性を飛躍的に向上させるスマート技術体系の実装」の代表機関は大阪府立大学ですが、実証場所は大分県のパプリカ栽培施設の(株)タカヒコアグロビジネスとなっています。さらに施設園芸関係以外でも九州に関係する課題数が15と多く、農水省が九州の農業に対して力を入れていることが感じられます。

 

本事業は2年間後の2021年3月にはとりまとめを行うことになっており、短期間のプロジェクトといえます。その間にも「全国版スマート農業サミット(仮称)in アグリビジネス創出フェア」が本年11月に開催予定であり、実証地区を「見られる・試せる・体験できる」情報発信拠点として活用する計画も示されています。さらに実証拠点の成果をPRし、2025年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践するというスマート農業の施策も定められています。そのために必要な取組やその進め方等を定めた「農業新技術の現場実装推進プログラム」(仮称)を2019年夏までに農水省が策定することになっています。従ってしばらくはスマート農業に係わる事業や施策、イベントなどが目白押しになると推測されます。

 

施設園芸分野でのスマート農業が目指す方向

多少、話題が先行している感のあるスマート農業ですが、施設園芸分野での目指す方向がどんなものか、共通認識が必要かと思います。農水省がスマート農業関連実証事業の位置づけ、採択地区、今後の展開について資料をとりまとめとめています。そこでは、従来のすぐれた農業技術と先端技術を掛け合わせたものがスマート農業としてポンチ絵で描かれています。熟練農家の匠の技を形式知化して若手農家に伝承したり、自動化や規模拡大をはかったり、センシングや生育予測、病害予測によって農業経営の高度化をはかることが示されています。

 

資料:「スマート農業実証関連事業」農林水産省

 

また事業を所管する農林水産技術会議のホームページの末尾には、スマート農業についての簡単な説明もあります。説明を引用します。

 

スマート農業とは、ロボット・AI・IoT等の先端技術を活用して、省力化・精密化や高品質生産を実現する等を実現する新たな農業のことです。
日本の農業の現場では、課題の一つとして、担い手の高齢化が急速に進み、労働力不足が深刻となっています。
そこで、スマート農業を活用することにより、農作業における省力・軽労化を更に進められる事が出来るとともに、新規就農者の確保や栽培技術力の継承等が期待される効果となります。

 

一言でいえば、このようになる訳ですが、施設園芸での適用について、もう少し考察が必要でしょう。農水省は先立って平成25年に「スマート農業の実現に向けた研究会」を立上げ、推進方策についての検討を行い、検討結果の中間とりまとめを公表してます。そこではスマート農業の5つの将来像を示しており、これを引用します。

 

ロボット技術やICT等の様々な分野の方々の協力を得て、我が国農業が直面する課題を解決し、新たな農業(スマート農業)を拓いていくには、スマート農業の将来像をわかりやすく提示し、関係者で方向性を共有して取組を進めることが重要である。
このため、ロボット技術やICTの導入によりもたらされる新たな農業の姿を以下の5つの方向性に整理した(別添1)。

 

超省力・大規模生産を実現
トラクター等の農業機械の自動走行の実現により、規模限界を打破

 

作物の能力を最大限に発揮
センシング技術や過去のデータを活用したきめ細やかな栽培(精密農業)により、従来にない多収・高品質生産を実現

 

きつい作業、危険な作業から解放
収穫物の積み下ろし等重労働をアシストスーツにより軽労化、負担の大きな畦畔等の除草作業を自動化

 

誰もが取り組みやすい農業を実現
農機の運転アシスト装置、栽培ノウハウのデータ化等により、経験の少ない労働力でも対処可能な環境を実現

 

消費者・実需者に安心と信頼を提供
生産情報のクラウドシステムによる提供等により、産地と消費者・実需者を直結

 

5年ほど前に、すでにこうした共通認識を作るためのとりまとめがされていた訳ですので、スマート農業を考える上で、これら5つの方向性に立ち返ってみる必要があると考えます。特に施設園芸での栽培に関係が深いと思われるのが、「∈酳の能力を最大限に発揮」でしょう。このポンチ絵を引用します。

 

資料:「スマート農業の将来像」、農林水産省

 

ここでは、「データに基づくきめ細やかな栽培」として3つの例が示され、うち施設園芸と思われる例では「圃場ごとの栽培履歴や作物の生育状況を把握し、資材投入量の最適化や効率的な作業計画の策定を実現」を示しています。すなわち、

 

  1. 圃場ごとの栽培履歴や作物の生育状況の把握
  2. 資材投入量の最適化
  3. 効率的な作業計画の策定

 

これらを行うことで、「従来の水準を超えた多収、高品質、効率生産を実現」するとあります。

a.では各種のモニタリングによる見える化と分析、b.ではエネルギーや種苗、水分、肥料、農薬等の投入量の調整、c.では生産管理、作業管理技術の向上といった、最近では研究や実証が進んでいる技術分野です。5年前に策定されたこうした将来像は、そのまま実証へ進んで来たと言って良いと思います。スマート農業関連実証事業の各課題においても、こうした将来像に沿った技術実証が進められていくものか、個別に確認していく必要があるでしょう。各課題の詳細についてはつかみ切っておりませんが、今後あらためてお伝えしてまいりたいと思います。

 

 

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