施設園芸生産者のスタディグループ

施設園芸の端境期、作替時期に当たる8月はイベントシーズンでもあり、昨日今日と千葉県旭市でも施設園芸の大規模なセミナーが開催中です。千葉県での開催にもかかわらず全国からの参加者も多く、また講演者も施設園芸の盛んな高知県や宮崎県の方もおり、全国的なイベントになっていました。その中で宮崎県のキュウリ生産者の方が「スタディグループ」活動について紹介され、興味深い内容でしたので、お伝えします。

 

キュウリ生産者のスタディグループ

 

オランダの施設園芸生産者の間で広まったと言われるスタディグループは、生産者間で勉強会や現地検討会を開催し、現場を見つつ様々なデータを出し合って比較し、良い結果のケースなどを参考にグループの底上げをはかる活動とのことです。まさに学ぶ場、学ぶグループと言えますが、学ぶだけでなく実際の栽培や経営に反映させる仕組みと言えるでしょう。オランダの施設園芸ではデータ比較のためのプラットフォームも整備され、異なるメーカーの環境制御機器のデータでも同一のクラウド環境で比較可能という話も聞いたことがあります。あくまでグループ内でのデータ比較であると思いますが、オランダ施設園芸の発展基盤のひとつであることは間違いないと思います。身近な仲間の栽培状況や管理データを参考に改善をいち早く進めることができるためです。

 

宮崎県のキュウリ生産者の方は、こうしたオランダの施設園芸の動きを紹介され、仲間を募って数年前にスタディーグループを立上げられたそうです。同一の環境測定機器を使うことを条件にデータの比較をしやすくし、また日々の収量の提示、開花やその後の収穫までの追跡調査と着花段数や葉長などの生育調査も行われています。キュウリの各節に着花し果実として収穫されるまでのプロセスを追いながら、収穫までの歩留まりや期間などを環境測定データと見比べて、収量アップの方策を検討されてきたものと思います。そのために定期的な勉強会と現地検討会も開催し、毎年収量アップを重ねられたとのことです。また生産者が日常の営農活動をこなしながらデータの整理には手が回らない中、県職員(普及指導員)や農協職員(営農指導員)による支援が大変役にたったとのことでした。その際にスタディグループのデータを県や農協にも提供する条件で支援を受けたとのことで、公益性のある活動にもなっています。

 

スタディーグループ活動の推進に必要な要素

 

これには2つの要素があると思います。ひとつは前述の普及指導員や営農指導員による支援です。データを基礎に進める活動であり、調査方法や集計方法の教示、集計作業そのものへの支援、データの見方や改善への助言、勉強会のファシリテータ役など、様々なことがあると思います。データの扱いに慣れていない生産者がゼロから活動を立ち上げる場合、こうした支援は不可欠でしょう。また支援を進める側にも、それなりの知識や経験は必要ですが、生産者と一緒に考え共に学ぶ姿勢も大切でしょう。

 

もうひとつの要素として、クラウド環境の利用があります。最近は様々な環境が安価で提供されており、このキュウリ生産者のスタディグループは無料で利用できるGoogleのスプレッドシートを使ってお互いのデータを参照するよう仕組み作りをされていました。スタンドアロンの環境ではデータの取り込みや集計に手間がかかるばかりでしょうが、クラウド環境があれば日常的なデータ集計や比較も、会合等でのデータの検討もスムーズに行えるはずです。なお、同じ宮崎県内では、出荷予測や販売促進も含めた高糖度トマト生産グループのクラウドデータ活用の仕組み作りも進められています。また最近では、各社から様々な環境測定機器が発売(乱立とも言えます)される中、異なるメーカー、機器のデータも扱える生産者グループ向けのクラウドシステムも開発され、活用が期待されます。ようやくオランダ並みの環境に近づいてきたと言えます。

 

施設園芸、スマート農業の主役は誰か?脇役は?

 

スマート農業のブームが言われていますが、その本質は「データにもとづく農業」による生産性や収益性の向上に尽きると思います。便利な機器やサービスが数多く出回る中で、いかにそれらを使いこなし、増収と投資回収、増益に結び付けることが出来るかが、生産者側にも求められるでしょう。その際の主役はメーカーやベンダーではなく、あくまで生産者と言えます。宮崎県のスタディグループのようにデータの取得と活用を勉強会の中で進め、試行錯誤もあると思いますが、毎年改善を積み重ねることで増収と増益に結び付けることは、生産者自身の意識と能力によります。主役はあくまで生産者です。

 

その際に脇役となる支援者も重要であり、データの取り方、見方、活用の仕方についてリードできる知識と経験を持った指導者の育成が、これからのスマート農業の推進には不可欠になるでしょう。環境制御やCO2施用、養液栽培など個別の要素技術についての研修の場は従来も多くあったと思いますが、データの取得から管理、活用といった大きな枠組みでの研修や人材育成の仕組みは現時点でも少ないように思います。主役を盛り立てるための脇役作りにも、目を向ける時期かと思います。

 

施設園芸新技術セミナー機器資材展in千葉の開催の様子

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください

 

by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

 

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