AIと農業(その4)データの見える化とAI

1.IoT、クラウド利用と見える化の進展


IoTやクラウド利用は農業分野で、ここ数年のトピックとなっています。これら技術の発展とコストの低下があり、また農業側にも気象条件や植物の成育を制御して、収量や品質を上げるため、基礎となるデータの取得が必要とされてることがあります。こうしたIT技術がトピック化する以前から、施設園芸では特に温湿度や日射量の計測は盛んに行われてきました。また、植物の成育状況を定期的に計測することも最近の特徴です。環境と植物の両面から、データにもとづく分析や判断を行う流れが、現場では主流となりつつあります。ハードウエアとソフトウエアの両面から、施設園芸での見える化の流れが強まってきたと言えます。

 

 


 

施設園芸の現場に各種の計測機器やクラウド機器がごく普通に見られるようになっており、生産者は自分のスマートフォンで環境データをリアルタイムで容易に参照できるようになりました。当初はモニター機能だけで、出先から天候の変化を見ながら、電話で現場に機器の設定の指示をする生産者もいましたが、現在ではモニターだけでなく機器の操作や設定値の変更も可能なものも多く提供されています。
 

 

2.データの増大と集計機能の向上


施設園芸では、その場にいずとも、ある程度の管理が可能となり、現場に張り付きになる必要は薄まってきました。その一方で、データを見て、その意味合いを判断し、次の操作や設定値の調整を行うことについては、生産者が自ら行っています。これは多くの場面で従来から変化していません。一方でIoTやクラウドの利用により、データはあっという間にたまります。たまった過去のデータを有効に利用することが次に求められますが、そこに手間と時間を掛けない工夫が必要でしょう。
 

過去のデータについて、期間を指定し集計やグラフ化する機能は、最近の製品の多くに取り入れられています。現在と過去の比較など簡単にできる製品も多く、過去の気象条件や環境制御の結果と現状を比べ、調整に生かすことができると思います。こうした機能も見える化の一部と言えます。競合する製品が多く発売されるようになり、ハードウエア上の差が出にくくなってくると、こうしたソフトウエアの機能や、サービスの内容で差別化がはかられるようになると思われます。ユーザーが膨大なデータを見やすく簡単に検索、集計、グラフ化することは、これからも容易になると思われます。

 

3.データの見える化、集計の先にあるもの

 

先に述べたように、生産者はデータを見て、その意味合いを判断し、次の操作や設定値の調整することが、やるべきことです。そうすることで、データを介して収量や品質の向上に結び付けられるからです。一方で、集計やグラフ化されたデータの意味合いを判断するには、データの基準値や適正な範囲が必要になります。これらから外れている場合には調整が必要となり、機器動作の調整や設定値の修正を行うことになります。集計>判断>調整のプロセスは、日単位、週単位など、いくつかのサイクルがあり、データをまとめ、植物の状態や収穫状況など踏まえ、調整を行う形が一般的であると思います。

 

こうした判断や調整のプロセスにも、定型的な部分と、異常値や急な環境の変動に対する非定型的な部分など、様々なものがあると考えられます。定型的なプロセスについては、おそらくAIの利用、機械学習の活用によって、自動化も進んでくると思われます。また非定型的なプロセスについても、細かく場合分けをしていけば、定型化や自動化もある程度は可能かもしれません。

 

 

 

 

4.AIと生産者

 

機械化、自動化、AI利用の先にあるものは何か?という議論は、最近よく聞かれます。AIの進展で不要となる職業、のような記事も見かけられます。その一方で、AIのような新しい技術が普及すると、それにまつわる新しい技術や職種も必要とされる、というのが歴史の流れである、という主張もあります。AIは、過去のデータから学習し、それに沿った判断を行うことは得意でしょうが、正しい基準値や適正範囲を決めることは不得意と思われます。これらは人間が最初に決めなければなりません。作物の収量や品質を高めるような基準値や適正範囲そのものを、AIが自動的に決め、季節や気象条件などにより微調整することも、やがては可能になるかもしれませんが、現状では大きな隔たりがあるでしょう。

 

逆に言えば、目標とする基準値や適正範囲を諸条件から決められる生産者は、AIも使いこなし、省力的に管理作業を進められ、経営規模も増やすことが可能になると考えられます。それが出来ないとなると、機械に使われてしまい、結果も出せない、ということに成りかねないでしょう。そうならないため、どうのような注意や日常の取組みが必要になるか、考えていく必要があります。

 

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください。


 

 

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