大型台風と施設園芸

今年は大型台風の発生と本土通過が頻発し、施設園芸の温室や、太陽光型植物工場などに被害が発生しています。被害状況については各地の断片的な情報程度しかありませんが、進路や最大風速などから大きな被害があったことは想像できます。また何十年に一度という言われ方もされていますが、確率は小さくとも来年また同様な台風被害がないとも限りません。今後も大型台風に対して、どのような考え方で対処をすべきか、整理が必要と思われます。

 

平成29年台風5号(気象庁)

 

1.大型台風への対策の限界

 

大型台風に対して温室の強度を高め、被害を軽減することが一つの考え方としてあります。骨材の厚みや太さ、基礎の大きさ、補強材の数などで強度を高めることは可能ですが、温室への初期投資費用とのトレードオフとなって自ずと限界が見られます。いまた骨材も多くなり光を遮ることで生育への悪影響が懸念されます。台風対策の強化は、おのずと限度が発生するものです。

 

一方で強風発生の再現率の考え方があり、10年に1回の強風発生と、30年や50年に1回のさらに強い風の発生では、後者での対策がより強度の高い温室が必要となります。こちらも限界をどこまで捉えるかによりますが、近年の台風発生の頻度や強さを考えると従来の再現率の設定が今後も通用するかどうか、検討が必要となるでしょう。

 

2.現実的な大型台風への対策

 

温室の建設価格は東日本大震災以降、年々上昇をしており、さらに台風対策を盛り込むとなると初期投資の負担もさらに高くなり、施設園芸経営の圧迫要因となってきます。最終的には経営が成り立つ範囲での温室の強度向上による台風対策を考える必要がありますが、実際に強度を補えない場合には、保険によりカバーする考え方も必要となるでしょう。保険には農業界で一般的な農業共済と民間の災害保険があり、いずれも温室やビニールハウス、栽培施設を対象としています。これらの利用により災害時の金銭負担が軽減されるとともに、温室の強度的な仕様も軽減されます。

 

自然災害の中でも台風の到来は予測がある程度は可能であり、それに応じた対策も実施可能です。特に被害を受けやすい開口部(天窓や側窓等)の補強対策、破れや隙間対策を入念に行うこと、換気扇の利用により温室全体に陰圧をかけ強風により温室が持ち上げられないようにすることなど、基本的な対策を励行しなければなりません。これらについては、静岡県が「施設園芸における台風・強風対策マニュアル」として詳細に整理し、公開されていますので、ご一読をお勧めします。

 

3.人工光型植物工場と大型台風

 

西日本のある人工光型植物工場では、先日の台風21号の通過時に最大風速40m以上が吹いた地域にありましたが、直後に伺った話では、まったく影響を受けていませんでした。瞬間的な停電はあったようですが、復帰も自動化されており、植物生産への影響は皆無でした。ただし、同じ台風21号の通過時に長時間の停電が発生した地域もあり、それらへの対策も検討すべきでしょう。設備全体をバックアップする非常用電源は大容量となるため準備は難しいと思われます。植物工場施設自体は断熱構造のため、外部の温度上昇などによる植物体へのダメージは受けにくいと思われます。一方で停電時間に応じて、設備が停止した際の植物の生育や設備への影響の程度を事前に推計し、状況に応じた対策案を計画すべきでしょう。

 

参考文献:施設園芸における台風・強風対策マニュアル(2012)、静岡県

 

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください。

 

 

JUGEMテーマ:農業