展示会「次世代農業EXPO」を見てまいりました(その2)

あるブースの奥まったところに、スカイブルーの鮮やかなボディーの高所作業台車が置かれていました。ちょっと目立たない展示でしたが、この分野は外国数社と国内数社しか参入がなく、あまり動きがないものと思っていましたので、興味を持ちました。

 

担当の方によると、建設分野の作業機器を扱っており、その分野では同様な高所作業車など、大量の受注残を抱えているそうです。数年先まで建設需要が高いことが背景にあるようです。しかしそれに頼らず、農業分野への参入を進めており、建機分野での技術やノウハウを活かした製品開発を行われているとのこと。

 

担当の方とのお話では、建設機械では当たり前の自動停止装置や安全装置についての理解が、施設園芸の現場では進んでいないため、安全機能が現場作業を止めることについての拒否感が多く苦慮されていることが伺えました。例えば作業車が数度傾斜した場合には自動停止する機能があって、そのたびにリセットする必要があることに苦情がきたり、移動中の動作音(電子音による警告)にも拒否感が高いとのこと。

 

この分野は製品の競争もあまりなく、製品価格の割高感を感じられている方も多いようです。その一方で、重量物であるため、他の作業者や設備などとの接触や事故も、軽微なものは現場ではそれなりに発生している話はよく耳にします。死亡事故については聞いたことはありませんが、自動停止機能が搭載されていない機種の場合、重大事故の可能性は否めないと思います。

 

おそらく現場導入には様々なご苦労が伴うかと思いますが、こうした新規参入は施設園芸業界から歓迎すべきことと思います。出展会社では電源装置の製造販売も行っており、先日の台風による停電被害に対し引き合いも増えているとのことでした。事故防止の他に、施設園芸での非常時のBCP(事業継続計画)があまり考えられていなかったことも、担当の方とのお話のついでで意見交換をさせていただきました。

 

 

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展示会「次世代農業EXPO」を見てまいりました (その1)

農業資材、施設園芸、植物工場関連の展示会が幕張メッセで今週開催され、2日間ほど見てまいりました。

展示会のジャンル的には、施設園芸・植物工場展(GPEC)に近いと思いますが、GPECが2年に一度の業界イベント的な展示会であるのに対し、こちらは毎年開催されており新しいジャンルや開発途上のものなど、何があるか分からない面白さがあります。

 

今年は、流行りのドローンとハウス環境の見える化ツールやサービスが多数あり、AIをうたう展示も散見されました。ハウス関係のベーシックな資材展示は少なく、メカ的なもの、ICT利用、各種のメディアやサービスなど、ビジネスのそのものの動向が変わって来ている印象を受けました。

ブースでじっくりとお話を聞いたところをご紹介したいと思います。

 

【CHINO、三基計装ブース】

 

CHINOは計装機器の大手さんですが、三基計装さんは施設園芸の環境制御機器専業メーカで、現在はCHINOの傘下にあります。昭和から続いている専業メーカーで、スーパーMINIなどの複合環境制御装置が主力商品です。製品そのものは30年選手であり、最近の「統合環境制御装置」に比べると機能やI/Oの点数は劣るものの、価格の安さと一通りの基本機能の装備が特徴と思います。また、「枯れた製品」でもあり、安心感があります。私の栽培の先生である、元埼玉県園芸試験場の稲山光男先生が監修をされたと聞いていますが、昭和のハウス栽培で必要な機能に絞った感があります。

 

今回は昭和の製品だけを展示したのではなく、施設園芸のICTサービスで頭角を表しているセラクさんの「みどりクラウド」との接続がされていました。「みどりクラウド」は、農業専業メーカーではないICT企業が開発した、非常に見やすく使いやすい画面構成(UXというのでしょうか?)が特徴で、ハウス環境を多面的にモニターできるサービスです。また東証1部上場企業ならではの懐の深さなのか、サービス価格も安価です。昭和の製品と平成の終わりのICTサービスが接続され、何とみどりクラウドからスマホ画面などで三基計装さんの複合環境制御装置(ふくごう君、スーパーMINI)がクラウド経由で操作が可能となっていました。

 

これは既存の三基ユーザーにとっては単なる環境制御装置がクラウド化されたという画期的な進化になると思います。また、みどりクラウドユーザーには、高機能では無いものの、手軽な価格で環境制御も出来るというメリットもあり、一石二鳥、WIN=WINの成果と言えるでしょう。まだリリースして間もないため、実績はこれからと思いますが、私の直感で「これは売れる!」と思いました。低価格と難しさが無い環境制御、それにクラウドサービスの組み合わせに、直感を刺激されました。

 

説明をしていただいたAさんとは何十年のお付き合いなのですが、Aさんによると、この開発プロジェクトで両社の間を橋渡しされたのが、当時B県の試験場におられたC先生だったとのこと。C先生は私の大学後輩にあたる研究者で、栽培と環境制御、それに経営と守備範囲の広い方で、なるほど、と思いました。普通の研究者には、こうした橋渡しはなかなかできないことです。C先生は、その後、B県を退職され、新天地にチャレンジ中です。応援したいと思います。

 

(展示会報告は続きます)

 

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農業景況が公表されました

10月1日付けの日本農業新聞によると、日本政策金融公庫が担い手農業者を対象にした農業景況調査をまとめ、農業経営が前年より良くなったという回答より、悪くなったという回答を引いた指数(景況DI)が、前年実績より33.5ポイント低下し、マイナス12.3となったとのことです。

 

1.農業景況と施設野菜部門

 

景況DIは経営部門ごとに公表され、施設野菜部門では前年実績の15.0ポイントから14.5ポイント低下し、本年度通年見込みか0.5ポイントとなっています。露地野菜部門では同様に前年実績の7.5ポイントから14.0ポイント低下し、マイナス6.5ポイントとなっています。いずれの部門も農業経営部門全体のなかでは景況感が高い方ではありますが、このところの上昇基調からは大きく悪化をしてしているといえます。

 

要因として、農産物の販売単価の低下や出荷量減少による売上の低下、そして資材コストや物流コストの上昇が考えられます。施設野菜部門では、天候不順や異常気象の影響による減収が多くの作物であったかと思われ、また春先の良好な気候で市場出荷量が増え相場が低迷したことによる影響もあると考えられます。さらに資材コストや物流コストの上昇の他に、人件費の上昇も考えられます。これには最低賃金の改定、求人難による時給アップなどいくつかの要因が考えられます。

 

このような調査は農業経営の動向をマクロ的に見るには適していると思いますが、作物や地域によって必ずしも同じ傾向とは限らず、また季節や期間により販売量、販売単価、生産コストが異なり、一様には考えられないこともあります。

 

2.農業景況の悪化への対応

 

いずれにしても景況悪化により施設への設備投資意欲は減少し、暖房費等の生産コストの削減に生産者は動く可能性があるかもしれません。その一方で、多少コストをかけてでも販売単価が高い時期に収量と収益を確保しようと考える経営者も現れるかもしれません。景況悪化に対し、より有利な作物に転換することもあると思いますが、誰でもできることではありません。

 

この先も販売単価の低下する時期が発生し、また天候不順や異常気象が頻発することを前提に、さらに原油価格の上昇基調も踏まえて、施設の更新、作型の調整や変更、収量や作業量の調整など、売上と経費と収益について経営全体を最適化する発想や管理が重視されることになるのでは、と考えられます。施設野菜の経営環境はいろいろな意味で厳しくなっていると思いますが、リスクを考えながら、より計画的に生産を行い、販売先との連携を密にして収益を確保することが、一層求められるのではないでしょうか。

 

 

 

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施設園芸の業務システム

先週、宮城県で施設園芸関係のセミナーがありました。イチゴの産地県で、県内外の生産者や研究者、指導者からの発表時が多く、有意義な内容であったと思います。発表の多くは栽培に関するものでしたが、ひとつだけタイトルにある業務システムの開発事例についての発表がありました。

1.イチゴの収穫〜出荷管理システム

1ヘクタール弱の農業法人の若手経営者の方の発表で、業務の効率化のためのシステム導入の報告でした。最初にイチゴ生産での作業時間の分析結果が示され、ほぼ9割の時間が収穫以降の作業についやされている、ということでした。つまり栽培に関しては、たったの1割であり、残りは収穫から出荷までの後工程ということになります。この経営者の方は、分析結果から導いた方針として、後工程の業務を効率化して、栽培に関しての時間を集中して取れるようにしたいとのことでした。まだまだ収穫量や品質を上げていきたい、そのため業務効率化を進める、という経営方針です。

 

2016年12月の農業法人のイチゴ


業務システムでの入力は、午前中の圃場での収穫時に、収穫コンテナが一杯になったところで作業者別にタブレット入力をするものと、選果作業場でのパック詰め時に、一つイチゴのパックができたところで規格別(M,Sなど)にタブレット入力するものがあります。圃場での収穫情報からは、選果場でのパック詰め作業量がどの程度かを見積もることができ、当日の作業終了時刻まで読めるようになったそうです。このことで、時間内に作業を終わらせパートさん達が早く帰宅できるよう、気持ちの切り替えが可能になったようです。また箱詰め作業情報からは、出荷先ごとの作業進捗状況がリアルタイムで分かり選果場にいるメンバーにも共有化されて、こちらも目標のパック数に向けて全員で作業を進める環境が確保できたようです。

2.シンプルで人間中心の業務システム

この業務システムの面白いところは、人間を中心に置いたところだと思います。手押しでのタブレット入力というのは、少し時代遅れかもしれません。しかし入力はワンタッチのため、リアルなデータがクラウドに反映されることに変わりなく、また入力結果も手元で確認でき、実用性は高いと思います。

データの2次加工もされ、受注情報とパック詰め情報にもとづく出荷伝票作成や、等級別の出荷統計、等外品の発生統計などが可能です。簡単な2次加工ですが、データの二度打ちもなく、業務システムとしてはシンプルかつ実用性があるかと思います。この程度ならすぐにできると思われるかもしれませんが、この程度のこともシステム化がされず手作業が主流なのが施設園芸の現実なのかもしれません。AIやロボットの開発用前に、日常業務の見直しとシステム化の検討も必要と思います。

 

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施設園芸・植物工場での労務管理

農業全体で人手不足が圧迫要因となり、雇用確保や労務管理について政府の支援施策も具体化しつつあります。施設園芸や植物工場でも規模拡大を進め、雇用労働力主体での経営を行う場合には、労務管理が大変重要となってまいります。

 

1.雇用確保の難しさ

 

施設園芸や植物工場では手作業による工程が多くあり、人海戦術が必要となっています。労働力は主婦などのパート雇用が多く、家庭の事情や年間所得の制限要因などからフルタイムの労働には不向きです。また地域の高齢化が進んでいる場合には、高齢者中心のパート雇用となることも多く、高い作業能力もなかなか望めません。そのためフルタイム雇用の場合に比べ、パート雇用では人数をより多く揃える必要が出てきます。オランダや韓国など海外の施設園芸では、外国人主体の雇用により少人数で大面積の作業を行う形態がみられますが、これらとは異なる雇用環境と言えます。

 

人数の確保には、一定の労働人口が地域に存在する必要がありますが、過疎地でそもそも確保が困難な場合、都市近郊などで労働人口があっても競合する雇用先が多くある場合などが多くみられます。農業関係では都道府県の最低賃金程度の雇用条件が多く、競合先から見劣りします。また雇用環境が悪い場合には、「労働に来ていただく」環境になりつつあるのが実態かもしれません。

 

2.作業能力とモチベーション向上の難しさ

 

一般的に初心者の作業能力は、ベテランの1/2〜1/3程度といわれ、そのレベル向上には様々な指示や指導が必要となり、時間もかかります。新規農場で事前にトレーニングができない場合などは、一から作業を教える必要があり、立ち上げ時の作業遅れなどの混乱を招くこともあります。また立上げ時には作業手順や作業方法などが定まっていないことも多いため、指導のマニュアルもなく、混乱を助長することも多くあります。また指導する側の社員やパートリーダーの育成にも時間がかかるため、立上げの1年目というのは苦労が多く、収量や売上も高くは見込めないことが多いと思われます。

 

一方で、能力に応じた賃金や賞与などを支払い、モチベーションを高める方法が取られることもありますが、同じ地域の顔見知りの人たちの職場では個人差をつけることが難しく、嫉妬の原因にもなることもあります。個人別の作業時間や作業能力を機械計測、見える化する取り組みも最近では多くみられるものの、それらのデータをどのように活用するか、パート中心の雇用環境では問われてきます。最初が肝心で、雇用時に能力に応じた賃金体系を取ることを明確に伝えれば良いことかもしれませんが、どの地域や農場でも一律に可能とは言えません。

 

以上のように労務管理については決定打が無いのが現状と考えられ、一方で外国人技能実習生への期待と活用が増大しています。限られた雇用を有効に活用しつつ、能力向上の仕組みを整え、足りないところは外国人等で補いつつ、省力化の余地がある部分は技術開発や機械導入を進めるという、多面的な取り組みが今後も求められるでしょう。それ以外にも、安全で衛生的な作業環境、職場の雰囲気作り、作業等の改善へのパート従業員も含めた参加など、労務管理について成すべきことは数多くあると考えます。

 

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次の作物をどうする?

施設園芸や植物工場の事業者の方とのお話しの中で、「今は○○作っているが、次は何か良いものはないか?」ということが良く聞かれます。今の作物では満足がいかないのではなく、そこには将来の経営拡大に向けた前向きの意志があると思います。

中小規模で実績やノウハウを積み上げ、次のステップに進むのは、施設園芸や植物工場のオーソドックスな経営拡大のスタイルかと思います。その際に、同じ作物で規模拡大を図る場合と、新たな作物にチャレンジする場合があると思いますが、後者の場合は栽培技術や作業内容、販売方法などが異なることが多くリスクもみられます。しかし販売アイテムを広げることの有利さ、作業期間や出荷期間の分散と平準化など、取り組む価値もあると考えられます。


1.具体的な新規作物の取り組み

では具体的に、どんな新規の取り組みがあるかですが、トマト養液栽培生産者が新たに高設イチゴ栽培に取り組む例、ホウレンソウ養液栽培生産者が新たに高設イチゴ栽培に取り組む例、トマト養液栽培生産者が新たにレタス養液栽培に取り組む例などを存知あげております。

最初のトマトとイチゴの例では、都市部に近く直売や量販向けのトマト栽培をしていた生産者が、新規作物としてイチゴ栽培にチャレンジする例です。立地条件からイチゴの販売には有利性があり、販売時期の重複やイチゴの育苗手間があるものの、経営拡大にはつながると思われます。本体のトマト栽培に比べ小面積でのイチゴ栽培であり、栽培上のリスクも考えながらのスタートと思われます。

次のホウレンソウとイチゴの例では、この他にパイプハウスでの土耕ホウレンソウ栽培も広くやられている生産者が、経営拡大の品目としてイチゴを選択しています。ホウレンソウもイチゴも産地の部会があって市場出荷を行っています。最初の例もそうですが、すでに養液栽培の経験があり、基本的な栽培技術を身につけている例です。

最後のトマトとレタスの例では、新たにレタス栽培を行う法人が立ち上がって、そこに販売を中心としたメンバーとして参加しています。栽培技術は他のメンバーが中心に構築しており、本人は新規販売先の開拓や、生産と販売の調整などを行っており、さらに物流ルートの確保や物流費の圧縮のため、トマト、レタス、地域の他の作物を混載したロジスティクスの構築などにもチャレンジしています。

2.新規作物によるリスク低減と効率化

いずれの例でも、既存の栽培や販売でのノウハウを活かしての新しい作物への挑戦が行われていると思われ、ハイレベルの生産者でなければ簡単にはできることでは無いと考えられます。しかし、単一作物に頼る経営では、天候や病害のリスク、市場価格の変動のリスクを直接被る場合もあり、複数の作物を並行して栽培するメリットも多々あると考えられます。

なお、大規模な施設園芸経営体が露地栽培に参入する例、その逆で大規模な露地栽培の経営体が施設園芸に参入する例も見られます。大規模経営ならではの取り組みとして、選果出荷設備の共有化、作業者のローテーション化などが見られ、効率化にも寄与するケースもあります。こうした組み合わせも、今後のモデルとなる可能性もあると思います。

 

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大型台風と施設園芸

今年は大型台風の発生と本土通過が頻発し、施設園芸の温室や、太陽光型植物工場などに被害が発生しています。被害状況については各地の断片的な情報程度しかありませんが、進路や最大風速などから大きな被害があったことは想像できます。また何十年に一度という言われ方もされていますが、確率は小さくとも来年また同様な台風被害がないとも限りません。今後も大型台風に対して、どのような考え方で対処をすべきか、整理が必要と思われます。

 

平成29年台風5号(気象庁)

 

1.大型台風への対策の限界

 

大型台風に対して温室の強度を高め、被害を軽減することが一つの考え方としてあります。骨材の厚みや太さ、基礎の大きさ、補強材の数などで強度を高めることは可能ですが、温室への初期投資費用とのトレードオフとなって自ずと限界が見られます。いまた骨材も多くなり光を遮ることで生育への悪影響が懸念されます。台風対策の強化は、おのずと限度が発生するものです。

 

一方で強風発生の再現率の考え方があり、10年に1回の強風発生と、30年や50年に1回のさらに強い風の発生では、後者での対策がより強度の高い温室が必要となります。こちらも限界をどこまで捉えるかによりますが、近年の台風発生の頻度や強さを考えると従来の再現率の設定が今後も通用するかどうか、検討が必要となるでしょう。

 

2.現実的な大型台風への対策

 

温室の建設価格は東日本大震災以降、年々上昇をしており、さらに台風対策を盛り込むとなると初期投資の負担もさらに高くなり、施設園芸経営の圧迫要因となってきます。最終的には経営が成り立つ範囲での温室の強度向上による台風対策を考える必要がありますが、実際に強度を補えない場合には、保険によりカバーする考え方も必要となるでしょう。保険には農業界で一般的な農業共済と民間の災害保険があり、いずれも温室やビニールハウス、栽培施設を対象としています。これらの利用により災害時の金銭負担が軽減されるとともに、温室の強度的な仕様も軽減されます。

 

自然災害の中でも台風の到来は予測がある程度は可能であり、それに応じた対策も実施可能です。特に被害を受けやすい開口部(天窓や側窓等)の補強対策、破れや隙間対策を入念に行うこと、換気扇の利用により温室全体に陰圧をかけ強風により温室が持ち上げられないようにすることなど、基本的な対策を励行しなければなりません。これらについては、静岡県が「施設園芸における台風・強風対策マニュアル」として詳細に整理し、公開されていますので、ご一読をお勧めします。

 

3.人工光型植物工場と大型台風

 

西日本のある人工光型植物工場では、先日の台風21号の通過時に最大風速40m以上が吹いた地域にありましたが、直後に伺った話では、まったく影響を受けていませんでした。瞬間的な停電はあったようですが、復帰も自動化されており、植物生産への影響は皆無でした。ただし、同じ台風21号の通過時に長時間の停電が発生した地域もあり、それらへの対策も検討すべきでしょう。設備全体をバックアップする非常用電源は大容量となるため準備は難しいと思われます。植物工場施設自体は断熱構造のため、外部の温度上昇などによる植物体へのダメージは受けにくいと思われます。一方で停電時間に応じて、設備が停止した際の植物の生育や設備への影響の程度を事前に推計し、状況に応じた対策案を計画すべきでしょう。

 

参考文献:施設園芸における台風・強風対策マニュアル(2012)、静岡県

 

 

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猛暑と今後の高温対策

今年の7月から連続した猛暑には、植物も人間も疲弊したと思います。これからも同様な猛暑が通例化することを前提として、農業、施設園芸、植物工場に取り組む必要があるでしょう。猛暑による発生する問題は、立地条件、栽培方法、施設設備などの物理的な工夫により解決可能なものも多くあります。これらを整理して今後の対策とすべきでしょう。

 

1.立地条件による高温対策

 

立地条件を選べる場合には、標高の高い高冷地や、海岸沿いの地域を検討すべきです。最近は高冷地とでも日中の最高気温は平地とあまり変わらない場合も多いのですが、夜温は確実に下がり熱帯夜もないことが有利と言えます。また海岸沿いも水温が高く推移しなければ夜温が低くなる場合が多く、海からの風が吹き込む立地であれば日中の室温低下も期待できます。事前に地域の気象条件を公開情報や気象情報サービスなどから入手し、高温の程度を把握する必要があります。また実際にその地域を訪れ、地元の方から情報を入手することも大切です。

 

2.作型や栽培期間の調整による高温対策

 

高温のピークの期間を避け栽培を行うことが高温対策の基本と考えられます。8月のお盆過ぎ以降は暑さも柔ぐため、お盆前後に作物を定植し、それ以前に栽培終了と作物の撤去や清掃といった作替え作業を完了する必要があります。作替え作業自体は高温のピーク期に当たることも多いため、遮光や細霧冷房、通風など十分に行い作業環境を整える必要もあります。

 

作型を複数設け、高温ピーク期を避ける作型と、そうでない作型を組み合わせ、収穫の連続性を保つ考え方もあります。その場合、高温ピークを完全に避けられる作型を用意してリスクを低減し、収穫を確保する必要があるでしょう。

 

3.物理的な高温対策

 

環境制御技術の範疇となりますが、各種の高温対策のための資機材の利用があげられます。温室の構造面から言えば、通気性の良い構造が求められ、具体的には天窓や側窓の開口部が大きく、換気性能の高い温室が有利となります。大型の換気扇による強制換気を行う場合もあります。さらに細霧冷房装置などの気化冷却を行う場合もありますが、この場合も温室の換気性能を確保し、気化条件を保つ必要があります。

 

太陽光の直射を遮るための遮光装置の利用は一般的で、そのための遮光資材、遮光カーテン類の製品も毎年種類が増えています。値段は張りますが、温室の内張カーテンを二層とし、うち一層を遮光率が極端に高くない資材を使い、適度な遮光を行う形が見られます。また最近では、温室の外張資材(ガラス、フッ素樹脂フィルム、農POフィルムなど)に、遮光剤を塗布する方法が一般化しつつあります。遮光剤は石灰質を中心としたものの他、赤外光や遠赤外光を吸収して熱線を遮断するタイプのものもあり、光合成をなるべく妨げず、高温を抑制する資材として利用されています。毎年、塗布する必要がありますが、外部遮光を行うため、内張の遮光資材よりも暑熱効果が高いと言えます。

 

気化冷却では、植物からの蒸散を利用する方法もあります。一定量の葉面積が必要となりますが、換気や遮光カーテン、遮光剤と併用しながら、蒸散量を確保する(=潅水量を十分に確保すること)だけで、温度低下が期待できす。外気並みもしくは外気温マイナス数度の冷却効果が多くみられます。

 

4.人間に対する高温対策

 

以上のような様々な高温対策が考えられますが、選択枝に場合とならない場合、費用対効果が期待できる場合とできない場合など、事前に検討する必要があります。なお植物だけでなく温室内で作業を行う人間に対する高温対策も労働安全上、大変重要であり、細やかな管理と具体的な対策が必要です。管理面では、健康状態の観察が前提にあり、就業時間のシフト(早出、遅出)による高温回避、頻繁な休憩、水分や塩分補給の確保等が考えられます。具体的な対策として、換気や遮光、通風や気化冷却による温室温度の低下、ファン付き作業着の利用、作業者に密着した扇風機やスポットクーラーの利用、などがあげられます。また温度や温熱環境(WBGT等)等のモニタリングとアラームの仕組みも、事故の発生予防には有効となるでしょう。


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研修「環境制御に必要なコンサルタント」を行いました

先日、千葉大学柏の葉キャンパスにあるNPO植物工場研究会にて、植物工場に関する指導者育成研修の講師を行いました。2日間の研修コースでは環境制御技術について5名の講師が講義を行いました。私は「環境制御に必要なコンサルタント」というテーマをいただき、大規模施設園芸などで必要とされるコンサルの概要を報告しました。

 

1.大規模施設園芸とコンサルティング

 

大規模施設園芸や植物工場の導入と立上げ、その後の生産向上の各フェーズでは、様々な検討事項があって、すべてを網羅することは一人では難しく、専門家のアドバイスを必要とするのが実態です。しかし国内では大規模化の歴史も浅く、導入時の設計を支援するようなコンサル会社も従来はありませんでした。また立上げ後の栽培指導についても、普及指導員にはそもそも大規模施設園芸の経験や知見がある方もほとんどいない状況です。

 

ではどうしたらよいかですが、一つは小さく生んで大きく育てること、つまり中小規模での施設立上げと生産販売を経験した後に、スケールアップを図ることがあります。規模によらず共通することも多いため、中小規模での経験が大規模においても役立つことが多くあります。一方で大規模特有の問題も多く、特に大勢のパート雇用を必要とするため、それらの人材確保と能力やモチベーションの向上が、農場の生産性や販売力に大きく影響します。

 

栽培技術の中でも中核となるのは、植物生理にもとづく栽培管理技術、すなわち光合成と日射、水、CO2の吸収と同化産物の転流や果実肥大を促進する技術、それを補助するための環境制御技術、すなわち植物や気象の状況に合わせ温湿度やCO2濃度を最適に保つ技術、この2つがあります。これらの点については施設の大小にかかわらず共通な点が多いのですが、実際は大規模特有の設備や制御機器も多く、それらの操作や利用の考えについても専門家の助言が必要とされます。

 

与えられたテーマは環境制御とコンサルについてでしたが、実際は大規模特有の人やモノについての管理技術や、市場に頼らない販売計画の策定、加えて植物生理にもとづく栽培技術と環境制御技術など、多くの要素が大規模施設園芸の成功には必要という内容になりました。

 

2.日本で必要とされるコンサルティング

 

受講者の方からの質問に、オランダではコンサルティングも専門性に応じた分化があるが、日本ではどのような形が必要とされるのか、といったことがありました。確かにオランダでは経営、栽培技術や環境制御技術、IPM、エネルギー管理などの専門に分かれたコンサルティングが盛んです。また施設園芸経営への融資を行う金融機関でも様々な技術データや経営データを評価するような具体的な審査が行われています。コンサルティングの市場自体も大きく、専門のコンサル会社(Delphy)ではオランダで200名もの社員で業務を行っています。

 

一方、日本ではここまでのコンサル市場は無く、また金融機関と施設園芸のつながりも強いものはなく、さらに専門分化したコンサルタントも存在していないと思います。むしろ経営から栽培技術、環境制御技術など広くカバーする必要があるように思われます。大規模施設園芸の事業者といっても売上規模からすると数億円程度が多く、中小企業であり、社内のスタッフが専門化しているものでもなく、コンサルタントにさまざまな指導を依頼するケースが多くなるはずです。また、日本特有の雇用環境としてパート雇用を中心とした多人数によるシフト体制があり、おのずと労務管理のウエイトが高くなります。労務管理と栽培管理のバランスが取れないと、収穫できるものもできなくなってしまう問題点があり、コンサルの対象も労務管理まで広がる可能性もあります。

 

以上のように、環境制御のコンサルについてというテーマではカバーしきれない課題が大規模施設園芸の現場には存在しており、特に立上げ期において施設の導入計画を含めた幅広いコンサルティングが有効な場面が多くなると考えられます。このことについては、改めて書きたいと思います。

 

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外国人在留施策と自動化省力化

政府が新たな外国人就労の在留資格の創設に向けて動いています。報道では、来年4月の創設に向け検討を進めているとのことです。国内労働市場を外国人に本格開放という政策の転換点と捉えられ、農業関係者も注目していると思います。

 

1.技能実習制度と在留資格制度


外国人の受入業種として、国内の人材確保などを行ってもなお、存続、発展へ外国人材の受入が必要な業種として、農業、介護、建設、宿泊、造船の5業種を念頭にさらに拡大を検討とされていますが、まだ決定段階ではありません。農水省側は農業での受入を可能とするよう主張を進めているようです。

農業の場合、すでに多くの外国人が技能実習制度によって来日し、施設園芸を含めた場面で技能実習を行っていますが、年限が限られ実習終了後は帰国する必要があります。在留資格の創設によって、実習終了後に就労を可能とするよう農業団体からの要望も出されており、外国人を戦力とした労働環境が徐々に整備される可能性も考えられます。制度の検討段階であり、具体的な議論は表に出ていませんが、近いうちに在留資格の付与対象や、就労制度などが明らかになると思われます。

いずれにせよ、技能実習制度は存続し、それを前提とした在留資格制度の創設に向かうと思われ、日本語や技能の習得義務が担保されると思われます。その点では単純労働の受入制度とは異なり、一定の制限がかかるため、外国人労働力の完全開放とはならないでしょう。

以前のblogでも記載しましたが、韓国でも東南アジアからの労働力を施設園芸で活用しており、日本の技能実習制度のような規制も無く、外国人にとっては働きやすい環境と言えるかもしれません。日本が今後も安定的に外国人を受け入れられるかは不透明な面がありますが、在留資格制度が整備されれば長期間の労働が担保され、受入も容易になる可能性も考えられます。

もはや外国人労働力を積極的に受け入れなければ国内農業の維持は不可能である、という論調は産地や農業団体側において強くみられます。危機感は相当なものです。秋の臨時国会に関連法案が提出され、来年4月の制度創設が政治日程とのことで、これから議論は急ピッチで進むものと思われます。

 

2.省力化ニーズと外国人労働力


省力化や自動化の技術開発の進展と外国人労働の受入れは、トレードオフになるという論調も良く聞かれます。省力化のニーズが外国人労働力供給によって減退する可能性があるためです。どちらか一方での農業現場の課題解決は難しいでしょうし、政策は両にらみで考える必要もあります。相手国の人材に供給に対するリスク管理も怠らないようすべきであり、相手国の政治、外交、経済、安全保障面などが人材供給に影響を及ぼす可能性を考慮すべきです。一方で研究開発投資を怠たるべきではありません。

 

農業分野でのロボット開発や自動化のための技術開発は、すでに機械化が進み需要も大きい水田作や畑作の分野で先行しています。既存のトラクターなどの農業機械にGPSやセンサー類、自動操舵ユニット等をアタッチメントとして追加し、自動走行を行う技術はすでに普及段階に入りました。メーカーも先行投資を進めていたと思います。機械化や自動化が遅れている施設園芸分野でのロボット導入は、接ぎ木ロボット、収穫ロボット、搬送装置などで技術開発が以前より行われ、一部は実用化がされていますが、水田作や畑作分野に比べると明らかにパイも小さく、実用化のペースも遅い状況と思われます。センシングとAI、機械化の組み合わせなどで対処する行動な自動化技術を狙っている分野かと思いますが、施設園芸でも、ほ場の清掃等の単純作業、誘引などの力仕事のアシスト機能など、自動化の実現性の高い要素もまだまだあるように思われます。

 

 

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