環境制御とAIの利用

先日、ある大規模農場を訪問し、経営者の方と環境制御についての意見交換をしました。温度、湿度ともにセンシティブな管理が必要な作物で、特に乾燥によるストレスが加わらないよう、湿度の維持には注意を払われているようでした。そのために環境制御装置の設定を状況に応じて細かく調整している様子でした。

 

○温室の温度管理と湿度管理のテクニック

 

ここでの湿度は一般に用いられている相対湿度のことです。気温が上昇すれば相対湿度は下がるため、温室の温度管理と湿度管理は常にリンクしていると言えます。また温室内の空気中の水蒸気の多くは植物からの蒸散によるもので、相対湿度を保ちたければ、換気窓の開閉やカーテン開度を調節して温度とのバランスを取りながら、外部への水蒸気拡散を抑えることになります。

 

また植物からの蒸散による気化熱冷却効果によって、高温対策をする場合もあります。この場合は冷却効果を高めるため換気を高め、さらに遮光や送風と併用する場合もあります。

 

また冬期で温室内が密閉状態となり、蒸散により相対湿度が上がり病害発生リスクが高まる場合には、暖房による相対湿度の低減で、ある程度しのぐことができます。さらに相対湿度を低下したければ、冬期であっても換気を少し行って乾燥した外気を導入する方法もありますが、エネルギーを多用する形になります。

 

○環境制御と設定の実際

 

以上の例は概略的なことであって、実際は、環境制御装置での暖房動作や換気窓開閉、カーテン開閉などの設定値を変更して行うものです。これらは1日を何時間帯かに分割して、おのおの機器の動作の設定を行いますが、設定値の数が多くその度にすべて設定する手間を省くため、データセットとして保存、呼び出しすることもあります。

 

また天窓やカーテンの微妙な開閉によって温度や湿度をバランス良く制御したい場合には、外部の気象変化を受けて設定値を都度修正変更する場合もあります。その場合には、1日に何度も端末操作をし、その後の環境変化を確認する作業を行うことになります。

 

○環境制御とAIの利用

 

以上のように、温室内の温度や湿度の管理の多くは、暖房機、換気装置、カーテン装置などを通じ行って、機器動作そのものは自動化がはかられています。しかしこれらの機器動作を制御する環境制御装置の設定そのものの多くは、人間が判断し行っており、省力化がされているとは言いがたいでしょう。

 

実際の設定は、その温室の環境特有のものであり、また気象条件や植物の生育状況に応じての判断があるため、かなり複雑なプロセスで行われ、暗黙知化していると言えるかもしれません。このプロセスを機械学習により自動化を進めることは、何年か分の膨大なデータ蓄積をもとに可能なように思います。自動化までされなくとも、アシスト機能として設定プランを機械が提示することも考えられ、熟練者でなくとも、そこそこの管理を行える仕組み作りに役立つかもしれません。

 

世の中にはすでにAI利用の養液土耕制御装置や、生育モデルをベースとした設定値を自動調節する環境制御装置が実用化されています。技術的なハードルは年々低くなっており、温室管理のオートメーション化は加速する予感がします。

 

○AI導入に必要な視点

 

ここで述べたような温度や湿度の調整のテクニック的なことは、施設園芸の教科書やハンドブックには、まったく書かれていません。環境制御装置のマニュアルなどには多少は書かれているかもしれませんが、どうでしょうか。

これらのテクニック自体が形式知化されていないと言えそうなので、テクニックの分類や、そこでの入力変数、設定変数や目的変数の整理から入る必要がありそうです。その上で、目的変数の調整範囲を目的に応じて定めるなど、現場の視点での整理が必要に思います。

 

機械学習を実際に操作した経験はありませんが、ただ単にビッグデータをAIに喰わせて最適解を得ましょう、というほど単純な話ではないことは想像が付くわけです。

 

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