施設園芸の業務システム

先週、宮城県で施設園芸関係のセミナーがありました。イチゴの産地県で、県内外の生産者や研究者、指導者からの発表時が多く、有意義な内容であったと思います。発表の多くは栽培に関するものでしたが、ひとつだけタイトルにある業務システムの開発事例についての発表がありました。

1.イチゴの収穫〜出荷管理システム

1ヘクタール弱の農業法人の若手経営者の方の発表で、業務の効率化のためのシステム導入の報告でした。最初にイチゴ生産での作業時間の分析結果が示され、ほぼ9割の時間が収穫以降の作業についやされている、ということでした。つまり栽培に関しては、たったの1割であり、残りは収穫から出荷までの後工程ということになります。この経営者の方は、分析結果から導いた方針として、後工程の業務を効率化して、栽培に関しての時間を集中して取れるようにしたいとのことでした。まだまだ収穫量や品質を上げていきたい、そのため業務効率化を進める、という経営方針です。

 

2016年12月の農業法人のイチゴ


業務システムでの入力は、午前中の圃場での収穫時に、収穫コンテナが一杯になったところで作業者別にタブレット入力をするものと、選果作業場でのパック詰め時に、一つイチゴのパックができたところで規格別(M,Sなど)にタブレット入力するものがあります。圃場での収穫情報からは、選果場でのパック詰め作業量がどの程度かを見積もることができ、当日の作業終了時刻まで読めるようになったそうです。このことで、時間内に作業を終わらせパートさん達が早く帰宅できるよう、気持ちの切り替えが可能になったようです。また箱詰め作業情報からは、出荷先ごとの作業進捗状況がリアルタイムで分かり選果場にいるメンバーにも共有化されて、こちらも目標のパック数に向けて全員で作業を進める環境が確保できたようです。

2.シンプルで人間中心の業務システム

この業務システムの面白いところは、人間を中心に置いたところだと思います。手押しでのタブレット入力というのは、少し時代遅れかもしれません。しかし入力はワンタッチのため、リアルなデータがクラウドに反映されることに変わりなく、また入力結果も手元で確認でき、実用性は高いと思います。

データの2次加工もされ、受注情報とパック詰め情報にもとづく出荷伝票作成や、等級別の出荷統計、等外品の発生統計などが可能です。簡単な2次加工ですが、データの二度打ちもなく、業務システムとしてはシンプルかつ実用性があるかと思います。この程度ならすぐにできると思われるかもしれませんが、この程度のこともシステム化がされず手作業が主流なのが施設園芸の現実なのかもしれません。AIやロボットの開発用前に、日常業務の見直しとシステム化の検討も必要と思います。

 

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