飛騨高山の小屋垣内農園さん(ホウレンソウ、レタス類、イチゴ、中玉トマト栽培)

岐阜県高山市の小屋垣内農園さんに伺いました。代表の小屋垣内(こやがいと)浩之さんは、前職の農業資材メーカーの顧客で、養液栽培装置や育苗装置を導入していただき、今でも利用をされている古いユーザーの方です。また日本養液栽培研究会の会員さんで、養液栽培生産者としても著名な方であり、平成28年度全国優良経営体表彰では農林水産大臣賞を受賞されています。

 

高山市には初めての訪問で、小屋垣内さんにホウレンソウ、サラダホウレンソウ、レタス類、イチゴ、中玉トマトの栽培施設、育苗施設を案内していただきました。

 

高山市の高台に位置する単棟、連棟ハウス群

 

これだけ多品目の栽培をされている生産者は、全国的にも珍しいと思います。ご自身もパセリ、セロリ栽培に始まり、様々な野菜栽培を経験されて来たとのこと。ベテラン経営者のお話を伺う貴重な機会でした。品目ごとに責任を分担をする体制で経営をされており、ご本人が露地のホウレンソウ、奥様が施設のサラダホウレンソウとレタス類、長男が中玉トマト、パートさんがホウレンソウの選別出荷を担当されていました。施設園芸と露地野菜を組み合わせ、規模拡大とリスク分散をはかられてきた経営について、いろいろと学ばせていただく機会となりました。

 

 

サラダホウレンソウ・レタス類の水耕栽培

 

施設は高冷地に立地しており、近年は少なくなったそうですが、一晩で軒までの積雪の日もあるとのこと。単棟の大屋根型鉄骨ハウスでのサラダホウレンソウ栽培を、NFTによる水耕栽培でされています。平成初期からの栽培で、施設や資材のメンテナンスが十分に行われていました。屋根の被覆資材にはクリアなポリカーボネートの波板が新しく張り替えられ、内張カーテンも最近張替えがされ、下層カーテンは空気膜二重構造のものでした。それでも厳寒期の外気温は−10℃に低下する時もあって、5℃設定でも暖房機は動き続けるとのこと。そうした厳しい条件での周年栽培では、施設のメンテナンスは欠かせないものと思います。他にも経年で収縮した水耕栽培の発泡資材を新品と旧品を組み合わせサイズのズレが起こらないようしたり、渇水などを検知して警報を送る回路を設置したりなど、様々な工夫が行われていました。

 

鉄骨単棟ハウス(屋根材:ポリカーボネート製)でのNFTによるサラダホウレンソウ等の栽培

 

 

レタス類は多品目で、奥様が栽培を担当され、ご本人が高山市内のレストランなどの営業をされていました。この間のレストランの注文は減っていたものの、口コミで広がっており、新規顧客も増えているとのことです。レタス栽培を行うハウスはフェンロー型の連棟で、融雪のための温湯配管も装備されていました。柔らか目のレタス類を栽培しているため、この季節でも常時遮光を行うとのことです。

 

フェンロー型ハウスでのNFTによるフリルレタス栽培

 

 

他にも、人工光型の育苗装置がサラダホウレンソウとレタス類用に合計3台設置され、こちらも照明器具や空調装置のメンテナンスが行われ、長い期間の利用がされていました。

 

 

発電機による電源バックアップ体制

 

ハウス関連や栽培装置、育苗装置など、多くの機器類が設置されており、過去に台風時などの停電が起こり栽培や出荷が停止したこともあって、発電機による電源バックアップを入念に行われていました。全部で4台の発電機を導入して万全な体制を作られていたのが印象的でした。お見せいただいた軽油燃料のエンジン式発電機は、三相と単相の両出力のあるものでした。これは三相の動力電源だけ供給しても制御用の単相電源がなければ機器類を動かすことができないため、最近発売された両出力型の発電機でカバーしていました。栽培施設だけでなく、集荷場の電源もカバーしており、予冷庫や調整・包装の機器類もカバーしていました。工夫して発電機を稼働させれば1週間程度の停電にも耐えられるとのことで、万全の体制と言えると思います。

 

三相と単相の両出力を持つエンジン式発電機

 

 

パイプハウスでのホウレンソウ土耕栽培

 

高山市は夏秋トマトやホウレンソウの産地で、パイプハウスでの栽培が多い地域です。前述の装備化が進んだ施設栽培以外にも、合計70棟以上、計約1.7haのパイプハウスで、ホウレンソウを年5作(3月20日播種開始〜11月20日収穫終了)体系で行われていました。毎日、数棟ずつの収穫と播種を繰り返し、圃場作業はほとんどが機械化されていました。最も人手が必要な収穫後の調整作業では、下葉取りなどの機械を導入していますが、人間による調整なども必要とのことで、現場にマッチした機械の開発が一層必要ということのようです。

 

高台にあるパイプハウスには強風が吹きつけることがあり、筋交いや陸梁による入念な補強が印象的でした。妻面は1mm目合いの防虫ネット被覆で、いわゆる雨よけハウスでしたが、それでもハウスの補強対策をしっかり行うことで経営の安定につながっていると感じられました。

 

防虫ネットで妻面被覆をしたパイプハウスでのホウレンソウ土耕栽培

 

 

外国人技能実習生と今後の農業経営

 

現在、ベトナムからの実習生の女性が6名、パート従業員とあわせて10数名が在籍していました。ベトナム人は韓国でも労働者として多く働いており、日本国内でも実習生が増加しています。ここでも従業員の約半数がベトナム人になっていて、コミュニケーションなどの面でいろいろご苦労をされているお話しも伺いました。

 

(ここからは私見です)

 

規模拡大が言われる中で、必要な労働力の確保には今後もさまざまな苦労が伴うと思われます。技能実習生として今後も安定して日本に渡航して働く外国人が確保できるかどうか、人数の面、働き方と処遇の面など、受け入れ国として考えなければならないことがあるように思います。小屋垣谷さんも韓国でのベトナム人労働者のことを話されていましたが、私も経年で、韓国の施設園芸を視察する中で、限られた外国人労働者で大規模施設を経営する実態を見て、日本の状況とは異なっている印象を受けてきました。韓国でも外国人労働者の受け入れ面で、新型コロナウイルス感染拡大の影響が生じているはずです。そのような状況も、改めて世の中が落ち着いてから、よく調べる必要があると感じた次第です。

 

また人手がネックになる施設園芸の経営には、まだまだ機械化の余地も残されています。スマート農業に世の中がシフトしていく中で、現場の改善と合わせた機械化や人との協調など、やるべきことは多いと思います。

 

農場をご案内いただき、施設設備や労務管理など、幅広くお話をくださった小屋垣内さんには、この場にて感謝を申し上げます。

 

 

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください

 

by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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