干拓地の施設園芸

先日、九州のある農業生産法人に伺い、その足で干拓地を車で通りました。古くからの干拓地でしたが、大区画に整備がされ、一面に露地作物が栽培されていました。施設園芸も一部で行われており、見渡す限りパイプハウスが並び、中ではレタスが栽培されていました。ハウス棟数まで数えることは出来ませんでしたが、この干拓地の一区画は確か6haと伺ったことがあり、ざっと4haくらいの単棟ハウスが並んでいる様に見えました。国内有数規模であると思います。

 

干拓地のパイプハウス群(レタス土耕栽培中、2月中旬撮影)

 

先月は韓国へ施設園芸団地の視察に伺いましたが、合計約100haの単棟パイプハウスが一ヶ所に建設され、同一品種でのイチゴ高設栽培を行っており、東南アジアへの輸出も行われておりました。韓国では蛇行する川の内側に造成された広大な区画にハウス群がありましたが、この九州の干拓地も潜在的にはそうした大規模施設園芸団地に進化する可能性はあるように感じました。

 

干拓地施設園芸でのスケールメリット

 

野菜の価格が低迷する中で、施設園芸への転換と投資にはもちろんハードルはあると思いますが、スケールメリットを設備投資や作業効率、販売戦略、物流構築などに活かせる可能性もいろいろと考えられそうです。最近は運賃の上昇が激しく、遠隔地での物流条件は厳しさを増していますが、大規模化での物流面では、搬入資材にしても、出荷もしても、廃棄物搬出にしても、積載効率の向上や、他の法人などと組んだ一層の効率向上が期待できるかもしれません。また作業面では、相変わらず手作業が中心の施設園芸生産の中で、搬送作業の合理化はスケールメリットを活かせる部分かと思われます。その他、インフラ面では大規模な雨水貯留槽の設置、選果貯蔵施設の集中化なども期待できそうです。

 

干拓地施設園芸の環境制御

 

九州の干拓地での施設園芸であれば、加温に必要なエネルギーも少なくて済み、またハウスの換気開放期間も長く、高度な環境制御の必要性が幾分低いとも言えます。そのため簡易な設備と低投入型の施設園芸が可能な地域とも言えるでしょう。一方で雇用維持のため、周年作業体系も組む必要があることから、夏期高温期の栽培環境や作業環境の構築が大きな課題になりそうです。これは最近メジャーになりつつある遮熱剤の塗布や、ハウス換気性能の向上、気化冷却設備の導入などを組み合わせることで、一定の効果は期待できます。この点にどれだけ設備投資や追加投資をするかが、ポイントとなるように思います。

 

大規模化と雇用確保、高温対策

 

雇用の確保が、どの施設園芸産地でも重要な課題となっている中で、大規模化のデメリットはこの点に明確に出るかと思います。特に周辺人口が少ない場合は、外国人技能実習生の活用が不可欠になっています。ただし、外国人に頼る経営が今後も続くかどうか、不明な点もある訳で、やはり従業員にとって働きやすい環境作りもこれからのポイントになるかと思います。スケールメリットを生かした作業環境、労働環境の向上ということになりますが、ハウス内作業時の送風や冷却、休憩場所の確保、屋内作業の集約化、作業者の健康状態の把握と管理など、多様なテーマがあるでしょう。労災防止のため建設土木分野ではこうした取組みが一歩進んでおり、見習う必要もあると思います。

 

施設園芸の多様化と干拓地施設園芸

 

大規模化と言っても、単一作物を大量に生産出荷するだけでは自ら値崩れを招く可能性もあるでしょう。多品目による複合経営が自ずと求められ、いくつかの作型と作業ピークを上手に組み合わせることが経営の成否に影響するものと考えられます。外部環境である人材供給と物流の制約を、複合経営での工夫や生産性向上によって乗り切ることができれば、干拓地の大規模施設園芸の将来性はまだまだあるように感じた次第です。

 

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください

 

by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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