「無人化農場」は必要か?

人手不足が深刻になり、パート従業員の募集をしても予定の人数がなかなか集まらない話しは施設園芸でも良く聞かれます。人手に頼らざるを得ない作業の多い施設園芸のボトルネックとなるのが人集めであり、また集まった従業員の作業能力向上です。未経験の従業員の作業能力は一般的に経験者の半分程度と言われており、特に農場の立ち上げ時には人も足りない、作業能力も足りない、さらに作業計画や作業指示もままならないという三重苦の状態が起こりやすいとも言われています。

 

無人化農場のイメージ

 

施設園芸の現場では、少ない人数で農場作業を回すように様々な工夫や取組がされており、作業の標準化、5Sの励行、ICTを利用した作業管理システムの活用などがあり、ようやく製造業の現場に近づいて来た感もあります。しかし人による作業を前提としたものではおのずと限界があり、また人が集まらない状態となると手の打ちようがありません。外国人技能実習を活用が施設園芸で進んでいることも必然かと思いますが、国際的な賃金格差の低下や、日本の賃金水準が相対的に低下傾向にあることから、外国人の来日と雇用について将来的な見通しも不透明な部分もあるかと思います。

 

製造業並みに機械化、自動化、省力化が進み、施設園芸の生産現場に人がいなくなる日が果たして来るものか、その対策として無人化を前提とした農場について考える必要があるのではと思います。生長し形が変わり、また環境の悪化でダメージを受けやすい植物を扱う施設園芸を、製造業と同列に扱うには無理な点も多いと思います。そこをあえて考えてみる、ということになります。

 

 

果実が露出したキュウリつるおろし栽培

 

画像は、果実が露出していつキュウリつるおろし栽培です。葉かきを十分行って株元の風通しを良くし、果実の視認性も高めることで収穫作業もやりやすい状態と思います。そして農場におじゃましキュウリの姿を見て、夜間に収穫ロボットが畝間を走行し果実を切ってコンテナに詰めて回る光景を想像しました。この農場の畝は100mもあって収穫作業を行って帰って来るのに何時間もかかるはずです。この長い畝をロボットが何台か分散し走行して収穫を行い、キュウリが満載されたコンテナを集積場に置きに戻り、また次の収穫に向かうことを誰もいない夜間にもくもくとこなすイメージです。収穫を容易にするため、葉かきも自動で行って残渣も清掃して回るロボットも別動隊として走行しています。あるいはロボット同士が協調動作をし、葉かき後に露出した果実を別のロボットが見つけて収穫を行うこともあるかもしれません。

 

葉かきと収穫だけであれば、この画像を元におおよそのロボットの動作がイメージできると思います。実際は果実と茎や他の果実が重なったりして、画像では判別できないケース、判別できても収穫動作には至らないケースなど、例外処置も数多く発生するでしょう。そうなると動作の歩留まりが低下し、ロボットの稼働率も向上せず、また人間の手作業による補佐も発生してしまうことでしょう。無人化農場の実現のためには、そうした課題をロボット開発とは別の視点で改善する必要がありそうです。

 

無人化農場への耕種側からのアプローチ

 

ロボットの動作と人間の手先作業の動作を比較すると、動作の許容範囲、作業上の調整範囲などは人間の冗長性は圧倒的に大きいと言われています。許容範囲の狭いロボットの動作では、いずれ人間による補佐が発生して実用化に結びつかない可能性が高くなるでしょう。歴史の長い接ぎ木ロボットの開発でも同様な課題があって、台木と穂木がサイズ的に合う範囲がロボットで接ぐ場合は狭いため、苗質を揃える必要があるということです。これは栽培側、耕種側からのアプローチと言えるでしょう。最近ではサイズが多少揃っていない場合でも、伸縮性のテープを使って接合面をギュッと縛るようにして止める方式も開発されており、ロボットにも冗長性を持たせる技術も生まれてはいます。

 

接ぎ木ロボットにおける冗長性の課題は、収穫ロボット、葉かきロボットなどでも同様にあると思われます。収穫の適合範囲を広くするため、斜め誘引を行い果実同士の重なりを少なくする方法、小葉に仕立てることで葉かき作業をしやすくする方法、節間を長く持たせ様々な重なりを少なくする方法、様々なアプローチが考えられます。またロボット走行をスムースにするための通路幅やコーナーの余裕なども、農場全体のレイアウトを調整することで保持できると考えられます。

 

いずれの方法も、耕種側からすれば従来のやり方を改めてロボットに合わせられたと感じられるかもしれません。しかし従来と同じ方法や環境において無人化農場を実現することは、おそらく不可能と思います。耕種側とロボット側の歩み寄りも必要であり、さらに歩み寄りを超え共通の目標に向けた協業に進めば実用化にも近づくのではないかと思います。

 

無人化農場の実現に向けて考えるべきこと

 

収穫と葉かきという、作業に占める割合が高いものに絞って考察をしてみましたが、その他にも搬送作業や管理作業(誘引、芽かき等)など多くの作業があります。また人間が発見し対処している病害虫防除についても、観察と伝達という作業があってのことで、そこでも無人化の余地はあるものと思います。

 

無人化というコンセプトはあまり語られることはなかったかもしれません。しかし人がかかわらないという前提で農場作業を進めるにはどうしたら良いか?という視点で、レイアウト、品種、栽培方法、仕立て方、果実品質、葉面積など、ゼロから見直してみれば、開発のポイントが浮き出てくる可能性もあると思います。夢物語に終わらせないために、柔軟にこうしたことを考えるべきと思います。

 

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください

 

by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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