大規模施設園芸の次の展開

大規模施設園芸の運営や経営についてのフォーラムを開催していました。ヘクタール規模の施設を数年かけ立ち上げてきた法人の様々な事例の紹介があり、また終了後の交流会でも次の展開についての様々な意見を伺うことができました。

 

大規模施設園芸についてのフォーラムの開催

 

大規模施設園芸の運営では、数十名から百名単位での雇用があり、人集めとその育成、効率的な働き方など、従来の施設園芸では見られなかった新たな課題が発生しています。栽培技術だけでは解決できない大規模経営での課題についての様々な対処について、有意義な報告や意見交換がみられました。

 

大規模施設園芸での管理者能力

 

栽培管理や収穫の自動化が遅れている施設園芸では人の手に頼ることが多く、労働集約的な側面が色濃くあります。これは稲作や畑作との大きな違いで、人的資源に対する投資やフォロー、ケアが重要な業種であると考えられます。また最低賃金の上昇や地域的な労働不足によって、他業種との競合が進み、なかなか人手が集まらない状況が顕著になっており、労働生産性向上が一層求められ、さらに働く側からの要求にもとづいた職場環境作りも必要とされています。

 

フォーラムで報告のあった法人経営体の多くがゼロからのスタートであり、管理者側も作業を行うパート従業員側も施設園芸での農作業自体に不慣れな面が多く、当初は様々な試行錯誤があったようです。作業が安定化するまでには時間を要し、作業の標準化や体系的な教育などの確立には数年がかかっています。その数年の間にパート従業員の技能を向上させ、また指導や管理を行う側も管理能力を身に付け成長する必要がありますが、フォーラムでは管理側の成長についての報告がいくつか見られました。

 

数ヘクタール規模の大規模施設園芸では数名の管理者が必要で、ブロック分けをし分担する形になります。そこでの管理の標準化や平準化がポイントになるようです。管理者間での情報共有やノウハウの共有が円滑となるよう、施設レイアウトも標準化したり、作業情報や環境情報を一元管理できるようなハードソフトを整備することなどがあげられました。管理者は社員として採用され、栽培技術を身に付けながら作業管理技術も身に付ける必要があり、栽培、植物、環境、作業といった様々なデータを扱う職種と言えます。総合的な情報管理能力と判断能力が求められますが、最後はパート従業員に対しての指示や指導に落とし込む必要もあり、コミュニケーション能力も求められます。フォーラムでは、管理者同志のグループ活動での成長についての報告も見られました。孤立した状態での成長はなかなか難しいことが伺え、お互いに切磋琢磨し、励ましあうことも必要と思われました。

 

大規模施設園芸の次の展開

 

フォーラム終了後の交流会での専門家との意見交換の中で、このような管理者の育成に成功することで、次の展開へが容易になることがあげれられました。ゼロから大規模施設を立ち上げる際には管理者の存在が重要であって、その経験を積んだ社員の有無がキーポイントになるということです。おそらく立上げ業務にはマニュアル化できる面とできない面があって、特にパート従業員とのコミュニケーション能力については、現場経験の中で磨かれるものであることでしょう。またマニュアル化が可能な各種データの分析や計画立案等についても、実際の植物栽培や作業管理の経験と試行錯誤の中で能力が磨かれるものと思われます。

 

大規模施設園芸といっても数ヘクタール規模の経営では、従来の農協などの出荷組織に比べれば小規模であり、販売力を高めるためには一層の規模拡大が必要との意見も聞かれました。次の展開を考えた場合、経営規模の拡大が求められるでしょうが、そこで必要とされるのは資金力や土地条件などの他、新たな立上げメンバーや管理者ということになります。フォーラムで報告のあった法人経営の多くでは、そうした人たちの育成に成功しており、次の展開へのきっぷを手にしたものと考えられます。

 

個人的な意見でありますが、この分野での人的資源への投資は非常に効果が高いと感じています。大規模経営の立上げにつまづくと、累積的な損失につながって経営への影響も大きくなりがちです。その点を回避するためにも、計画的な人材の育成や現場での能力向上を先行投資的に進めることが必要と思います。設備投資額が巨額となる大規模施設の展開をリスクを低減しながら進めるためにも、人に焦点をあてた施策がこれからも求められると、フォーラムを終え改めて感じたところです。

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください

 

by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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