ロボットの開発と導入への課題

本日から幕張メッセ(千葉市)で農業系展示会が開催されています。植物工場、スマート農業関係の展示が相変わらず目につきますが、すでに実績のあるもの、ベンチャー企業の参入など、様々な展示がみられました。その中で以前のブログでご紹介した「アスパラガス収穫ロボットの提供サービス」の展示が本日行われていました。

 

収穫ロボットの現物展示

 

アスパラガスの収穫ロボットの実演

 

inaho社の展示ブースでは画像の収穫ロボットの実演がされていました。ロボットの現物が動くのを見たのは初めてですが、土壌に埋めたアスパラ(購入したものだそうです)に向けて自動的にアームが動き、アームの先のハンドリング部分でアスパラを挟んで切断、そのまま収穫コンテナに運ぶまでを一連の動作として行っていました。実際のアスパラとは長さや硬さなどが多少異なるとは思いますし、障害物も無い状態での実演でしたが、デモンストレーション効果の高い展示であったと思います。

 

以前からのアナウンスの通り、製品の販売ではなく、サービスの提供による事業化を行うということで、現在は佐賀県の生産者圃場(ビニールハウス内)にて実証とソフトウエア改良を進めているようです。画像のアームの両側に黒い縦長のパーツが見えますが、これらはカメラでアスパラの芽を見分ける役目を担っています。またロボット自体で収穫量の計量、収穫箇所と収穫予定箇所の位置情報や数量の記録なども行っているようです。ビジネスとしては出荷金額に対する一定比率での課金モデルを取るとのことで、初期費用の負担を無くし、またハードウエアの改良にもいち早く対応できるようにするとのことです。

 

ロボットと栽培の歩み寄り

 

展示ブースでは、各国の収穫ロボットや機械類(対象はリンゴ、地這いトマト、ジャガイモ、葉物、パプリカ、トマトなど)の現物や開発状況の紹介が動画で行われました。パプリカとトマト以外は実用化されたものでしたが、オランダのパプリカ収穫ロボット、中国のトマト収穫ロボットは試験途中の様子でした。いずれも果実と葉や茎が重なり合うもので空間での果実の認識を行い、また果実の色付も様々で収穫適期の判断をロボットが行う必要があるようでした。プレゼンターの方によると、ロボットの動作に合った作物の仕立て方が検討されているとのことで、ロボットが活動しやすい環境を整備してロボットの動作の効率性を高める工夫が求められているようでした。品種も含めロボットへの歩み寄りが栽培側に求められている、それだけ果実の収穫ロボットの実用化にはハードルがあるように伺えました。

 

ハードルが高いにせよ、栽培側とロボット開発側が歩み寄ることで、いずれ将来には実用化がされると思います。そこに至るまでどれだけの予算や期間が投入されるのか、また実用化製品の機能や価格がどの程度になるのかはまったく分かりません。しかし早期に実用化をはかるためには、やはり栽培側からの歩み寄りは重要と感じた次第です。

 

ロボットの目はカメラだけか?

 

アスパラ収穫ロボットの展示ブースを離れ、会場を回っている中で野菜の育苗業界の方とお話しする機会がありました。その方の会社では野菜の接ぎ木苗の生産を行っており、過去には接ぎ木ロボットの導入を試みたものの、現在は滞っている様子でした。アスパラのロボット収穫に比べると、野菜の接ぎ木苗のロボットによる接ぎ木作業はデリケートなものと思います。現状の接ぎ木ロボットでは、接ぎ木作業前に苗(穂木と台木)の選別を行い、大きさや太さが適合する穂木と台木通しを接ぎ合わせる方法が取られつつあります。そこではアスパラ収穫ロボットと同様にカメラ入力と画像処理で苗の選別を行うケースもありますが、カメラでは感じ取れない苗の微妙な固さや太さによって、穂木を台木を接ぎ合わせた後の接ぎ木の成功率が異なることもあるようです。また人間の手先による接ぎ木作業では、微妙な苗質の違いに合わせ、なお微妙に接ぎ木作業を調整することもあると思います。

 

治具を使用した手作業によるキュウリの接ぎ木

 

苗の微妙な固さや太さをロボット側が感知し、さらにそれらに合わせた微妙な接ぎ木作業を行わせることは、難易度が高そうに思われます。それだけ人間の感覚や手先作業には幅があり、また調整機能も備わっていると言えるでしょう。収穫ロボットに対して栽培側が歩みよることが、接ぎ木ロボットと育苗側にも考えられるかと言えば、なかなか難しいことなのかもしれません。国内で苗に求められる品質は極めて高いものがあり、また苗質による生育や初期収量の差も大きいものがあります。苗質を変えてまで接ぎ木ロボット側に歩み寄ることは考えずらいのかもしれません。昭和の末期から進められている接ぎ木ロボットが人間の代りとなるためには、次の開発のハードルを越える必要もありそうです。

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

 

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