加工・業務用野菜と冷凍野菜(VEDICAセミナーより)

昨日までアグリビジネスジャパン(ABJ:於東京ビッグサイト)の併設セミナーでは、VEDICA(野菜流通カット協議会)による「加工・業務用野菜の情報交換セミナー」が開催されました。加工・業務用野菜の需要が高まる中、それらを使用した冷凍野菜にスポットを当てたテーマで、冷凍野菜の生産者、実需者による貴重な講演を聞くことができました。冷凍野菜はエダマメやホウレンソウがポピュラーですが、そのほかにもコマツナや新規野菜についてのお話も伺えました。

 

VEDICA主催の「加工・業務用野菜の情報交換セミナー」の様子

 

冷凍野菜の位置づけ

 

冷凍野菜は野菜の需給と価格の変動に対し、-18℃以下の冷凍保存によるバッファーを持たせることができ、生産側と実需側にとってメリットのある商品と言えます。季節的に市場に野菜があふれ価格が低迷する時期であっても、冷凍保存によって出荷調整が可能となり、価格を安定化することができます。また生鮮野菜が不足する時期にあっても実需側は安定的に調達が可能となります。このセミナーの日本農業新聞の記事(2019年9月13日付け流通経済面)には、「日本冷凍食品協会によると、国産冷凍野菜の供給量はこの30年、年間8〜10万トンで推移し、流通量の多くを輸入品が占めている。」とあります。実際の冷凍野菜消費量は加工・業務用途を中心に確実に伸びているはずで、記事の内容は国産供給がそれに追いついていないことを示しています。

 

冷凍野菜の生産事例

 

セミナーでは、いくつかの加工・業務向けの野菜栽培の事例と、実際の冷凍野菜加工の事例が紹介されました。二つの事例((有)ワールドファーム、(株)ジェイエイフーズみやざき)があり、野菜栽培と冷凍野菜加工の双方を手掛けられております。ワールドファームでは全国に3拠点(茨城、鳥取、熊本)の工場を持ち、社員が栽培と加工の両方を受け持ち、双方の作業の繁閑のバランスを上手に調整されているとのことです。最終的には全国に100拠点の工場立地を目指し、すでにいくつかの工場を立上げ中とのことです。流通経費削減(一般の流通では包装資材と物流費で売り上げの3割程度に)のため農場と加工工場を隣接させ、鮮度も良い状態で工場に搬入できるよう拠点を配置する工夫をされています。100拠点という目標は壮大ですが、国産の冷凍野菜への実需に強いものがあるという証かと思われます。

 

ジェイエイフーズみやざきでは、施設園芸が盛んな宮崎県西都市に工場が立地しており、葉タバコ生産が盛んであった地域での加工・業務用野菜の生産を地域で広めています。葉タバコの元圃場でホウレンソウの栽培を生産者が行い、その収穫と運搬などを会社側が行うという分業体制が特徴でした。冷凍野菜工場は稼働率を高めるよう、常に原料野菜の供給が求められますが、それを生産者まかせとせず会社側が自ら取りに行くことで工場の安定稼働を担保しており、あわせて生産者の負担を軽減していると言えます。お話では先に工場を建設し、それにあわせた野菜生産を確立されたとのことでした。その手法を畜産で見られるインテグレーションとして紹介され、土壌分析や施肥指導、栽培指導、品質管理など生産、加工、販売までの一貫体系を構築できる体制を作り上げられていました。圃場側はGGAPを、工場側はFFSC22000などを取得されており、実需側との商談もスムースに進むとのことでした。圃場管理もマッピングされ営農指導のIT化も万全で、農水省のスマート農業実証プロジェクトにも採択をされているとのことでした。

 

冷凍野菜の未来

 

パネルディスカッションでVEDICAの木村会長が、国産冷凍野菜の現状と課題を総括されていました。まず冷凍野菜工場の全国分布には偏りがあって、工場ゼロの都道府県もあるとの指摘で、地域での栽培と加工を考えると更なる工場建設が求められるとのご見解でした。また品目的には、すでに単品のカット野菜で需要が拡大しているネギの冷凍化がさらに進むこと、産地が全国化しているニラについても冷凍化が期待されること、施設野菜、果菜類についてもABJ会場で展示のあったパプリカ(タカヒコアグロビジネス社ブース展示)のスライス冷凍品などが期待されることなど、いくつかのご提案がありました。果菜類の冷凍品のイメージは冷凍イチゴ以外あまりなかったのですが、まだまだ商品開拓の余地はありそうでした。またヨーロッパで菓子などに使われるイチゴの原料供給のほとんどは中国産冷凍イチゴとのことで、冷凍品をターゲットとした施設生産という展開も今後あるのかもしれません。

 

施設野菜の周年生産、周年供給と、価格変動の波の大きさには近年矛盾が生じていると感じられますが、冷凍野菜をそこに組み入れることで新たな展開もあるのかもしれません。冷凍野菜工場の設備投資は数十億円にのぼるケースもあって簡単に取り組めるものではありませんが、セミナーに参加し今後の可能性を感じた次第です。

 

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください

 

by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

 

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