千葉大学土葉会「スマート農業の最前線」とJAの役割

千葉大学園芸学部蔬菜園芸学研究室は、施設園芸と野菜生産、養液栽培研究での長い歴史がある研究室です。研究室の勉強会にも伝統ある土葉会という会があり、今年度の幹事長を拝命し運営のお手伝いをさせていただいています。

 

 

土葉会「スマート農業の最前線」

 

本日は土葉会の第327回例会が開催され、「スマート農業の最前線」と題し4名の方に下記のテーマでお話をいただきました。
 

「AGRIOSを導入した経営改善」

螳羹丱肇泪版星/螢侫 璽爛ーエス 代表取締役 井出 寿利 氏

 

「クラウド制御型 養液土耕 自動化支援システム ゼロアグリ」

螢襦璽肇譽奪・ネットワークス 取締役CTO 喜多 英司 氏

 

「施設園芸コンテンツ連携による経営一貫体系の実証について」

農研機構野菜花き研究部門 野菜生産システム研究領域 生産工学ユニット 上級研究員 磯崎 真英 氏

 

「次世代環境・生育センシング技術とICTを活用した栽培支援技術の開発及び利用技術の確立(スマート農業プロ」

千葉県農林総合研究センター 最重点プロジェクト研究室 室長 齊藤 俊一 氏

 

スマート農業最前線のテーマにふさわしく、ICTで現場改善や生産性向上をはかるアプリケーション、新技術や実証体系のご紹介で、今現在の動きが分かるご講演ばかりでした。その中で「施設園芸以外のスマート農業の話」をお願いしました千葉県の齊藤さんのご講演についてです。あえて施設園芸以外でお願いしたのは、他の3題が施設園芸に特化した内容であり、土葉会の会員の方々には施設関係以外の方も多くいらっしゃるため、バランスを取ることも考えたためです。しかし、千葉県のスマート農業研究は、施設園芸以外の分野でも面白い方向に進んでいることがお話を聞いて分かりました。

 

千葉県のスマート農業研究テーマ

 

千葉県では水田作における農業機械の自動化、水管理の自動化、ドローンや各種センサーを利用した計測、計測情報や各種データのマッピングなど、広く取り組まれています。これは全国的な傾向で、農林水産省のスマート農業プロジェクトでも水田作関係のテーマが多くみられています。千葉県では水田作の他に露地栽培でのスマート農業の取り組みが多く、齊藤さんからは「病害虫予測に基づいた防除支援システム「梨ナビ」の開発」の他、ラッカセイの生産安定化のためのメッシュ気候データやUAV(ドローン)での画像情報利用、サツマイモの貯蔵安定化のための生育、収量、貯蔵性予測などのご紹介がありました。

 

いずれも千葉県の主要園芸作物で、主に気象要因、気象変動から生産や貯蔵などに影響を受ける事象について、メカニズムの解明や分析予測手法の開発を県の研究機関でされています。スマート農業の観点からは研究成果(予測などのアルゴリズム)をクラウドサービスに移行することが課題で、ユーザー(農業生産者)に使いやすいよう、エクセルなどを利用したPC上での計算や予測から、スマホなどを利用した簡易な操作性やアクセス性を進めることが示されました。研究成果を普及させるにはスマホ利用やクラウド利用とアプリ開発が必須であり、民間の技術やサービスを活用することが不可欠となり、そのためのプロジェクトが始まっているとのことでした。今後に期待したいと思います。

 

スマート農業とJAの役割

 

齊藤さんにJAとの取り組みや関係について質問をしたところ、サツマイモの貯蔵安定化については全農(千葉県本部)からの要望課題ということでした。配布資料では民間との共同研究や競争的資金獲得によりアプリ開発やマップ化等の実証化と普及を進めるようなスケジュールも示されていました。サツマイモ貯蔵のテーマに関しては、生育状態の良くないサツマイモでは貯蔵中の腐敗が起こりやすいため、長期貯蔵に適するサツマイモを圃場で選定できるようドローン画像による草勢などの生育情報の取得と分析を行い、また気象情報や土壌情報の収集と生育、収量、貯蔵性の予測手法などを研究し、貯蔵性を考慮した出荷戦略や施肥設計への活用をはかることも示されていました。こうした研究開発が進み、開発されたシステムが導入された場合、非常に広範囲なデータ(気象、土壌、生育、出荷、貯蔵、販売等)が集積することが予想されます。

 

これらデータが課題を要望したJA側に集積された場合には、営農指導だけでなく販売までの一貫体系としてのスマート農業の取り組みが期待されますが、いわゆるビッグデータを取り扱うことになり、それなりのクラウド上でのデータ処理や分析のためのシステム開発や運用体制も必要になると思います。また開発期間や開発費用もそれなりのスケールになることが予想されますが、それらをJA側が上手に進めることができれば、サツマイモの長期貯蔵による出荷が進展し、貯蔵物の出荷価格が上昇していることから、生産者の収益向上が見込めることになるようです。

 

JAのASPへの変身について

 

かなり昔のことになりますが、平成17年に農林水産省農林水産技術会議主催による、21世紀の農林水産業を展望するシンポジウム「次世代の農林水産業を支える革新技術」が開催されました。そこでの三重大学の亀岡先生のご講演についての自分のメモには、「ロボットに合わせた圃場設計があるのでは?」 「植物工場に合った品種選択があるのでは?」 「植物にとっての体温計の情報は何か?」 「ISO22000、GAP対応で、JAはASPに変身できるか?」といった興味深いコメントが残されていました。この最後の「JAはASPに変身できるか?」というコメントが10年以上立った今でも自分の頭に残っております。

 

ASPというのはアプリケーションサービスプロバイダーのことで、インターネット上でソフトウエアのサービスを提供する事業者のことであり、近年ではSaaSなどとも言われるネット上でのサービス提供に関することになります。亀岡先生のご講演の当時はISO2200もGAPも一般化しておらず先見性の高いお話だったと思います。そこにさらにASPを乗せていたことは驚きなのですが、スマート農業の担い手として、産地の生産から販売まで一手に扱えるJAがASPに変身できれば、産地の活性化に有効なことは間違いないと思います。今後はそうした観点でJAの役割を考える必要もあるものと考えます。

 

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