スマート農業と人間の能力

施設園芸分野のスマート農業のでは、機械化や自動化、ICT利用による高度な制御などが多く取り上げられています。実際の施設園芸の現場では今も多くの人が働いており、最近では外国人や障がい者の皆さんの姿もよく見かけるようになりました。水田作のような機械化を前提とした省力農業が施設園芸分野で実現されることは、当分はないと考えられます。それは人間の感覚や判断、手先の動きなどに頼る精緻な作業が施設園芸には多いためであると言えます。機械化や自動化が可能なところはどんどんと進めるべきでしょうが、そうでないところの生産性をどのように上げて行くかが当面の課題と考えられます。

 

機械の能力と人間の能力

 

機械の能力は、その仕様や利用場面により規定され、自ずと限界があります。ところが人間の能力にはそもそも仕様というものはなく、最初は未熟であってもトレーニングやコーチングなどにより能力を高めて行くことができます。もちろん筋力や持久力の面から限界はありますが、最初からこれだけしかできないといったように規定されることはありません。これは人間の学習能力や向上力によるものです。こうした人間の潜在的な能力に対する向上の方策について、施設園芸の分野でも検討の必要があると思います。

 

スマート農業と人間の潜在能力の活用

 

施設園芸でも大規模化が進み、多くの従業員を管理する必要がでてきています。労務管理や安全衛生管理といった、経営者側が義務的に行わねばならない管理事項も多くあります。また新人が配属され一人前になるまでのOJTやOff-JTなどの教育訓練や、一人前に育ってきた従業員をさらにレベルアップすることなど、能力管理には多くの場面があります。こうした管理は対面で行われることが多く、その時々や担当者により伝達内容や指導内容に違いがでたり、一貫性がなかったりなど、現場での問題も指摘されてきました。一方でICTを用いたシステム的なアプローチによる問題解決が、この分野において可能になっています。

 

一例として従業員のスマホを使った目標管理の仕組があります。これは従業員個人や所属グループの目標を定め、その達成状況をリアルタイムで示すものです。目標そのものは過去の実績や販売計画などからあらかじめ設定されますが、作業量や収穫量などの実績は従業員が作業完了後にスマホで入力することで、進捗も即時に把握できるものです。

 

作業の開始と終了をインプットして、進捗状況をモニター画面に表示する仕組みは、オランダの大規模施設園芸では標準的に導入されています。そこでは作業能力のランキングも表示され、競争的な環境を作っている感じがします。一方でこのスマホでのシステムは個人ごとの目標管理が前提にあり、さらにグループ全体での目標管理もあり、競争的な環境とは異なります。個人ごとの工夫や頑張りで個人の計画を達成しつつ、さらにグループとして計画を達成するよう、お互いに教え合ったり助け合ったりすることを促すような仕組みがそこにはあります。これは自分だけでなく、他の従業員やグループ全体の進捗を個人のスマホから参照でき、常に全員が情報共有することで可能になっていると言えます。

 

オランダの仕組みと、このスマホでの仕組みは設計思想そのものが異なっています。人間の潜在能力を前提に設計された仕組みは、スマート農業の分野では先進的な事例と言えるでしょう。

 

参考サイト https://farmos.jp/

 

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください

 

by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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