スマート農業関連実証事業の施設園芸関係の課題

農林水産省の目玉施策となっているスマート農業関連実証事業ですが、「スマート農業加速化実証プロジェクト」、および「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」が採択され、稼働し始めています。採択課題は合計69課題であり、予算額は令和元年度分と平成30年度2次補正分を合わせ4,705百万円と大型のものです。また施設園芸関係は下記の8課題です。

 

‖腟模施設園芸の生産性を飛躍的に向上させるスマート技術体系の実装

(実証グループ名:生産性向上スマート農業実証コンソーシアム、代表機関:大阪府立大学研究推進機構植物工場研究センター)


促成イチゴ栽培における圃場内環境および作物生育情報を活用した局所適時環境調節技術による省エネ多収安定生産と自動選別・パック詰めロボットを活用した調製作業の省力化による次世代型経営体系の検証

 

(阿蘇イチゴスマート農業実証コンソーシアム、(国研)農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター)

 

施設園芸コンテンツ連携によるトマトのスマート一貫体系の実証

(施設園芸コンテンツ連携コンソーシアム、(国研)農業・食品産業技術総合研究機構野菜花き研究部門)

 

ICT に基づく養液栽培から販売による施設キュウリのデータ駆動経営一貫体系の実証

(日本をリードする施設キュウリスマート農業実証コンソーシアム、愛知県西三河農林水産事務所)

 

セ楡澑犒櫃砲ける収穫ロボットによる生産コスト削減体系の実証

(施設園芸における収穫ロボット実証コンソーシアム、パナソニック(株))

 

Γ稗達垉蚕僂筍腺謬蚕囘を活用した「日本一園芸産地プロジェクト(施設園芸:なす・すいか)」の実証

(「日本一園芸産地プロジェクト(施設園芸:なす・すいか)」スマート農業実証コンソーシアム、熊本市)

 

Э綸鎮和咾砲ける AI と IoT を活用した葉菜類大規模経営の実証

(福岡R・O・Iグループ次世代農業実証コンソーシアム、株式会社RUSH FARM)

 

┘札鵐轡鵐圧蚕僂亡陲鼎統合環境制御の高度化によるピーマン栽培体系の実証

(そおピーマン専門部会スマート農業実証コンソーシアム、鹿児島大学農学部)

 

8課題のうち、九州関連の課題が5課題(表の´↓ΝЛ┐硫歛蝓砲△蠅泙后うち↓ΝЛ┐和緝週ヾ悗九州にあり、また「‖腟模施設園芸の生産性を飛躍的に向上させるスマート技術体系の実装」の代表機関は大阪府立大学ですが、実証場所は大分県のパプリカ栽培施設の(株)タカヒコアグロビジネスとなっています。さらに施設園芸関係以外でも九州に関係する課題数が15と多く、農水省が九州の農業に対して力を入れていることが感じられます。

 

本事業は2年間後の2021年3月にはとりまとめを行うことになっており、短期間のプロジェクトといえます。その間にも「全国版スマート農業サミット(仮称)in アグリビジネス創出フェア」が本年11月に開催予定であり、実証地区を「見られる・試せる・体験できる」情報発信拠点として活用する計画も示されています。さらに実証拠点の成果をPRし、2025年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践するというスマート農業の施策も定められています。そのために必要な取組やその進め方等を定めた「農業新技術の現場実装推進プログラム」(仮称)を2019年夏までに農水省が策定することになっています。従ってしばらくはスマート農業に係わる事業や施策、イベントなどが目白押しになると推測されます。

 

施設園芸分野でのスマート農業が目指す方向

多少、話題が先行している感のあるスマート農業ですが、施設園芸分野での目指す方向がどんなものか、共通認識が必要かと思います。農水省がスマート農業関連実証事業の位置づけ、採択地区、今後の展開について資料をとりまとめとめています。そこでは、従来のすぐれた農業技術と先端技術を掛け合わせたものがスマート農業としてポンチ絵で描かれています。熟練農家の匠の技を形式知化して若手農家に伝承したり、自動化や規模拡大をはかったり、センシングや生育予測、病害予測によって農業経営の高度化をはかることが示されています。

 

資料:「スマート農業実証関連事業」農林水産省

 

また事業を所管する農林水産技術会議のホームページの末尾には、スマート農業についての簡単な説明もあります。説明を引用します。

 

スマート農業とは、ロボット・AI・IoT等の先端技術を活用して、省力化・精密化や高品質生産を実現する等を実現する新たな農業のことです。
日本の農業の現場では、課題の一つとして、担い手の高齢化が急速に進み、労働力不足が深刻となっています。
そこで、スマート農業を活用することにより、農作業における省力・軽労化を更に進められる事が出来るとともに、新規就農者の確保や栽培技術力の継承等が期待される効果となります。

 

一言でいえば、このようになる訳ですが、施設園芸での適用について、もう少し考察が必要でしょう。農水省は先立って平成25年に「スマート農業の実現に向けた研究会」を立上げ、推進方策についての検討を行い、検討結果の中間とりまとめを公表してます。そこではスマート農業の5つの将来像を示しており、これを引用します。

 

ロボット技術やICT等の様々な分野の方々の協力を得て、我が国農業が直面する課題を解決し、新たな農業(スマート農業)を拓いていくには、スマート農業の将来像をわかりやすく提示し、関係者で方向性を共有して取組を進めることが重要である。
このため、ロボット技術やICTの導入によりもたらされる新たな農業の姿を以下の5つの方向性に整理した(別添1)。

 

超省力・大規模生産を実現
トラクター等の農業機械の自動走行の実現により、規模限界を打破

 

作物の能力を最大限に発揮
センシング技術や過去のデータを活用したきめ細やかな栽培(精密農業)により、従来にない多収・高品質生産を実現

 

きつい作業、危険な作業から解放
収穫物の積み下ろし等重労働をアシストスーツにより軽労化、負担の大きな畦畔等の除草作業を自動化

 

誰もが取り組みやすい農業を実現
農機の運転アシスト装置、栽培ノウハウのデータ化等により、経験の少ない労働力でも対処可能な環境を実現

 

消費者・実需者に安心と信頼を提供
生産情報のクラウドシステムによる提供等により、産地と消費者・実需者を直結

 

5年ほど前に、すでにこうした共通認識を作るためのとりまとめがされていた訳ですので、スマート農業を考える上で、これら5つの方向性に立ち返ってみる必要があると考えます。特に施設園芸での栽培に関係が深いと思われるのが、「∈酳の能力を最大限に発揮」でしょう。このポンチ絵を引用します。

 

資料:「スマート農業の将来像」、農林水産省

 

ここでは、「データに基づくきめ細やかな栽培」として3つの例が示され、うち施設園芸と思われる例では「圃場ごとの栽培履歴や作物の生育状況を把握し、資材投入量の最適化や効率的な作業計画の策定を実現」を示しています。すなわち、

 

  1. 圃場ごとの栽培履歴や作物の生育状況の把握
  2. 資材投入量の最適化
  3. 効率的な作業計画の策定

 

これらを行うことで、「従来の水準を超えた多収、高品質、効率生産を実現」するとあります。

a.では各種のモニタリングによる見える化と分析、b.ではエネルギーや種苗、水分、肥料、農薬等の投入量の調整、c.では生産管理、作業管理技術の向上といった、最近では研究や実証が進んでいる技術分野です。5年前に策定されたこうした将来像は、そのまま実証へ進んで来たと言って良いと思います。スマート農業関連実証事業の各課題においても、こうした将来像に沿った技術実証が進められていくものか、個別に確認していく必要があるでしょう。各課題の詳細についてはつかみ切っておりませんが、今後あらためてお伝えしてまいりたいと思います。

 

 

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