種子法廃止と農業の未来

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種子法廃止と日本農業の未来 
 
日本には主要農作物種子法(種子法)という法律があり、コメ、ムギ、ダイズの主要穀物について、国や県による主導で、優良な品種を育成し、奨励品種としてきました。またこれらの穀物の種子を都道府県単位で維持し供給してきました。コメであれば、種籾(たねもみ)と呼ばれる種子です。 
 
この種子法が、29年度の国会での種子法廃止法案の成立によって廃止されました。農業関係者や一部のマスコミでは、この廃止が国産穀物の育種や種子供給に悪影響を及ぼすことや、国や都道府県が持つ遺伝資源が外資に渡って独占されることへの危惧が叫ばれていました。しかし、種子法が今まで果たしてきた役割は、一般にはほとんど知られていないと思います。 
 
種子法は根拠法であり、種子法にもとづいて都道府県は、穀物の育種や採種、原種や原々種と呼ばれるオリジナルの種子の保存などの事業を行っています。また、実際にコメの種籾やダイズの種子を地域で育成、採種、販売することには、多くのプロセスがかかわっています。 

 

車窓からの風景


例えば、種取りをする作物の栽培中には、何度か圃場審査があって、生育状態を細かな基準に従って計測を行い、 合否が下されます。また収穫後には、種子は等級や品質、発芽率なども厳しい基準で選別が行われ、DNA識別までされることもあります。一方で、種子作物の生産者は、病害虫防除や異品種の混入防止、細密な収穫後の調整など、通 常より多くの神経を使って栽培をしなければなりません。 
 
この審査や検査は、都道府県の職員や、委嘱された専門家が行っていますが、ここでの人件費や各種経費は都道府県の負担によるものです。また直接、現場での審査や検査に携わらない職員(行政職、技術職)の人件費や、育種、技術開発に関する費用も多大なものがあります。 
 
都道府県としては、地域の気象条件や地理的条件などに適した品種を育成、維持、配布し、地域農業や関連産業 を振興するという目的があって、こうした事業を推進してきましたが、その背景というか大元の根拠法として種子法 が長年存在していたわけです。種子法のおかげで、コメの主産地では独自の競争力のある高品質の品種が 育成、普及しており、最近の「きらきらネーム」のコメ品種の興隆も、その成果とも言えます。 
 
国内では自家採種がほとんどであったものが、1952 年制定の種子法によって、都道府県による穀物の種子配布 事業が推進され、農家も種取りから解放されて、栽培に集中できるようになったともいえるのです。 
 
以上のような種子法の役割は、今回の種子廃止法案によって終わってしまいました。もちろん根拠法が無くなった らといって、今まで実施されていた様々な事業や取組がすぐに無くなるわけではありません。すでに独自の条例で対策を進めている自治体も現れています。しかし行政の世界では、 毎年予算を獲得して事業を継続してきたため、根拠法の廃止の影響はじわじわと出てくる可能性も考えられます。 なぜこのような事態となったか、また主要穀物の育種や種子の流通がこの先どうなっていくかは、またの機会に触れてみたいと思います。 
 
参考文献:水稲の採種栽培 第3版(2016)、千葉県・千葉県農林水産技術会議

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