人口減少、年間野菜収穫・出荷量の増加と施設園芸

日本の総人口減少が年間50万人を超えました。総務省が本年1月1日現在の日本の総人口は1億2427万人台で11年連続の減少となり、その傾向は今後も続きます。年率にすれば減少率は0.5%程度となります。一方で施設園芸面積は年率1%程度で減少しており、その速さは人口減少を上回っています。

 

令和元年野菜の野菜の作付面積、収穫量及び出荷量

 

8月28日付け農林水産省の農林水産統計にて、「令和元年産指定野菜(秋冬野菜等)及び指定野菜に 準ずる野菜の作付面積、収穫量及び出荷量」が公表されました。そこでは、「1 指定野菜として、 (1) 秋冬野菜 作付面積は9万1,200haで、前年産に比べ1,600ha(2%)減少した。 収穫量は292万1,000t、出荷量は238万1,000tで、前年産に比べそれぞれ4万 8,000t(2%)、2万8,000t(1%)減少した。」とあり、秋冬野菜全体の減少傾向が顕著に表れています。作付面積の減少率に比べ収穫量と出荷量の減少率は小さく、単収が増加傾向にあることが分かります。

 

また令和元年産野菜(41品目)の作付面積、収穫量及び出荷量(年間計)が併せて公表されました。ここでは、作付面積が45万7,900haで対前年産比1%の減少、収穫量と出荷量はおのおの1,339万4,000tと1,156万1,000tで、対前年産比でおのおの3%の増加となっています。こちらも単収が増加傾向にあることが分かります。

 

その中で主要な施設園芸野菜を見ますと、下表となります。すべてが施設園芸によるものでは無い点に注意が必要ですが、いずれも作付面積を1〜4%と減らし、出荷量をトマト以外では増やしています。トマト以外の単収は3~4%増という増収が達成されていることがわかります。

 

令和元年産野菜の年間計の作付面積、10a当たり収量、収穫量 及び出荷量(全国) 出典:農林水産統計(R2.8.28公表)

 

増収の要因としては、施設生産性(単収)の向上と、労働生産性の両面が考えられます。施設生産性の要因としては高収量品種や耐病性品種等の導入、環境制御技術の向上などが考えられます。トマトの単収に変化がなく、きゅうり、なす、ピーマン、いちごの単収が3〜4%と大きく伸びて見える背景として、これらの要因が寄与している可能性が高いと言えるでしょう。

 

実際の収益が単収や出荷量の増加に応じているかは相場の影響があり一概には言えませんが、作付面積の減少を単収の増加で補い、国産野菜生産の下支えをしている施設園芸の実態が浮かびあがったものと考えられます。

 

 

人口減少と野菜生産の未来

 

ここで示した野菜5品目は国産が主体の品目であり、輸入野菜を代替可能なものではありません。人口減少に対してこれら施設園芸で栽培される野菜の収穫出荷が増加傾向にあれば、需給バランスから考えれば価格は低下傾向にあると考えられます。ただし絶対量が足りなければ価格は維持、もしくは高騰し、実際にきゅうり、なす、ピーマン、イチゴとも価格は維持か高騰の傾向にあります。また作付面積や施設面積の減少傾向は今後も続き、単収は品種改良や栽培技術向上によりしばらくは増加傾向にあるものと考えられ、微妙な需給バランスの中での価格形成が進んで行くものと思われます。

 

コロナ禍でのスーパーやネット通販での青果販売の好調さを伝えるニュースも多く、一方で外食産業の低迷によって影響を受けた野菜販売もみられます。国民全体としては野菜を食べる量には大きな変化は無いはずであり、コロナ禍のような社会環境の激変に対しても安定した需給を保っているのが野菜生産の特徴とも言えるでしょう。

 

なお国策として進められている農産物輸出では2020年上半期の輸出額が日本農業新聞8月19日付け「コロナ禍の農産物輸出 動向と展望」に記されています。同記事では、対前年同期比で輸出額を伸ばした品目にイチゴ、サツマイモ、ブドウ、モモなどがあげられており、イチゴは17億円(7%増)でリンゴの39億円に次いで輸出額2位となっています。金額的にはまだまだ少ないものですが、輸送適性に優れた品種開発や輸送技術開発もイチゴでは進めれれています。施設野菜生産全体から見えれば小さなものかもしれませんが、人口減少が進む中では輸出向けの生産や出荷はこれからも伸びる可能性はあると考えられます。

 

人口減少の一方で、都市部から地方への人口の反転など、社会環境が大きく変わりつつあり、それに伴って農業の占めるウェイトや重要性にも変化が生じることも考えられます。マーケットインにもとずく生産と出荷が求められる中、そうした社会動向にも敏感になる必要があると言えるでしょう。

 

 

 

ホームページ「農業・施設園芸・植物工場の未来」もご覧ください

 

by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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