人口減少、年間野菜収穫・出荷量の増加と施設園芸

日本の総人口減少が年間50万人を超えました。総務省が本年1月1日現在の日本の総人口は1億2427万人台で11年連続の減少となり、その傾向は今後も続きます。年率にすれば減少率は0.5%程度となります。一方で施設園芸面積は年率1%程度で減少しており、その速さは人口減少を上回っています。

 

令和元年野菜の野菜の作付面積、収穫量及び出荷量

 

8月28日付け農林水産省の農林水産統計にて、「令和元年産指定野菜(秋冬野菜等)及び指定野菜に 準ずる野菜の作付面積、収穫量及び出荷量」が公表されました。そこでは、「1 指定野菜として、 (1) 秋冬野菜 作付面積は9万1,200haで、前年産に比べ1,600ha(2%)減少した。 収穫量は292万1,000t、出荷量は238万1,000tで、前年産に比べそれぞれ4万 8,000t(2%)、2万8,000t(1%)減少した。」とあり、秋冬野菜全体の減少傾向が顕著に表れています。作付面積の減少率に比べ収穫量と出荷量の減少率は小さく、単収が増加傾向にあることが分かります。

 

また令和元年産野菜(41品目)の作付面積、収穫量及び出荷量(年間計)が併せて公表されました。ここでは、作付面積が45万7,900haで対前年産比1%の減少、収穫量と出荷量はおのおの1,339万4,000tと1,156万1,000tで、対前年産比でおのおの3%の増加となっています。こちらも単収が増加傾向にあることが分かります。

 

その中で主要な施設園芸野菜を見ますと、下表となります。すべてが施設園芸によるものでは無い点に注意が必要ですが、いずれも作付面積を1〜4%と減らし、出荷量をトマト以外では増やしています。トマト以外の単収は3~4%増という増収が達成されていることがわかります。

 

令和元年産野菜の年間計の作付面積、10a当たり収量、収穫量 及び出荷量(全国) 出典:農林水産統計(R2.8.28公表)

 

増収の要因としては、施設生産性(単収)の向上と、労働生産性の両面が考えられます。施設生産性の要因としては高収量品種や耐病性品種等の導入、環境制御技術の向上などが考えられます。トマトの単収に変化がなく、きゅうり、なす、ピーマン、いちごの単収が3〜4%と大きく伸びて見える背景として、これらの要因が寄与している可能性が高いと言えるでしょう。

 

実際の収益が単収や出荷量の増加に応じているかは相場の影響があり一概には言えませんが、作付面積の減少を単収の増加で補い、国産野菜生産の下支えをしている施設園芸の実態が浮かびあがったものと考えられます。

 

 

人口減少と野菜生産の未来

 

ここで示した野菜5品目は国産が主体の品目であり、輸入野菜を代替可能なものではありません。人口減少に対してこれら施設園芸で栽培される野菜の収穫出荷が増加傾向にあれば、需給バランスから考えれば価格は低下傾向にあると考えられます。ただし絶対量が足りなければ価格は維持、もしくは高騰し、実際にきゅうり、なす、ピーマン、イチゴとも価格は維持か高騰の傾向にあります。また作付面積や施設面積の減少傾向は今後も続き、単収は品種改良や栽培技術向上によりしばらくは増加傾向にあるものと考えられ、微妙な需給バランスの中での価格形成が進んで行くものと思われます。

 

コロナ禍でのスーパーやネット通販での青果販売の好調さを伝えるニュースも多く、一方で外食産業の低迷によって影響を受けた野菜販売もみられます。国民全体としては野菜を食べる量には大きな変化は無いはずであり、コロナ禍のような社会環境の激変に対しても安定した需給を保っているのが野菜生産の特徴とも言えるでしょう。

 

なお国策として進められている農産物輸出では2020年上半期の輸出額が日本農業新聞8月19日付け「コロナ禍の農産物輸出 動向と展望」に記されています。同記事では、対前年同期比で輸出額を伸ばした品目にイチゴ、サツマイモ、ブドウ、モモなどがあげられており、イチゴは17億円(7%増)でリンゴの39億円に次いで輸出額2位となっています。金額的にはまだまだ少ないものですが、輸送適性に優れた品種開発や輸送技術開発もイチゴでは進めれれています。施設野菜生産全体から見えれば小さなものかもしれませんが、人口減少が進む中では輸出向けの生産や出荷はこれからも伸びる可能性はあると考えられます。

 

人口減少の一方で、都市部から地方への人口の反転など、社会環境が大きく変わりつつあり、それに伴って農業の占めるウェイトや重要性にも変化が生じることも考えられます。マーケットインにもとずく生産と出荷が求められる中、そうした社会動向にも敏感になる必要があると言えるでしょう。

 

 

 

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コロナ禍の施設園芸・植物工場業界への影響について

養液栽培に関係する生産者、研究者、資材メーカー等が会員となっている日本養液栽培研究会では、年2回の会報「ハイドロポニックス」の発行を行っています。表題について同誌への寄稿を依頼され、原稿を執筆中です。寄稿依頼の趣旨として、今回のコロナ禍の業界への影響について、記録の意味で状況を記して欲しいとのことでした。業界全体のことをつぶさに調べることは難しく、関係の方々を中心に聞き取りをしながら、点の情報となりますが執筆をしました。本ブログでは、原稿に書き切れないことを中心に、生産現場に近い内容で記したいと思います。

 

 

青果物を扱う業界の動向記事

 

2020年7月21日より5回の連載記事「コロナ禍の上半期業界動向」が掲載されています。5回の連載タイトルを引用しますと「コンビニ苦戦続く」、「食品スーパー好調」、「宅配売り上げ好調」、「底を脱した百貨店」、「外食回復勢いを欠く」とあり、青果物を扱う業界の動向を端的に表現しています。青果物需要は、外出や飲食の自粛により外食や業務用途での落ち込みが大きく、一方で巣籠り生活の長期化から食品スーパーや宅配での需要は堅調と言えるでしょう。スーパーでは青果の伸びがトップとあり、上半期は気温が高くサラダ食材などの販売が好調とあります。その他、自宅での調理機会が増えたことで、調味料や粉ものの需要増、調理の大変さに対応したミールキットの宅配での伸長などが特徴づけられています。

 

業界全体を俯瞰した分析記事はありませんでしたが、青果物全体の需要としては「プラマイゼロ」に近い状況ではないかと思われます。後述しますが、個々の経営では業務需要低下の中でも深刻な販売低下というお話は伺っていません。

 

 

7月の天候の影響

 

下半期となる7月になると気候が一変し、全国的な豪雨災害と長雨、長期にわたる低日照の影響から青果物の価格も上昇しています。露地野菜の生育不良と作業の困難さ、施設野菜も生育不良と着花不良や着色不良など、困難な状況になっていますが、8月の遅い梅雨明けとともに徐々に回復が見込まれるでしょう。スーパーの店頭を見ていると、天候の影響を受けなかった北海道産の野菜の入荷が目立っています。また関東近郊から東北の露地野菜も徐々に増えているようです。

 

悪天候の時期の野菜生産では、力量の差が出やすいと言われています。果菜類は産地の端境期にあたり、夏秋栽培で安定して出荷を行う生産者や産地には、堅調な需要に対して売り上げを増やす機会になっていくかもしれません。個別の栽培技術でいえば、春定植の果菜類では、例えば初期生育の緻密な水分管理による根の伸長の確保といった点で、その後の天候不順期の生育差がつきやすいと思われます。

 

 

植物工場事業者の状況

 

近年、大型の植物工場施設が増加しており、品目も従来のトマト中心からパプリカやレタス類などに広がっています。パプリカ栽培は上方に高く伸ばす栽培方法の特徴から太陽光型植物工場の得意分野になっています。レタス類を中心とした葉菜栽培は、大規模な人工光型植物工場の増加の一方で、コロナ禍による業務用途販売の不振から青果販売へのシフトが起こっているようです。業務用途の葉菜生産では大株収穫や包装簡素化とバラ詰め出荷などで生産コスト低減を図っていますが、青果販売では逆になるため、一層のコスト低減が必要になると思われます。

 

太陽光型植物工場での葉菜生産は、果菜類ほどではありませんが、大型施設が少しずつ増えています。長年、数ha規模で葉菜生産を行う事業者に伺ったとこと、他の事業者や人工光型植物工場との競合のお話はありませんでしたが、外食向け専用に生産する品目の販売が回復しない中で、生協などの宅配向けの販売は好調のため、全体的な販売の落ち込みには至っていないとのことでした。こちらの例では生協が取引先にあったことで、他の事業者との競合も避けれらたのではないかと思われます。一般の青果販売ルートでは、太陽光型と人工光型が入り混じった販売の競合も耳にしています。

 

太陽光型植物工場での果菜生産の多くは作替え時期に差し掛かっていますが、近年は7月など定植時期の前進による秋需要への対応が目立つようになっています。さらに作型を前進させた春定植での夏越し栽培も見られるようになっています。高温期の樹勢維持と収量確保という難易度の高い栽培で、5月以降のトマト、ミニトマトの価格低迷の影響も受けた中ですが、現時点での販売単価は良回復しており、むしろ量が不足している中での良好な販売環境になっていると思われます。この時期に技術力が発揮できれば販売回復に結びつくはずで、コロナ禍と悪天候の影響にどのように立ち向かっていくものか、注目したいと思います。

 

 

淡々と生産と販売を行う都市近郊生産者

 

施設園芸のカテゴリーとして、前述の太陽光型植物工場が脚光を浴びていますが、その販路はスーパーや業務用途向けの契約販売が主流になっています。一般の施設園芸生産者でも同様にスーパー向けに販売(契約販売ではなく、一定の手数料を支払う委託販売が

多い)する方も多くいらっしゃいます。収益性の高い経営スタイルですが、スーパー側からは周年の出荷を求められ、これを実現するには周年栽培の技術力や切らさずに出荷を続ける経営力も求められるようです。

 

 

都市近郊での雨よけトマト栽培 長雨の中で生長点の様子も良好

 

それでも、大都市近郊や人口数十万人規模の地方の中核都市近郊には、作型や品種を組み合わせたり、天候の変化に対応した水分管理や環境管理を行うことで、周年の切れ目ない出荷を行うハイレベルな生産者が存在します。こうした生産者による経営はコロナ禍の影響も受けにくいと言えるでしょう。ある地域のトマト栽培篤農家は、30万人の人口に対しトマト生産者が数えるほどで、大型スーパーでの売り場も確保しており、土耕栽培での食味が良く鮮度の高いトマトを週3日ほど、日々淡々と出荷されています。繁忙期には店から引取りに来ることもあるそうですが、現在はまだ経験の浅い後継者への技術継承が課題となっていました。こうした地域の食を支える生産や経営の持続性が、コロナ禍に負けない農業、施設園芸の課題であることを改めて感じています。

 

 

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飛騨高山の小屋垣内農園さん(ホウレンソウ、レタス類、イチゴ、中玉トマト栽培)

岐阜県高山市の小屋垣内農園さんに伺いました。代表の小屋垣内(こやがいと)浩之さんは、前職の農業資材メーカーの顧客で、養液栽培装置や育苗装置を導入していただき、今でも利用をされている古いユーザーの方です。また日本養液栽培研究会の会員さんで、養液栽培生産者としても著名な方であり、平成28年度全国優良経営体表彰では農林水産大臣賞を受賞されています。

 

高山市には初めての訪問で、小屋垣内さんにホウレンソウ、サラダホウレンソウ、レタス類、イチゴ、中玉トマトの栽培施設、育苗施設を案内していただきました。

 

高山市の高台に位置する単棟、連棟ハウス群

 

これだけ多品目の栽培をされている生産者は、全国的にも珍しいと思います。ご自身もパセリ、セロリ栽培に始まり、様々な野菜栽培を経験されて来たとのこと。ベテラン経営者のお話を伺う貴重な機会でした。品目ごとに責任を分担をする体制で経営をされており、ご本人が露地のホウレンソウ、奥様が施設のサラダホウレンソウとレタス類、長男が中玉トマト、パートさんがホウレンソウの選別出荷を担当されていました。施設園芸と露地野菜を組み合わせ、規模拡大とリスク分散をはかられてきた経営について、いろいろと学ばせていただく機会となりました。

 

 

サラダホウレンソウ・レタス類の水耕栽培

 

施設は高冷地に立地しており、近年は少なくなったそうですが、一晩で軒までの積雪の日もあるとのこと。単棟の大屋根型鉄骨ハウスでのサラダホウレンソウ栽培を、NFTによる水耕栽培でされています。平成初期からの栽培で、施設や資材のメンテナンスが十分に行われていました。屋根の被覆資材にはクリアなポリカーボネートの波板が新しく張り替えられ、内張カーテンも最近張替えがされ、下層カーテンは空気膜二重構造のものでした。それでも厳寒期の外気温は−10℃に低下する時もあって、5℃設定でも暖房機は動き続けるとのこと。そうした厳しい条件での周年栽培では、施設のメンテナンスは欠かせないものと思います。他にも経年で収縮した水耕栽培の発泡資材を新品と旧品を組み合わせサイズのズレが起こらないようしたり、渇水などを検知して警報を送る回路を設置したりなど、様々な工夫が行われていました。

 

鉄骨単棟ハウス(屋根材:ポリカーボネート製)でのNFTによるサラダホウレンソウ等の栽培

 

 

レタス類は多品目で、奥様が栽培を担当され、ご本人が高山市内のレストランなどの営業をされていました。この間のレストランの注文は減っていたものの、口コミで広がっており、新規顧客も増えているとのことです。レタス栽培を行うハウスはフェンロー型の連棟で、融雪のための温湯配管も装備されていました。柔らか目のレタス類を栽培しているため、この季節でも常時遮光を行うとのことです。

 

フェンロー型ハウスでのNFTによるフリルレタス栽培

 

 

他にも、人工光型の育苗装置がサラダホウレンソウとレタス類用に合計3台設置され、こちらも照明器具や空調装置のメンテナンスが行われ、長い期間の利用がされていました。

 

 

発電機による電源バックアップ体制

 

ハウス関連や栽培装置、育苗装置など、多くの機器類が設置されており、過去に台風時などの停電が起こり栽培や出荷が停止したこともあって、発電機による電源バックアップを入念に行われていました。全部で4台の発電機を導入して万全な体制を作られていたのが印象的でした。お見せいただいた軽油燃料のエンジン式発電機は、三相と単相の両出力のあるものでした。これは三相の動力電源だけ供給しても制御用の単相電源がなければ機器類を動かすことができないため、最近発売された両出力型の発電機でカバーしていました。栽培施設だけでなく、集荷場の電源もカバーしており、予冷庫や調整・包装の機器類もカバーしていました。工夫して発電機を稼働させれば1週間程度の停電にも耐えられるとのことで、万全の体制と言えると思います。

 

三相と単相の両出力を持つエンジン式発電機

 

 

パイプハウスでのホウレンソウ土耕栽培

 

高山市は夏秋トマトやホウレンソウの産地で、パイプハウスでの栽培が多い地域です。前述の装備化が進んだ施設栽培以外にも、合計70棟以上、計約1.7haのパイプハウスで、ホウレンソウを年5作(3月20日播種開始〜11月20日収穫終了)体系で行われていました。毎日、数棟ずつの収穫と播種を繰り返し、圃場作業はほとんどが機械化されていました。最も人手が必要な収穫後の調整作業では、下葉取りなどの機械を導入していますが、人間による調整なども必要とのことで、現場にマッチした機械の開発が一層必要ということのようです。

 

高台にあるパイプハウスには強風が吹きつけることがあり、筋交いや陸梁による入念な補強が印象的でした。妻面は1mm目合いの防虫ネット被覆で、いわゆる雨よけハウスでしたが、それでもハウスの補強対策をしっかり行うことで経営の安定につながっていると感じられました。

 

防虫ネットで妻面被覆をしたパイプハウスでのホウレンソウ土耕栽培

 

 

外国人技能実習生と今後の農業経営

 

現在、ベトナムからの実習生の女性が6名、パート従業員とあわせて10数名が在籍していました。ベトナム人は韓国でも労働者として多く働いており、日本国内でも実習生が増加しています。ここでも従業員の約半数がベトナム人になっていて、コミュニケーションなどの面でいろいろご苦労をされているお話しも伺いました。

 

(ここからは私見です)

 

規模拡大が言われる中で、必要な労働力の確保には今後もさまざまな苦労が伴うと思われます。技能実習生として今後も安定して日本に渡航して働く外国人が確保できるかどうか、人数の面、働き方と処遇の面など、受け入れ国として考えなければならないことがあるように思います。小屋垣谷さんも韓国でのベトナム人労働者のことを話されていましたが、私も経年で、韓国の施設園芸を視察する中で、限られた外国人労働者で大規模施設を経営する実態を見て、日本の状況とは異なっている印象を受けてきました。韓国でも外国人労働者の受け入れ面で、新型コロナウイルス感染拡大の影響が生じているはずです。そのような状況も、改めて世の中が落ち着いてから、よく調べる必要があると感じた次第です。

 

また人手がネックになる施設園芸の経営には、まだまだ機械化の余地も残されています。スマート農業に世の中がシフトしていく中で、現場の改善と合わせた機械化や人との協調など、やるべきことは多いと思います。

 

農場をご案内いただき、施設設備や労務管理など、幅広くお話をくださった小屋垣内さんには、この場にて感謝を申し上げます。

 

 

 

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テレワークと農業の未来

サテライトオフィスの地域での整備と、働く人の動き

 

最近、北海道などでサテライトオフィスを整備する動きが活発にみられます。

 

2020年5月20日付け日本農業新聞の総合・社会面には、「進むテレワーク導入 地方拠点で都市圏の仕事」として、「北海道では、企業のサテライトオフィスを誘致できる拠点を整えて、地域に人を呼び込む動きが以前から活発」、「先進地域の北見市では東京のIT企業が拠点を構え、学生にテレワークの体験の場を提供」とあります。

また「学生にはテレワークで3日間の体験をしてもらう。3年間で25人の学生が参加」とあり、都会からの企業誘致と地元の若者への職場の提供の双方の効果を狙っているものと考えられます。

 

ニセコ町の旧でんぷん工場を改装したサテライトオフィスも紹介され、スキーなどで集まる観光客も対象に仕事も地元でしてもらう環境作りを進めているようです。「賃貸で事務所を借りるよりも柔軟に動ける」という利用者の声が紹介されています。

 

 

 

 

 

こうした地方でのサテライトオフィスの設置によって、またテレワークの推進と相まって、どこででも働ける環境が整備されつつある、そうした流れを捉えるべきでしょう。

 

またテレワークを行うことによって、職場に近いところに住居を持つ必要は少なくなっていくと思います。

むしろより良い環境、より自然に近い環境、あるいは人口密度が低くて感染症などのリスクが低い環境、そうしたところに住まいを移し在宅勤務をすること、あるいはサテライトオフィスで働いてみることが増えていくようにも思います。

 

どうしても用事があって都会に行かなければならない時だけ、新幹線や飛行機その他の交通手段を使って移動をする、そんなライフスタイルがこれから発展するのではないかと思います。

 

この流れは、感染が広がった新型コロナウイルス、これがおさまった後でも、おそらくテレワークを真剣に考えて導入している企業やビジネスマンの一部には、浸透していくのではないかと考えられます。

それは都会に住み、都会で働くことのリスクを、都会の住人自身が身をもって体験したからです。

 

 

一極集中の解消と農業での流通の変化

 

これからは、おそらく都会と地域での居住地や働く場所、そして働く人たちとその家族、それらの移転、移動が、働き方の変化にあわせて徐々に進んでくるんではないかと思います。

そのことで東京一極集中、首都圏集中と言ったことが少しずつでも解消され、いよいよ地域の魅力や地域の優位性、それらが発揮されていくのではないかと思います。

 

これはサテライトオフィスなどで働く人たちだけの問題ではありません。

地域が外部からの人達で活性化され、また定住人口や関係人口が増えてくる、そのことで地域の農業に対して良い影響も出てくるのではないかと思います。

 

地産地消がより活発に行われて、その地域の農産物を使った調理、料理、加工品、6次産品なども外部からの様々な情報や刺激によって、地域内でも生産や流通が一層されていくかもしれません。

これは従来からある遠隔地での大量生産出荷の農業の仕組みとはだいぶ異なるものです。

 

 

令和時代の地域と農業のあり方

 

以上のように、今後のテレワークの推進や拡大により人の流れに変化が生じ、魅力的な地域への人口の移動と、そこで必要とされる農産物や加工品の域内流通が発達する可能性もいろいろと考えられるでしょう。

 

令和が始まって2年目になりましたが、コロナウイルスとともに生きなければならない時代となり、生きるために必要な農業がより重要視される時代になって来たと思います。

またテレワーク拡大との相乗効果で、地域の農業のあり方も徐々に変わってくることが考えられます。

 

農業者自身もテレワークを積極的に活用して、都会や他の地域の人たちとの交流を深めることが求められるのではないかと思われます。

それらが令和時代の農業のあり方を変える原動力のひとつになるのかもしれません。

 

 

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園芸用施設の設置等の状況(H30)について

農林水産省より、園芸用施設の設置等の状況(H30)が公開されました。概要は下記の通りです。

 

平成30年の園芸用施設等の状況は、園芸用ガラス室及びハウスの設置実面積は42千ヘクタールであり、同施設における栽培延べ面積は、野菜42千ヘクタール、花き7千ヘクタール、果樹5千ヘクタールであった。また、農業用廃プラスチックの排出量及び処理量は107千トンあり、うち再生処理は79千トン、埋立処理は10千トン、焼却処理は11千トンであった。

 

ガラス室とハウスの設置実面積の実数は42,164haで、前回調査(H28)の43,220haに対して2.44%の減となりました。

一方で、今回調査期間(平成29年11月1日から平成30年10月31日までの1年間)に新設された面積は931haで、前回調査の487haに対して102.67%の大幅増となりました。

なお、今回調査期間の廃棄面積を前回調査からの2年間の面積増減より独自に試算したところ1,459haとなり、前回調査時の試算値493haに対して195.94%の大幅増となりました。

 

新設面積が増加したものの、今回調査期間内の廃棄面積(試算値)が新設面積を上回っており、全体として2.44%の減となったと言えるでしょう。

 

園芸施設の実面積、新設面積、廃棄面積(試算値)の推移のグラフを示します。

 

 

養液栽培面積の推移など、改めてお示しする予定です。

 

 

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新型コロナウイルスとオンラインでのコミュニケーション

COVID-19(新型コロナウイルス)の感染拡大で、人の行動や接触に大きな制限がかかっています(4月6日現在)。難局を乗り切るため全国民が可能な範囲で行動を抑制しなければならないと思います。一方でテレワークへのシフトが推奨される中で、その実施状況は決して高くありません。職場や現場に行かなければ業務を遂行できない職種や事業所が多いためでしょう。またセミナーや会合等のイベント開催にも大きな制限がかかり、この先、少なくとも数カ月間はまったく見通しが立たない状況です。筆者はそうしたイベント開催にかかわることが多く、活動に大きな制約を受けています。こうした状況について、同様にお困りの方も多くいらっしゃるかと思います。

 

電子会議への参加

 

筆者は以前より技術士によるグループ活動など、いくつかの集まりにおいて、グループウエアやテレビ会議のサービスを利用し参加してまいりました。グループウエアは、企業が利用するような専用の高機能で高額のものではなく、無料から利用可能で限定メンバーがアクセスできる電子会議室サービスを利用しています。サービス名はchatworkと言い、有料版もあり大企業も利用している国産サービスです。会議室やチャットと呼ばれる個人のスペースを設定して、そこでのメッセージやファイルのやり取りを効率的に行うものです。

 

メールのやり取りですと様々なメールが混在し、過去のものを探したり、特定のファイルを見つけたりするのに苦労することも多いのですが、電子会議室であれば、情報の格納や記録を構造化でき、それらの管理を整然と行うことができます。簡単に言うと、添付ファイルなど、自分のPCのフォルダーにダウンロードしなくとも、電子会議室に置いておくだけで後から探すことが出来る、という感じになります。情報をやりとりする相手が多い場合は大変重宝するものです。

 

テレビ会議への参加

 

テレビ会議は、最近のテレビ番組でも海外などと中継する際にも用いられることが多く、また在宅勤務やサテライトオフィス勤務などでも使われていると思います。これには様々なサービスがあり、多くは海外製のものです。マイクロソフト社のTeams、シスコシステムズ社のWebex、そしてzoomです。

 

 

テレビ会議は1:1だけでなく、多人数が同時にアクセスし、お互いの顔などを見ながら会話をすることが基本の機能となります。同時にアクセスするためには、あらかじめテレビ会議の開催時間やアクセスするための情報(ID,Password等)を連絡する必要があります。安定した通信回線があれば、特に高価な機材は必要ではなく、カメラとマイク、スピーカーやヘッドホンが付いているPCやスマートホンで利用可能です。手元にあるインターネット環境で、ほぼつなぐことが出来るサービスと言えるでしょう。

 

機能も色々ありますが、特筆すべきものでは、お互いの画面上での資料の共有化があります。これは同時に一つの資料だけになりますが、パワーポイントのスライドやPDFの資料などを表示しながら、それについて説明をすることが出来ます。単なるテレビ会議からWebセミナー(Webinar)と呼ばれるオンラインで行うセミナーにも発展する機能と言えます。

 

筆者は大学が開催するWebセミナーに2年前に参加した経験があり、その際は講義室で外部に中継するところにおりました。目の前で講師が話す内容とスライド画面をオンラインで参加する受講者にも提供しており、質疑応答も行われていました。これには多少慣れる必要と、やりとりのための補助者も必要となる場合もあるようです。しかし会場に来ずともセミナー参加できることは当時として画期的なものと感じました。

 

オンラインツールを使ったコミュニケーション

 

以上のような電子会議室やテレビ会議のサービスは、今までは企業や一部の人たちが利用していたものと思います。しかし冒頭で申し上げた行動の制約に対し、何もしないまま過ごすことなく、コミュニケーションを維持するために、非常に有用であると感じております。これはテレワークという企業や組織での活動にとどまらず、個人対個人、同好のグループでの活動にも有効なものです。何より時間を定め通信環境を用意すれば遠隔のコミュニケーションが出来ることがあります。これは平時に置いても交通費や移動時間を消費せずとも会合やセミナーが開催できることとなり、この非常時に有効性を再認識したところです。おそらく直接会わなくとも済むことはかなり多く、サービスを利用する中でそれに気づくことになるでしょう。

 

筆者は、主にZOOMを用い全国のご縁のある方々とのオンラインでのコミュニケーションを行っております。直接の動機は移動や面談に関する制約への対策としてでしたが、やり始めると普段なかなか会えない方とでも意見交換や情報交換が簡単に割りとスムースに出来、コミュニケーションの手段として使わない手は無いと考えるようになりました。まもなく政府による緊急事態宣言が行われる見込みであり、しばらくは行動を更に抑制することになろうかと思います。その間もオンラインでのコミュニケーションを進めるとともに、リアルの活動が再開できる時期に備え、全国の施設園芸・植物工場関係の皆様とも励まし合いながら、様々な課題やその解決策についてご一緒に考えてまいりたいと思います。

 

 

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新型コロナウイルスの施設園芸・植物工場への影響

日本国内での新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、農業、施設園芸、植物工場の分野への影響について少し整理をしてみます。状況の推移は流動的ですので断定は避けるべきですが、冷静になるためにも考えてみたいと思います。

 

外出やイベント等の自粛と農産物需要への影響

 

政府の要請により、小中高校での一斉休校の措置がとられつつあり、また外出やイベントの自粛、大勢の人が集まるレジャー施設等の休業など、社会における人の流れに大きな影響が出ています。これにより、必要とされる食事や原材料となる農産物の需要に直接の影響が発生し、特に学校給食や業務用途での食材の需要に大きな影響が出ていると思われます。一方で国内全体の食料需要は人口に応じたものであり、総需要としては大きな変化は無いはずです。すなわち、どこかで減った需要は、別などこかで吸収されて、全体としてはバランスが取られているものと思われます。家庭に籠る生活スタイルが一時的に増えるのであれば、宅配や通販などへのシフトが起こっているはずです。貯蔵が効かない生鮮野菜などでは、この傾向が大きいのではないでしょうか。流通経路の一時的な変化という側面があるものと想定されます。

 

一斉休校による従業員確保への影響

 

小中高などのお子さんをお持ちで、農業生産現場や植物工場などで働いている方々にも、これから様々な影響が出ると考えられます。またパートタイムの従業員を多く雇用する場面では、従業員の確保に影響が生じる可能性もあるでしょう。天候が上向き、農産物出荷量が増加する時期であり、人の確保が何より必要となる時期に当たります。一律の休校措置となると、家庭への負担とともに、生産現場への影響も見込まれ、混乱が心配されます。託児施設を持つ植物工場事業者を全国で何か所か存じ上げていますが、そうした施設や機能が改めて注目されるかもしれません。

 

従業員の健康管理、衛生管理への影響

 

感染拡大により、職場での感染者発生について考える必要があると思われます。日々の従業員健康管理は植物工場施設やGAP認証を受けた施設では不可欠となっていますが、さらに高いレベルでの予防的措置や出勤停止措置などを考えなければならない場面もあるかもしれません。幸いにも、手洗いや消毒などの機能や手順は、ほとんどの大規模施設園芸や植物工場施設では整備がされています。さらにそれらの日常管理レベルを上げるなどの措置も必要とされるかもしれません。また従業員の職場外での健康管理や衛生管理にも配慮が必要になると考えられます。

 

事業継続計画への反映

 

昨年来の気象災害の多発や停電による二次災害の発生により、大規模施設園芸や植物工場の経営での事業継続計画(BCP)の策定が重視されるようになりました。すでに策定や改訂を重ねられている経営体も多く、緊急時の連絡や保守、事業体制などが整理され、また訓練も行われているものと思われます。今回のような人のウイルス感染拡大を想定した事業継続計画の策定も、クローズアップされるかと思われます。何より健康と人命重視が求められ、事業継続の優先度が問われる場面も想定しなければならないかもしれません。社会や産業全体で考えなければならない問題かもしれませんが、個々の経営体においても重要なテーマになると考えられるでしょう。

 

 

 

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干拓地の施設園芸

先日、九州のある農業生産法人に伺い、その足で干拓地を車で通りました。古くからの干拓地でしたが、大区画に整備がされ、一面に露地作物が栽培されていました。施設園芸も一部で行われており、見渡す限りパイプハウスが並び、中ではレタスが栽培されていました。ハウス棟数まで数えることは出来ませんでしたが、この干拓地の一区画は確か6haと伺ったことがあり、ざっと4haくらいの単棟ハウスが並んでいる様に見えました。国内有数規模であると思います。

 

干拓地のパイプハウス群(レタス土耕栽培中、2月中旬撮影)

 

先月は韓国へ施設園芸団地の視察に伺いましたが、合計約100haの単棟パイプハウスが一ヶ所に建設され、同一品種でのイチゴ高設栽培を行っており、東南アジアへの輸出も行われておりました。韓国では蛇行する川の内側に造成された広大な区画にハウス群がありましたが、この九州の干拓地も潜在的にはそうした大規模施設園芸団地に進化する可能性はあるように感じました。

 

干拓地施設園芸でのスケールメリット

 

野菜の価格が低迷する中で、施設園芸への転換と投資にはもちろんハードルはあると思いますが、スケールメリットを設備投資や作業効率、販売戦略、物流構築などに活かせる可能性もいろいろと考えられそうです。最近は運賃の上昇が激しく、遠隔地での物流条件は厳しさを増していますが、大規模化での物流面では、搬入資材にしても、出荷もしても、廃棄物搬出にしても、積載効率の向上や、他の法人などと組んだ一層の効率向上が期待できるかもしれません。また作業面では、相変わらず手作業が中心の施設園芸生産の中で、搬送作業の合理化はスケールメリットを活かせる部分かと思われます。その他、インフラ面では大規模な雨水貯留槽の設置、選果貯蔵施設の集中化なども期待できそうです。

 

干拓地施設園芸の環境制御

 

九州の干拓地での施設園芸であれば、加温に必要なエネルギーも少なくて済み、またハウスの換気開放期間も長く、高度な環境制御の必要性が幾分低いとも言えます。そのため簡易な設備と低投入型の施設園芸が可能な地域とも言えるでしょう。一方で雇用維持のため、周年作業体系も組む必要があることから、夏期高温期の栽培環境や作業環境の構築が大きな課題になりそうです。これは最近メジャーになりつつある遮熱剤の塗布や、ハウス換気性能の向上、気化冷却設備の導入などを組み合わせることで、一定の効果は期待できます。この点にどれだけ設備投資や追加投資をするかが、ポイントとなるように思います。

 

大規模化と雇用確保、高温対策

 

雇用の確保が、どの施設園芸産地でも重要な課題となっている中で、大規模化のデメリットはこの点に明確に出るかと思います。特に周辺人口が少ない場合は、外国人技能実習生の活用が不可欠になっています。ただし、外国人に頼る経営が今後も続くかどうか、不明な点もある訳で、やはり従業員にとって働きやすい環境作りもこれからのポイントになるかと思います。スケールメリットを生かした作業環境、労働環境の向上ということになりますが、ハウス内作業時の送風や冷却、休憩場所の確保、屋内作業の集約化、作業者の健康状態の把握と管理など、多様なテーマがあるでしょう。労災防止のため建設土木分野ではこうした取組みが一歩進んでおり、見習う必要もあると思います。

 

施設園芸の多様化と干拓地施設園芸

 

大規模化と言っても、単一作物を大量に生産出荷するだけでは自ら値崩れを招く可能性もあるでしょう。多品目による複合経営が自ずと求められ、いくつかの作型と作業ピークを上手に組み合わせることが経営の成否に影響するものと考えられます。外部環境である人材供給と物流の制約を、複合経営での工夫や生産性向上によって乗り切ることができれば、干拓地の大規模施設園芸の将来性はまだまだあるように感じた次第です。

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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茨城県・結城地域農業経営ステップアップセミナーに講師参加をしました

昨日、茨城県の県西農林事務所 結城農業改良普及センター主催の結城地域農業経営ステップアップセミナーに講師として参加をしました。

 

八千代町中央公民館で開催されたセミナー

 

ご当地は首都圏近郊地帯にあり、圏央道整備により便も良い地域です。ニーズに応じた多様な生産(露地、施設、果菜、葉菜、重量野菜、複合経営など)がされているなか、施設生産性をさらに上げるには環境制御技術の導入は不可欠になっていると思います。そうしたことにご関心のあり、お集まりいただいた生産者や指導機関の方々に「環境制御を中心とした施設園芸の投資戦略」として講演をさせていただきました。セミナーのタイトルが「農業経営ステップアップ」ということで、経営段階や投資段階に応じて、環境制御技術をどのように活用すべきか、またそのために必要な施設設備、情報化技術、人材育成などを事例を交えご紹介いたしました。

 

茨城県の環境制御技術に関する取り組み

 

茨城県では次世代施設園芸技術習得支援事業をコンソーシアムにより実施しており、データにもとづく栽培管理や、そのマニュアル化などをイチゴ栽培を中心に進められていました。環境制御のもととなる温湿度管理や、樹勢管理などの管理指標を、実証栽培などから整備されており、単に機器類を整備するだけでなく、取られたデータの活用について総合的に取り組まれている様子でした。茨城県総合農業センターの専門技術指導員の方の報告では、そうした取り組みのプロセスを紹介されており、単に結果だけでなく、どのようにデータを活用すべきか、何に着目すべきかなど、これから取り組む際にヒントとなることを述べられていました。
 

環境制御機器等のメーカーPR

こちらの講演の他に、展示出展メーカーによるPRタイムがありました。環境制御装置メーカーから2社、養液土耕栽培装置メーカーからも2社のPRはありましたが、特徴的であったのが各社とも自社製品を中心としたクラウドサービスを立ち上げて様々な情報を取り出すことが出来るようにしていました。

環境制御機器メーカー1社では、機器から発生する計測データの他に、栽培や出荷に関わるデータも取り込み、さらにグループ単位での登録と閲覧も可能にするサービスをPRされていました。また別の1社では、まずは計測から始め、次ぎに制御へ進み、さらに高度な制御やネットワーク利用へと拡張するようなサービスの流れをPRされていました。

 

養液土耕栽培装置メーカー1社でも、潅水系のデータだけでなく、地上部の環境データもセンサーを追加して取り込み、栽培環境全体をモニタリングするサービスをPRされていました。

 

サービスの内容やメニューは各社それぞれでしたが、いずれも多くのデータを取り込んで、クラウド経由でどこからでも参照や設定を行えるもので、機能を向上すればするほど、各社の内容が似通ってくるように感じられました。モニタリングや制御の設定だけであれば、そうした相似は致し方ないと思いますが、おそらくデータ分析、その結果の定着プロセスまで考えると、ユーザー、グループ、産地ごとに様々な形態が現れるのではないかと思います。

 

今後のクラウドサービスの発展方向

 

各社のクラウドサービスはモニタリングと制御の設定から普及、導入が始まって来たと思いますが、次のステップであるデータの分析活用、有効利用の場面では、データの多面的操作、ユーザーや指導機関のモノの見方や知識、知恵の付与、といったことが加わってくるはずです。定型化が難しい内容かもしれませんが、その場合それらをユーザーが表計算ソフトなどを使って手作業で手間をかけ進めるのか、RPA (Robotic Process Automation)などで自動化や半自動化でのデータ処理をし、ポイントに絞ったデータ分析行為をすべきかなど、まだまだクラウドサービスの利用について検討の余地はありそうです。

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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施設園芸総合セミナーでの果菜類の品目展開

昨日、本日と東京都内で「第41回施設園芸総合セミナー・機器資材展」が開催されました。環境制御技術やスマート農業に関係する講演が中心で、多くの方が参加され盛況でした。

 

 

内容も果菜類の生産に関するものが多かったのですが、従来のセミナーのようにトマトやイチゴが中心ではなく、様々な品目への展開があったのが特徴と感じられました。演題を列記してみます。【 】内は対象とされた品目名です。

 

様々な品目を対象とした講演の演題

 

〇農林水産省の施設園芸関係の施策および、自然災害への対応
農林水産省生産局園芸作物課 花き産業・施設園芸振興室 課長補佐 角張徹氏

 

〇スマート農業プロジェクトの施設園芸分野の取り組み
農研機構野菜花き研究部門長 坂田好輝氏

 

〇大規模施設園芸におけるJCT化とその波及効果 【パプリカ】
大阪府立大学研究推進機構植物工場研究センター 特認准教授 大山克己氏

〇トマトの収穫ロボット等の省力化システム 【トマト】
パナソニック(株)ロボティクス推進室 開発1課長 戸島亮氏

 

〇大規模施設導入における生産の早期安定化のポイント
農研機繕野菜花き研究部門 施設生産ユニット長 東出忠桐氏

 

〇わが国のピーマン・トウガラシ類の品種・生産技術の動向 【ピーマン・トウガラシ】
農研機構野菜花き研究部門 ナス科ユニット長 松永啓氏

 

〇パプリカ大規模生産の国産ネットワーク NaPAの取り組み 【パプリカ】
(株)Tedy代表取締役、NaPA会長 林俊秀氏


〇ピーマン生産の環境制御による多収化とICT利用の実証 【ピーマン】
鹿児島大学農学部環境情報システム学研究室 准教授 神田英司氏

 

〇ナス・スイカ大規模産地のICT・AI利用による収益性の向上 【ナス・スイカ】
熊本市農水局長 西嶋英樹氏

 

〇先進的大型施設でナスの30t/10a採りをめざす多収生産の実際 【ナス】
JA全農耕種総合対策部 高度施設園芸推進室長 吉田征司氏

 

〇キュウリで50t/10a採りをめざす多収生産のための環境制御と栽培管理 【キュウリ】

(株)誠和。研究開発部研究課 須藤裕子氏

 

以上となりますが、トマトでは収穫ロボット等に関する演題が1題のみで、イチゴはありませんでした。またキュウリ、ナス、ピーマン、パプリカが2題ずつあって、この分野の品目展開が進んでいることが感じられます。長らくトマトを中心に施設園芸での環境制御技術が進んで来たと思いますが、ここに来て多くのチャレンジと実績が出てきたことは、注目すべきでしょう。

 

高軒高ハウスと中・低軒高ハウスでの栽培実証

 

もうひとつ、分類をしてみます。実際の栽培や実証試験などで、対象としたハウスがフェンローハウスなどの高軒高によるものか、一般的な中・低軒高によるものか、該当するものを【 】内に記します。

 

〇農林水産省の施設園芸関係の施策および、自然災害への対応
農林水産省生産局園芸作物課 花き産業・施設園芸振興室 課長補佐 角張徹氏

 

〇スマート農業プロジェクトの施設園芸分野の取り組み
農研機構野菜花き研究部門長 坂田好輝氏

 

〇大規模施設園芸におけるJCT化とその波及効果 【高軒高】
大阪府立大学研究推進機構植物工場研究センター 特認准教授 大山克己氏

〇トマトの収穫ロボット等の省力化システム
パナソニック(株)ロボティクス推進室 開発1課長 戸島亮氏

 

〇大規模施設導入における生産の早期安定化のポイント
農研機繕野菜花き研究部門 施設生産ユニット長 東出忠桐氏

 

〇わが国のピーマン・トウガラシ類の品種・生産技術の動向
農研機構野菜花き研究部門 ナス科ユニット長 松永啓氏

 

〇パプリカ大規模生産の国産ネットワーク NaPAの取り組み 【高軒高】
(株)Tedy代表取締役、NaPA会長 林俊秀氏


〇ピーマン生産の環境制御による多収化とICT利用の実証 【中・低軒高】
鹿児島大学農学部環境情報システム学研究室 准教授 神田英司氏

 

〇ナス・スイカ大規模産地のICT・AI利用による収益性の向上 【中・低軒高】
熊本市農水局長 西嶋英樹氏

 

〇先進的大型施設でナスの30t/10a採りをめざす多収生産の実際 【高軒高】
JA全農耕種総合対策部 高度施設園芸推進室長 吉田征司氏

 

〇キュウリで50t/10a採りをめざす多収生産のための環境制御と栽培管理 【高軒高】

(株)誠和。研究開発部研究課 須藤裕子氏

 

以上のように、高軒高が4題、中・低軒高が2題であり、高軒高が優勢となっています。これは高軒高ハウスでのハイワイヤー栽培によるパプリカ、ナス、キュウリの演題と、熊本や鹿児島における中・低軒高ハウスでのピーマン、ナス、スイカの演題となります。前者はパプリカではすでに一般的であり、ナスとキュウリではチャレンジな内容です。後者は一般的な栽培に対するものです。

 

施設園芸における今後の技術開発動向

 

たった二日間のセミナーの演題で、今後の技術開発動向を占うことは難しいと思いますが、演題だけ見ても様々なヒントが感じられます。その他に、養液栽培と土耕栽培という分類も可能ですが、すべてが養液栽培を指向しているわけではありませんでした。オランダや韓国の施設園芸は品目を絞り発展した経緯がありますが、日本の施設園芸では多様性や地域性が根幹にあって、そのような方向性とは異なるものがあると思います。

 

こうした多様性に対応する技術開発に必要とされるのは、ひとつひとつに対応する技術よりもおそらく汎用的な技術であり、品目展開や地域展開を前提としたものであるはずです。そうした視点を施設園芸に係わるエンジニアは大切にすべきと、セミナーに参加して感じた次第です。

 

 

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by 土屋農業技術士事務所 所長 土屋 和

 

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